3D V-Cacheを搭載した
Genoa-X
次いでGenoa-Xであるが、こちらはGenoaに3D V-Cacheを搭載したモデルである。3D V-CacheをEPYCに搭載した場合の効果というのは連載642回のMilan-Xの時にも説明した通りだ。
当たり前だがなんでも性能が上がるというわけではなくキャッシュ増量の効果が得られるアプリケーションに限るし、また構成的にも増量したキャッシュがうまく使えるようなケースに限られるが、そうした条件をうまく満たすと大幅に性能が上がることがわかっている。
これは今回のGenoa-Xにもそのまま当てはまる。まずSKUであるが、下の画像の3製品のみである。
ちなみにEPYC 9684X、最大ブーストは3.7GHzでEPYC 9654と変わらないが、全コアブーストは3.42GHzとやや刻んできており、EPYC 9654の3.55GHzよりやや低めである。
それぞれのラインナップの用途をまとめたのが下の画像で、EDA向けなどにはスレッドあたりの性能が高いことが求められるので16コアのEPYC 9184Xが最適だが、CFDやFEA、構造計算などはトータルの性能が求められるので32コアのEPYC 9384Xや96コアのEPYC 9684Xが向いているという説明である。
ちなみにEPYC 9684Xではコアあたり12MBの3次キャッシュが利用できるわけだが、EPYC 9384Xで24MB、EPYC 9184Xでは48MBの3次キャッシュが利用できることになる。
加えて言えば全製品ともDDR5-4800 12chをサポートしているわけで、スレッドあたりのメモリー帯域やキャッシュ容量が問題になる場合は、必ずしも96コアのEPYC 9684Xではなくより下位モデルの方がトータルでは性能が高いということもあり得るわけで、このあたりはアプリケーション要件に応じて選べばよいという姿勢である。
実際に、Sapphire Rapidsとの性能比較が下の画像だが、これも当然条件次第なところがある。
なおマイクロソフトは今回も、Genoa-Xを実装したHBv4 Instanceの性能を開示している。今回は分析はしないが、結果から言えば以前のMilan-Xの時のように、なんでもかんでも性能が上がるわけではないが、うまくスイートスポットにはまれば(Genoaと比較しても)性能が向上することが示されている。
マイクロソフトはこのHBv4 Instance、当初はGenoaベースでプレビューを提供していたが、今後すべてをGenoa-Xに更新の上で正式にサービスを提供する予定である。
この連載の記事
-
第802回
PC
16年間に渡り不可欠な存在であったISA Bus 消え去ったI/F史 -
第801回
PC
光インターコネクトで信号伝送の高速化を狙うインテル Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第800回
PC
プロセッサーから直接イーサネット信号を出せるBroadcomのCPO Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第799回
PC
世界最速に躍り出たスパコンEl Capitanはどうやって性能を改善したのか? 周波数は変えずにあるものを落とす -
第798回
PC
日本が開発したAIプロセッサーMN-Core 2 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第797回
PC
わずか2年で完成させた韓国FuriosaAIのAIアクセラレーターRNGD Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第796回
PC
Metaが自社開発したAI推論用アクセラレーターMTIA v2 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第795回
デジタル
AI性能を引き上げるInstinct MI325XとPensando Salina 400/Pollara 400がサーバーにインパクトをもたらす AMD CPUロードマップ -
第794回
デジタル
第5世代EPYCはMRDIMMをサポートしている? AMD CPUロードマップ -
第793回
PC
5nmの限界に早くもたどり着いてしまったWSE-3 Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU -
第792回
PC
大型言語モデルに全振りしたSambaNovaのAIプロセッサーSC40L Hot Chips 2024で注目を浴びたオモシロCPU - この連載の一覧へ