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営業活動を効率化し、生産性を上げる業務プラットフォームとしてのSlackをアピール

その“営業DX”で売上は伸びますか? Slackが考える営業DXのポイント

2023年06月07日 08時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 セールスフォース・ジャパンは2023年5月17日、営業職向けのイベント「Slack Sales Innovation」を開催した。「生産性を最大化し『勝ち抜く』営業組織へ」をメインテーマに掲げ、Slackを活用して営業プロセスの効率化と生産性の最大化を実現する具体的な方法を紹介する内容だ。

 最近では、営業活動にデジタルの力を取り入れる“営業DX”という言葉もよく聞かれるようになった。セールスフォース/Slackが考える営業DXのあり方、そして効率化と生産性向上のポイントはどこにあるのか。イベント会場で同社の伊藤哲志氏、山瀬浩明氏に話を聞いた。

セールスフォース・ジャパン マーケティング本部 プロダクトマーケティング/プロダクトマネジメント シニアディレクターの山瀬浩明氏、同社 Slack事業統括 マーケティング本部 プロダクトマーケティング ディレクターの伊藤哲志氏

営業DXの定義、目標は「売上がきちんと伸びること」

――最近はよく「営業DX」という言葉を耳にするようになりましたが、その定義はかなりあいまいです。あらためてセールスフォース、Slackでは「営業DX」という言葉をどう定義しているのでしょうか。

伊藤氏:営業活動の成功指標と言えば、やはり売上が上がることですよね。極端に言えば、儲からなければ意味がない。ですから、デジタルツールを入れたことで営業の仕組みややり方、プロセスが最適化、最新化されて「売上が伸びる」こと。これが営業DXの成功のかたちだと言っています。

――売上が伸びるかどうか、という基準はわかりやすいですね。そうすると、たとえば紙ベースの業務を電子化したり、押印決裁をオンライン化したりといった取り組みは、「営業活動のデジタル化(デジタイゼーション、デジタライゼーション)」ではあっても「営業DX」ではない、と。

伊藤氏:そう思います。もちろんそうしたデジタル化も、将来的に営業DXを実現するための1ステップ、マイルストーンとして必要ですし、それ自体を否定するものではありません。ただしデジタルツールを導入しただけで満足し、そこで終わってしまうのならば「目的はそこでしたっけ?」という話になります。

――営業DXを実現するうえでは、これまでの営業活動のやり方やプロセスを最適化し、変えていく必要もあります。しかし、現場ではそうした変化に抵抗を感じる人がいるかもしれません。何かを変えると「これまでのほうがよかった」という声は、常に出てきますよね。

山瀬氏:これまでのやり方やプロセスが変われば、不便に感じることも出てきます。ただし、それ以上に便利さや新たな恩恵が実感できれば、最終的には受け入れられると思います。一度に大きな変革を目指すよりも「小さな成功体験を積み上げていく」ことが大切です。

――以前の営業向けイベントで、Slackのユーザー企業であるディップ(dip)の進藤さんも実感をこめて語られていましたね。

同日のイベントキーノートには、セールスフォース・ジャパン Slack事業統括本部 エンタープライズ第一営業本部 執行役員 本部長の小暮剛史氏、ゲストとしてディップ 執行役員 商品開発本部長 兼 メディアプロデュース統括部長の進藤圭氏が登壇した

「生産性向上のプラットフォーム」としてのSlack

――今回のイベントでは、Slackを活用した営業プロセスの効率化、生産性の最大化がテーマになっています。Slackがそれらを実現できる理由はどこにありますか。

伊藤氏:わたしは今回のイベントで「コミュニケーション基盤を導入する際に考慮すべき4つのポイント」というセッションを担当しています。組織としての目的に合ったツール、他システムとの連携がしやすいツール、エンドユーザーが喜んで使うツール、そしてモバイルで使いやすいツール、という4つです。これらは「なぜSlackがコミュニケーション基盤として選ばれるのか」の理由でもあるのですが。

コミュニケーションの課題を解消する4つのポイントを挙げた

――効率的かつ生産的な営業活動を実現するためには、そうしたポイントを押さえながらコミュニケーション基盤を選ぶ必要がある、というメッセージですね。

伊藤氏:セールスフォースでは現在、Slackをプロダクティビティプラットフォーム、つまり「生産性を上げることができる業務プラットフォーム」と位置づけています。かつてはビジネスコラボレーションハブという呼び方もしていましたが、さまざまなアプリと連携できて、それにより生産性が上がるプラットフォームである、そこにコラボレーション機能もある、という考え方に変化しています。

 たとえば営業活動を便利にするために、何かデジタルツール、アプリを導入したとします。それ単体では便利だけれども、アプリを10個も20個も使うようになると、そのうちあっちに切り替え、こっちに切り替え……と煩雑になってきます。PCでもそうですし、モバイルデバイスならばさらに面倒でしょう。

 そこで、さまざまなアプリと連携できるSlackを真ん中に置いて、Slackを中心に業務を進めるようにする。業務の中でのコミュニケーション、コラボレーションも、すべてSlack上でやっていく。その結果として物事がスピーディに判断できる、より売上を上げられるチャンスが拡がる、つまり業務DXが実現しますというのが、今回のイベントのメッセージです。

Slackをオープンで拡張可能な「プロダクティビティプラットフォーム」と位置づける(キーノートのスライドより)

――Slackと言えばさまざまなアプリと連携させられる点が特徴ですが、営業DXという観点で特に便利な連携アプリと言えばなんでしょうか。

山瀬氏:営業DXという観点だと、やはり「Sales Cloud」との連携が一番大きいですね。自分が担当しているお客様の情報、商談の進捗状況、あるいは売上のダッシュボードなどを、すべてSlack上で確認することができます。極端な話をすると、Sales CloudのWebアプリやモバイルアプリを開かなくても業務が完結してしまう。Slackとの連携は、そんなレベルまで進んでいます。

