2023年6月9日、イトーキはデジタルソリューション&プロダクトの記者発表会を開催した。オフィス家具で知られるイトーキだが、イノベーションにつながるワークプレイス作りやコロナ禍におけるテレワークシフトにおける課題を「Tech×Design」で解決していくという。
生産性を高める場所としてのオフィスを追求
イトーキは1890年に伊藤喜商店として創業し、今年で創業から133年を迎える。事務機器の輸入販売からスタートし、ホチキスとゼムクリップがヒットし、以降は事務機器やオフィス家具のプロダクト製造、オフィス空間のソリューション提案を推進。オフィスのトレンドは管理や監視を前提とした島形・対向型オフィスから、創造性や気持ちを重視するイノベーション創出型オフィスへと変化したが、生産性を高める場所というオフィスの意義は今も変わらないという。
同社の「ITOKI Smart Office Concept」は、インテリア性を重視したオフィス家具や、働き方の課題を解決する空間設計を手がけてきたイトーキだから実現できる新しい働く場の提案。機能の実現と体験価値の創出を意味する「Tech×Design」により、「創造的に、健康的に、いつでもどこでも協働できる、働く環境」を実現するという。インテリア、ソリューションに加え、新たに働き方と働く環境を捉えるデータサービスを加えることで、アジャイルなオフィスを実現する。
ハイブリッドワークとオフィス回帰の動きが入り混ざるアフターコロナを迎えた今年のITOKI Smart Office Conceptの新製品は、より生産的で創造的な「行きたくなるオフィス」を実現する。時間や場所の制限をなくしたコラボレーションを実現する「共働」、時間と場所を共有し、創造性を高める交流と共感を生み出す「共創」、そして人と地球に優しい持続可能なワークプレイスを実現する「共生」の3つをコンセプトとして謳い、快適なハイブリッド会議の実現、居心地のよい空間、オフィスデータの活用などを提供するという。
ハイブリッド会議用用の提案、居心地のよいオフィスの木質化
新製品の「Panora」は、ハイブリッド会議での疎外感を解消する「ハイブリッド会議テーブル」。製品の背景にはリアルのみの会議が減り、オンライン参加者も含めたWeb会議が今も8割を締めるという現状がある。こうしたハイブリッド会議においては、Web側のメンバーが会議室メンバーの様子をうかがえない、声が聞こえにくいという課題があるという。
この課題に対してイトーキが提案するのは、タテ型からヨコ型へのシフトだ。ディスプレイを会議室の長辺に設置するヨコ型のレイアウトを前提にPanoraを設置することで、Web側メンバーも会議室メンバーと対面して会議に参加できる。4人用、6人用がラインナップされ、立位を前提としたハイタイプも用意される。
また、Web会議の音声を聞き取りやすく、漏れにくくするSound Furnitureシリーズには、ファミレス席の囲いを高くしたような「sound sofa」を新たに投入する。シートの背面に設置した指向性スピーカーにより、遠隔のメンバーの声がボックス外に漏れにくい設計となっている。テーブル中央には指向性マイクが設置されており、半径1メートル以上離れた音を減衰して集音するので、聞き取りやすい音声が相手にも届くという。
さらに居心地の良いデザイン、行きたくなるデザインということで、オフィスの木質化を推し進める。木製パーティションの「FEELS」は、国内初となる不燃突板仕上げで規格化されている。木製フレームシステムの「solmio」は、人の集いに心地よい空間を提供し、オフィス内でのつながりを生むという。
オフィスで生成されるデータを見える化し、新しい価値へ
そしてオフィスで生成されるさまざまなデータを補足、分析するサービスも用意している。2021年にリリースされた「Performance Trail」は、サーベイベースで組織と個人のパフォーマンスを診断するサービス。メンタル、フィジカル、組織単位の幅広いコンディションと改善ポイントを把握できる。
また、「Workers Trail」はビーコンやスマホによる位置情報を活用したワーカーの活動見える化サービス。PCやスマホ、タブレットから、ワーカーがどこにいるかがわかるだけではなく、外出先や自宅からオフィスの座席を予約したり、トイレの満空表示、オフィスの温湿度なども表示してくれる。データの利活用に関しては、従業員に利用ポリシーの同意を取り、オフィス内での利用に限定しているという。
これらオフィスデータは分析され、「ITOKI OFFICE A/BI」で可視化される。もともと持っているオフィスのレイアウトデータと掛け合わせ、会話の盛り上がり、ワーカーの移動の様子などを見える化してくれる。単なる可視化のみならず、改善に活かすことで、ビジネスや働き方の変化にあわせて進化し続ける、「アジャイルなオフィス」を実現していくという。