「アジアのエクイニクス」がデータセンターを初めてプレスに公開
デジタルエッジが最新データセンター「OSA1」公開 関西の動向、電力高騰の影響も聞いた
2023年05月18日 11時00分更新
OSA1は都市型・ネットワーク集約型のデータセンターの最新型
サイトツアーに先立ち、14階の会議スペースで行なわれた説明会では、デジタルエッジ・ジャパン セールスディレクター 高松健一氏から事業概要やOSA1の位置づけについて説明された。
デジタルエッジは、アジア太平洋地域のデジタルデバイド(環境格差)を解消すべく設立された新興のデータセンター事業者。約557億ドル(約7兆円)の資金を運用する世界最大のインフラ投資会社ストーンピークのバックアップと、データセンター事業者の専門性を持ったメンバーにより、APACで急速に事業を立ち上げている。
同社はデジタルの行き届かない市場への「フォーカス」、各国・地域のパートナーと連携した「ローカル」、環境や社会への責任を重視した「責任」の3つを使命として掲げている。また、ESGコメットメントして、2030年までのカーボンニュートラルを含む「資源の尊重」、各国や地域にあわせたパートナーやチームを重視する「人と地域の尊重」、ビジネス倫理の維持とサプライチェーンでのベストプラクティスを約束した「透明性の尊重」という3つのESGコメットメントも披露した。
現在、同社が展開しているのは日本、韓国、中国、インド、インドネシア、フィリピンの6カ国で、データセンター数は17。想定される最大電力キャパシティは500MWに及んでおり、特にインドのムンバイではその半分以上を占める300MWを前提とした用地を取得しているという。日本では都市型・ネットワーク集約型のデータセンターを志向しており、CTCやアルテリアネットワークスなどのパートナーとともに、東京・横浜に6つのデータセンターを提供中。先日はヒューリックとの提携で7つ目のデータセンターであるTYO7の着工を発表したところだ(デジタルエッジ、ヒューリックと共同で都内に都市型データセンターを構築)。
デジタルエッジ 日本代表 本社プレジデントの古田敬氏は、OSA1について「都市型・ネットワーク集約型のデータセンターとしては最新のもの」と説明する。過去、エクソダス、エクイニクス、Facebookなどでエネルギー効率を追求したデータセンターを造ってきたジェイ・パーク氏が設計を担当し、日本前提に効率化・最適化したという。
同社は各国や地域のインターネットインフラの成熟度に合わせて、異なる役割のデータセンターを展開している。その点、成熟したマーケットである日本では、リテールとハイパースケーラーのニーズを満たす汎用性の高いデータセンターが必要という判断だという。また、エッジ型とネットワーク集約型のデータセンターで構成されたデジタルエッジのプラットフォームの中で、OSA1は「アジア全体のプラットフォームの大阪の出口」(古田氏)という役割も持っているという。
電力コストの高騰の影響は避けて通れない
プレスイベントではデータセンター業界で長い経験を持つ古田氏から私見としてさまざまなトピックが披露された。
たとえば、関西圏のデータセンター事情。従来、堂島に一極集中していた大阪のデータセンターだが、最近はOSA1のあるOBPや西心斎橋にも建設されるようになり、ネットワークを介して「点から面へ」と展開を始めている。パブリッククラウドサービスの関西圏への展開も増えていることもあり、エリアは生駒、南港、けいはんな、神戸などに分散しつつあるという。とはいえ、国際海底ケーブルの陸揚げがいまだに志摩(三重県)のみで、大阪湾や瀬戸内海側に陸揚げがない点はボトルネックになるという。
今回、コロナ禍での資材調達の影響について聞いたところ、「OSA1はかろうじて調達に影響がなく、スケジュールの遅延もなかった」とのこと。とはいえ、資材や土地の調達コストも上がっており、災害対策などでもともと着工から完成まで時間がかかる日本のデータセンター建設は、これまで以上に困難になると見込まれるという。
そして、なにより課題になるのは電力コストの高騰。現状では電力会社以外からの調達手段がないため、データセンターの料金も上げざるを得ないのが実情。とはいえ、電力会社によって、コストアップの要因や調達事情が異なっているため、地域格差が生じているのも事実だという。古田氏は、東京に7割が集中しているデータセンターが、地方に移転していく契機になるのではないかと私見を披露した。