伊藤氏:マネージャーの観点からも便利です。チームの活動状況を把握するために、これまでは、Sales Cloudのダッシュボードを定期的にチェックする必要がありました。今はSlackと連携していますから、ダッシュボードや商談情報に何か変化があれば、Sales Cloud側から通知が届きます。チーム内のコラボレーションをしている同じ画面に、Sales Cloudの通知も届くわけです。

 よくお客様から「SlackとSales Cloudと連携させて使ううえでのポイントは何か」と尋ねられるのですが、わたしは「タイムリーな商談情報の更新」だと答えています。タイムリーに情報更新することで、担当営業自身もマネージャーもメリットが得られます。そのようなタイムリーな情報更新操作もSlackからできるので、とてもスピーディです。

山瀬氏:面白い使い方としては、自分が担当しているお客様がWebサイトを訪れて製品ページを閲覧している、この製品に興味を持っていますよ、というのをSlackに通知させるようなこともできます。そうすれば迅速に“次の手”が打てますよね。

イベントキーノートでは、多様なアプリと連携させたSlackのモバイルアプリだけで一日の営業活動を行うライブデモが披露された。ChatGPTやDeepL翻訳、日経アプリなどとの連携も用意されている

Slackを起点にSales CloudやCRM Analyticsを立ち上げたり、Slackから情報を更新したりすることができる(キーノートのデモ画面より)

営業チーム内や顧客とのコラボレーションに便利なハドル、Canvas、コネクト

――Slackそのものが備えるコラボレーションの機能で、営業活動を効率化するものはあるでしょうか。実際にどんな機能が営業現場で活用されているのでしょうか。

伊藤氏:まず、営業現場に限らず日本で特によく使われているのは「Slackハドルミーティング」の機能ですね。利用時間の統計データを見ると、日本のユーザーは他国の倍くらいの時間、ハドルミーティングを使われています。もともとハドルは「ちょっとした相談」くらいの意味なのですが、日本の場合はそれを超えた“長電話”が多い(笑)。

――(笑)。どうしてもテキストのメッセージで伝えるのは難しい、手間がかかる内容もありますからね。

伊藤氏:情報共有の効率化という観点からは、チャンネル内に情報をストックできる「Slack canvas(キャンバス)も活用していただきたいと思います。Slackはとてもスピーディに情報共有ができる反面、投稿された情報がどんどん流れていってしまうという難しさもあります。そこで、チャンネルに集まった情報の要点をcanvasにまとめて、現在状況を一目でわかるかたちでシェアする。この“二刀流”で、情報共有の質は格段に上がります。

 たとえばわれわれの社内では、お客様ごとにアカウントチャンネルを作成し、担当者全員がそのチャンネルで情報共有を図っています。ただ、新しい担当者が加わる際に「このチャンネルの過去のスレッドを全部読んでください」とは言えないですよね。canvasを使って、お客様やキーマンの情報、現在進行中の商談内容、今期のそのお客様に対する営業方針などをまとめておけば、それを参照するだけですぐにキャッチアップができます。

 canvasから別のcanvasへリンクすることもできます。たとえば「前回のミーティング記録」「○○プロジェクトの進行状況」「今週の役員向けプレゼンの方針」といった、もっと短期的な情報をcanvasでまとめ、メインのcanvasからリンクするような使い方も良いと思います。

――ディップの進藤さんの講演では、「Slackコネクト」を活用して顧客とつながり、常に情報共有を図る「つながりっぱなし営業」というスタイルが紹介されていました。コネクトも営業活動に役立ちそうですね。

伊藤氏:Slackコネクトで直接お客様とつながることができれば、商談プロセスも効率化しますし、長期的なエンゲージメントも強化されるでしょう。

 調査会社のフォレスターによると、Slackを導入することで商談成約率が13%向上すると試算されています。その理由の1つとして考えられるのは、コネクトでつないだチャンネルにはキーマンの方も参加するケースが多い、ということです。

 ふつうの商談では、最終提案の段階になるまでキーマンの方にお会いできず、きちんと情報を届けるのが難しい。最終提案をすると「なぜこういう提案なの?」と差し戻されたりする。ですが、それ以前からSlackでつながっていれば、キーマンの方が提案に至るまでの過程も含めて理解されていますから、提案に対する理解度がまったく違います。

フォレスターの調査によるSlackのビジネスインパクト

――なるほど、そういう効果もあるんですね。

山瀬氏:コネクトしたチャンネルでもcanvasを使うことはでき、そのcanvasにはお客様もアクセスできますから、canvasはお客様との間の情報整理にも活用できます。

 商談をクローズした後、お客様とプロジェクトを進めていく際の管理にもcanvasは便利です。お客様と一緒にタスク管理をし、お互いの進捗を確認していくなど、コネクト+canvasによるコラボレーションが始まっています。

――最後に、営業職の方へのメッセージをお願いします。

伊藤氏:コロナ禍を通じて、営業現場でもデジタル化の動きはずいぶん進んだと思います。ただしそこで満足してしまうのではなく、もう一踏ん張りして営業DXにつなげていただきたい。便利になったからゴールではなくて、やはり「売上が伸びる、儲かる」ことがゴール、成功だと考えて取り組んでいただきたいと思います。

山瀬氏:Slackのメリットとして「成功体験を横展開できる」ことも挙げておきたいと思います。社内の誰かが大型の商談を成約した、どういう提案をしたのだろう、というときに、検索したりチャンネルをのぞいたりすれば商談の過程がわかるわけです。そこから学んで、チーム全体で強くなっていく――。そうした活用法もあるとぜひ知ってください。

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