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クラウド時代に考える“ワークロード特化型”インテル® Xeon® プロセッサーの価値

各種アクセラレーター内蔵で消費電力を抑えつつ性能を向上、未来のネットワークを支える

第4世代 インテル® Xeon® SPが5G/ネットワークのイノベーションを加速させる

2023年06月26日 11時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

提供: インテル

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 “ワークロード特化型”のアクセラレーターやテクノロジーを搭載した「第4世代 インテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサー」(第4世代 インテル® Xeon® SP)。本特集では第1回記事で「AI/データ分析ワークロード」第2回記事で「HPCワークロード」における、第4世代 インテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサーの具体的な“強み”を見てきた。

 今回のテーマは「5G/ネットワーク」領域のワークロードだ。この領域では近年、急速にソフトウェア化(Software-Defined化)の動きが進んでおり、汎用プロセッサーにもネットワークワークロードへの対応が求められている。最新の第4世代 インテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサーは、そのニーズにどう応えているのだろうか。詳しく見てみよう。

オープンな汎用ハードウェア+ソフトウェア化がもたらすメリット

 かつてのモバイルネットワークやデータセンターネットワークは、専用ハードウェアを組み合わせた構成が主流だった。最も重要な要件は「信頼性」や「安定性」であり、通信処理に特化したプロセッサーやOSを搭載した専用ハードウェアがそうした要件を満たしていた。

 しかし、近年では汎用プロセッサーや仮想化技術が急速に進化し、ネットワーク領域でも徐々に汎用ハードウェア(具体的にはx86サーバーなど)による構成が増えつつある。信頼性と安定性の要件を実用上十分なレベルで満たせるならば、より安価な汎用ハードウェアで構成したいと考えるのは当然だろう。

 汎用ハードウェアとソフトウェアによる構成は、コスト以外にもさまざまなメリットを生む。たとえば「ネットワーク構成の柔軟性」「拡張性」「管理性」といったものだ。そうしたメリットを享受すべく、各種ネットワーク機能を仮想化する「NFV(Network Function Virtualization)」や、4G/5GモバイルネットワークのRAN(無線アクセスネットワーク)を仮想化する「vRAN(仮想RAN)」などが生まれた。

 そして何より、最大のメリットは「イノベーションの加速」だろう。通信キャリアやサービスプロバイダーでは、新たなサービスやビジネスを他社に先駆けて展開できる能力を求めている。しかし、専用ハードウェアの更新サイクルは年単位であり、大きな機能追加などは難しい。一方で汎用ハードウェアやソフトウェアの進化は速く、新機能の開発も展開もスピーディに行いやすい。そのため通信ビジネスのイノベーションを加速させるインフラとして、大きな期待が寄せられているのだ。

 5G領域において、インテルではOpenRAN(オープンRAN)の取り組みに早期から参画している。これまで単一ベンダーの専用ハードウェアで構成されてきたRANを、汎用ハードウェアとソフトウェア技術で実現し、複数ベンダーの製品が相互接続できる標準化されたオープンな世界に変える。これによりエコシステムを拡大し、5Gのイノベーション加速を目指すものだ。

5G/ネットワーク処理を効率化するアクセラレーターを内蔵

 これまでの記事でお伝えしてきたとおり、第4世代 インテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサーの特徴は、特定のワークロード性能をさらに大きく向上させるアクセラレーターやテクノロジーの搭載だ。上述した背景から、5G/ネットワークも注力するワークロード領域の1つとなっている。

第4世代 インテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサーでは、特定のワークロード/目的に応じたアクセラレーターを搭載して、より効率的な処理を可能にしている

 具体的には、「インテル® Network Engines」と総称される次のようなアクセラレーター/テクノロジーをプロセッサーに内蔵している。

●インテル® DLB(Dynamic Load Balancer):ネットワーク処理を複数のCPUコアに効率良く分散させ、全体のパフォーマンス低下を抑えるテクノロジー。
●インテル® QAT(Quick Assist Technology):トラフィックデータの圧縮、暗号化/復号化、公開鍵交換などの処理をオフロードし、処理を高速化するアクセラレーター。
●インテル® DSA(Data Streaming Accelerator):ストリーミングデータの移動/変換処理を高速化するアクセラレーター。

 さらに、5G vRAN向けには次のようなアクセラレーター/テクノロジーも搭載されている。

●インテル® vRAN Boost:通信信号の前方誤り訂正(FEC)処理を効率化するアクセラレーター。
●vRAN向けのインテル® AVX-512(Advanced Vector Extention for vRAN):MIMO(Multiple-Input Multiple-Output)処理など、RAN特有の信号処理を効率化するために拡張された命令セット。

5G vRANやUPF、SASE、CDNなどのワークロード性能が大幅向上

 これらのアクセラレーター/テクノロジーは、実際にどの程度のパフォーマンス向上をもたらすのか。

 たとえばインテル® QATは、第4世代 インテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサーで新たにプロセッサーに内蔵された。インテルによるパフォーマンステストでは、データ圧縮処理が前世代比で2倍以上高速になり、なおかつ処理に使われるCPUコア数は95%削減されるという。処理をオフロードすることで、CPUコアはまた別の処理に充てることができ、ワークロード全体のパフォーマンス向上にもつながる。

 また、インテル® vRAN向けAVXによって、前世代プロセッサーと同等の消費電力で最大2倍の容量のvRANが実現するという。一方でインテル® vRAN Boostでは、アクセラレーターカードを外付けする必要がなくなるため、消費電力が20%削減できるという。5Gネットワーク/vRANの設置場所は多様であり、消費電力を抑えつつパフォーマンスを向上させるこうした技術は重要だ。

 個々のアクセラレーター/テクノロジーがもたらすインパクトを総合して、インテルが重視する「実環境のワークロード性能」はどの程度向上するのか。まず、以下のベンチマークテスト結果を見ると、前世代比でおよそ1.5~2倍のパフォーマンスが実現している。

第4世代 インテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサーのベンチマークテスト結果(前世代比の性能倍率)

 そのほかのワークロードでは、5GコアネットワークのUPF(User-Plane Function)スループットが前世代比1.88倍となり、全体で30%のパフォーマンス向上を実現する。またセキュリティゲートウェイのSASEワークロードではスループットが1.71倍に、コンテンツ配信のCDNワークロードではインテル® DLBなどの効果でスループットが1.46倍に向上している。

* * *

 インテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサーを組み込んだ5G/ネットワークソリューションは、日本や米国をはじめとする多くの国の5Gモバイルネットワーク、あるいはデータセンターですでに活用されている。新しいアーキテクチャで性能を大幅強化した第4世代プロセッサーの投入により、採用の動きはさらに加速するだろう。

 そうしたインフラの変革に伴って、ネットワークサービスのイノベーションもさらに加速していくはずだ。インテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサーが新たな世界を開いてくれることを期待してやまない。

(提供:インテル)

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