音声解析で営業DXから脱FAX、船舶管理、資産運用に採用、ECまで スタートアップが各業界の課題解決に挑む
「B Dash Camp 2023 Spring in Sapporo」レポート
2023年5月24日から26日の3日間、北海道札幌市でスタートアップ業界最大級のカンファレンスイベント「B Dash Camp 2023 Spring in Sapporo」が開催された。3日目にはスタートアップピッチ「Pitch Arena Final」が行なわれ、2日目の「First Round」に出場した10社の中から選抜された6社が登壇した。
ファイナルにはDXにAIを掛け合わせ、さまざまな業界特有のニッチな課題の解決に取り組む企業が多く進出した印象だ。本記事ではファイナルに登壇した6社に加え、惜しくもFinal出場を逃した4社のピッチもあわせて紹介する。
商談解析AI「JamRoll」を開発する株式会社Poeticsが優勝
「Pitch Arena Final」で見事優勝し、野村賞、バクラク(LayerX)賞も受賞したのはオンライン商談の解析AI「JamRoll」を展開しているPoeticsだ。Salesforceによる管理では商談内容がわからないため、営業方法を改善できないという課題がある。
「JamRoll」は電話やオンライン商談の内容を自動で録画、文書化し、重要なポイントをAIが要約する。商談後には、予算やタスクなどの重要情報がSalesforceに自動入力される。AIが商談内容にフィードバックをしたり、顧客の感情を分析したりする機能も備えている。
今後の展望はAI SaaSからAI API Platformへの進化だ。そのために「JamRoll」で蓄積された30万時間以上の動画や音声データを活用し、自社の言語、音声解析AIの機能を高めていく。山崎氏は「日本から次のAIを提供していく」と語った。
船舶管理DXサービス「MARITIME 7」を提供する株式会社ザブーンが準優勝
Pitch Arena Finalで準優勝を勝ち取り、ノバセル賞とパーソル賞も受賞したのは船舶管理DXサービス「MARITIME 7」を提供しているサブーンだ。船舶管理の現場では紙によるアナログな管理業務や船員の高齢化、人手不足が深刻な問題になっているという。
日本は輸出入の99%が船舶によるもので、海運業界の衰退は国家の危機ともいえる。そこでザブーンは船と陸上の情報を一元管理する「MARITIME 7」を開発した。リリース済みの機能としては、船員労務管理と船の位置情報を把握する動静管理の2つがある。
「MARITIME 7」の船員登録数は右肩上がりに増加しており、国内9%のシェアを獲得している。また、船舶の運航ルールは世界で統一されているため、多言語対応することで、2024年からの海外展開も見据えている。
「FAXバスターズ」で受発注業務をDXする株式会社battonがAGS賞を受賞
AGS賞を受賞したのは「FAXバスターズ」を提供するbattonだ。DXが浸透しつつある今日でも、85.5%の企業が電話やFAXで受注業務を行っており、書式が異なる受注書を手入力で受注登録しているという。
「FAXバスターズ」は文章のデジタル化からデータ入力までを一気通貫で行う。AIに帳票を学習させることで、「ゆらぎ」と呼ばれる発注者ごとの書き方の違いも統一してデータ化可能だ。受注者は「FAXバスターズ」に帳票をアップロードするだけで、データをExcelやCSVで出力できる。
今後は業界を限定してデータを蓄積し、さらなる顧客課題を解決することで、優位性を高める。また、発注者サイドにおける発注方法が統一されていない課題も解決することで、受発注者のネットワーク効果により事業を拡大していく。受発注業務がデータtoデータで行われるようになれば、プラットフォーム化としての役割を担うことも視野に入れている。