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連載:今週の「ざっくり知っておきたいIT業界データ」 第83回

IT市場トレンドやユーザー動向を「3行まとめ」で理解する 5月13日~5月19日

AIクローン音声詐欺を10%が経験、生成AIの認知は半数に満たず、子・孫に勤めてほしい企業ランキング、ほか

2023年05月22日 08時00分更新

文● 末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 本連載「ざっくり知っておきたいIT業界データ」では、過去1週間に調査会社などから発表されたIT市場予測やユーザー動向などのデータを、それぞれ3行にまとめてお伝えします。

 今回(2023年5月13日~5月19日)は、CEOが考える「今後3年間でビジネスに影響を及ぼすテクノロジー」、AI音声詐欺の実態、ジェネレーティブAI(生成AI)の認知度と企業の取り組み、体験管理(XM)に取り組む企業の成熟度、子・孫に勤めてほしい企業、についてのデータを紹介します。

■[AI]今後3年間で企業ビジネスに大きな影響を及ぼすテクノロジー、CEOの21%が「AI」をトップに挙げる(ガートナージャパン、5月18日)
・21%のCEOが「AIは今後3年間で自社の業界に最も影響を及ぼす技術」
・ビジネス優先課題のトップは「成長」(49%)、「サステナビリティ」は前回から25%アップ
・最大のリスク要因は「インフレ」(22%)、組織へのリスクでは「人材不足」(26%)

 世界400人以上のCEO/上級経営陣を対象に実施したサーベイをまとめたもの。戦略的なビジネス優先課題としては「成長」(49%)がトップ。また2022年に初めてトップ10入りした「環境サステナビリティ」が、回答数を25%伸ばして12%となった。AIについては、「今後3年間で自社の業界に最も大きな影響を及ぼすテクノロジー」という設問で、21%のCEOがトップに挙げる。同社 ディスティングイッシュト VP アナリストのマーク・ラスキーノ (Mark Raskino) 氏は、ジェネレーティブAIに対する企業の反応について「このチャンスを逃すことへの恐怖が、テクノロジー市場の強力な原動力になっている」とコメントしている。

2023~24年の戦略的ビジネス優先課題のトップ10、49%が「成長」を挙げている(出典:ガートナージャパン)

■[セキュリティ]世界の10%が「AI音声詐欺」を経験、ただし日本は3%と低い(マカフィー、5月17日)
・「AI音声詐欺に遭遇した」は10%、15%は「知人が遭遇」
・AI音声詐欺被害者の77%が金銭被害に
・日本は7カ国中最低の3%(自分自身が遭遇)、5%(知人が遭遇)

 日本を含む7カ国で18歳以上の7054人を対象に、AIを悪用したオンライン音声詐欺の現状について調べた「The Artificial Imposter」より。AI音声詐欺に遭遇した経験を持つ人は7カ国平均で10%。AI音声詐欺では、ユーザーがオンラインで共有(公開)した声が複製/悪用される。実際、声を共有する機会の多いインドでは、AI音声詐欺の遭遇率も高かった(20%)。日本はいずれの設問でも調査7カ国中最低だったが、「むしろ、今後、音声詐欺に遭遇する可能性が高いとも受け取ることもできる」と注意を呼びかけている。

AIを悪用した音声詐欺に遭遇した比率。調査国中で日本は最も低かった(出典:マカフィー)

自分の声をオンラインで共有する頻度。こちらも日本が最も低い(出典:マカフィー)

■[AI]「生成AI」の認知度は半数以下、業務代替の度合いは「4割以下」が多数(PwCコンサルティング、5月19日)
・まだ54%が「生成AI(ジェネレーティブAI)」を認知していない
・ジェネレーティブAIは「ビジネスチャンス」が47%、9%は「脅威」
・「業務に利用したい」は53%、業務代替の程度は「4割以下」が36%

 日本国内の企業・組織に属する従業員1081人を対象に、ジェネレーティブAIについて聞いた「生成AIに関する実態調査2023 ~加速する生成AIブームとビジネスシーンの実情:ユースケース創出が急務~」より(調査実施:2023年3月31日~4月3日)。ジェネレーティブAIが連日のようにニュースの見出しを飾る昨今だが、54%が「まったく知らない」と回答。そのビジネス活用についても、具体的な取り組みを進めている企業は8%にとどまる。ただし、業務で「利用したい」が53%と利用意欲は高い。「AIが業務を代替する程度」の予想では、「多少代替する(4割以下)」という回答が36%で最も多かった。

54%が「認知していない」と回答。実態との乖離が明らかに(出典:PwCコンサルティング)

活用への関心は高く、自社への影響はチャンスと見る層が多い。だが具体的取り組みを進めているところは8%となった(出典:PwCコンサルティング)

■[体験]XM成熟度は41%が初期段階、85%が2023年はCXの取り組みを強化(クアルトリクス)
・体験管理(XM)担当の41%が、自社のXMは「5段階評価で第1・2段階目」と評価
・対象別ではCX(カスタマー体験)が先行、85%がCXの取り組みを増加
・51%が「2023年にDEIの測定・改善を強化する」と回答

 企業のXM担当者171人を対象としたグローバル調査。XMを5段階(ステージ)に分けた場合、「ステージ1」が11%、「ステージ2」が30%と、合計41%が初期段階にあると評価している。4つのXMエリア「CX(カスタマー体験)」「EX(従業員体験)」「BX(ブランド体験)」「PX(製品体験)」のうち、最も取り組みが進んでいるのはCXだった。EXの投資分野としては「エンゲージメントなどEXの中核指標の追跡と改善」(46%)が最多、また42%が「DEI(多様性、公平性、インクルージョン)をある程度/大幅に増加する」と回答している。

自社のXM成熟度はステージ3(動員)が36%と最も多い。Stage1とStage2を合わせると41%(出典:クアルトリクス

XMの取り組み分野はCXが多い(出典:クアルトリクス

■[社会][仕事]子・孫に勤めてほしいのは「国家/地方公務員」、民間企業ならば「トヨタ」。安定性重視が続く(リスクモンスター、5月17日)
・子・孫に勤めてほしい企業は「国家公務員」(8%)、「地方公務員」(7%)
・「トヨタ自動車」は11回連続で民間企業トップ
・重視ポイントは「安定性」「趣味嗜好に沿う」「グローバルな活躍」

 未成年の子・孫を持つ全国の20~69歳の男女200人に聞いた「お子さん/お孫さんに勤めてほしい企業」より。対象は各業界の大手企業/組織200社。回答のトップは「国家公務員」で8.8%、続いて「地方公務員」が7%。前回と順位が入れ替わったものの、公務員人気が根強いことをうかがわせた。そのほかのトレンドとして、航空会社の人気が回復した一方で、外資系GAFAMは順位を落とした。重視するポイントは「経営の安定性」、そのほか男子では「やりがい」、女子は「働きやすさ」が多く挙がっている。

子・孫に勤めてほしい企業は、国家/地方公務員が1位と2位。次いでトヨタ自動車がランクインした(出典:リスクモンスター)

子・孫に勤めてほしい企業で重視するイメージは「経営の安定性」が男女ともにトップ(出典:リスクモンスター)

期待する働き方は、「趣味・特技を生かした活躍」「グローバル企業での活躍」などが上位に挙がった(出典:リスクモンスター)

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