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業務を変えるkintoneユーザー事例 第174回

刻々と変わる状況の中、ひたすらkintoneアプリを改善し続ける

新型コロナの波にkintoneで立ち向かったある北九州市職員の戦い

2023年05月11日 11時30分更新

文● 柳谷智宣 編集●MOVIEW 清水

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想定を超える業務量にプロジェクトチームを作って対応

 第6波は第5波の4.4倍となり、当初の予想を上回る規模となった。完成したシステムも、圧倒的な業務量の前には、処理量が追いつかないという状況に。たくさんの応援職員にも来てもらったが、仕事は回らず、毎日、夜遅くまで電話をしても終わらず、みんな疲弊してしまったという。

 ここで、副市長からこの状況をどうにかしなければならない、ということで組織の垣根を超えたプロジェクトチームを作るという話があった。そして、その現場責任者に井上氏の上席が任命された。そして、情シス部門と保健所の合同チームが結成され、業務全体の事務フローの分析も行なわれた。仕事は動いているので、OODA(観察、方向づけ、意思決定、行動)ループを回して、直せるところは、その場で直していくことになった。

「プロジェクトチームができたことによって、私のところにも情報がどんどん集まってくるようになりましたし、業務を何か変えようとした時の調整も、上席がいるのですごく楽になりました。本当の意味で、業務改善のチームができたのはここです」(井上氏)

組織の垣根を超えたチームが結成された

無茶振りで行き詰まったとき、kintone hiveに参加した

 しかし、さらに難題が井上氏の元に持ち込まれる。業務のボトルネックである、紙の扱いを解消してくれ、という。陽性者に電話をかけて、聞いた内容は医療職の人が紙に記録するのだが、その情報をkintoneに入力するのに手間がかかってしまうのだ。

 この紙は聞き取りしながら書き込むために最適化されており、OCRで読み取れるように作り変えると、今度は聞き取り業務が遅くなってしまう。そこで、AI OCRを使って何とかするように、と無茶振りが来た。

「正直、私には荷が重かったのですが、この行き詰まった状況で、kintone hiveに来たのです。ここでkintoneの中にたくさんのコミュニティや勉強会があることを知りました」(井上氏)

 井上氏は「kintone devCamp」や「imoniCamp」「キンコミ」に参加し、情報を共有することで、アプリの開発を進めた。その結果、5月上旬に完成し、第7波に間に合った。聞き取った紙をAI OCRで読み込み、CSVで取り込み、kintoneのチェックアプリに入れ、紙と見比べて修正を行なう。その後、kintoneで内容に従って、それぞれのアプリにデータを振り分けて保存できるようになったのだ。

ハイレベルな要望にもkintoneコミュニティの力を使って対応した

 そのおかげで、健康観察のデータを作り忘れたり、チェックする業務がなくなった。陽性者台帳と健康観察は別々の係が使っているが、どちらかが新しい情報を記録すると、相互連携するようにした。特に連絡をしなくても、アプリの中だけで情報共有できるようになったのだ。

「数は少ないのですが、LGWANの中でも、フォームブリッジやkViewerといったプラグインを使うことができました。そこで、FAXで報告してもらっていた情報を、フォームブリッジで入れてもらって、kintoneで自動で集計するようにしました。陽性者の方に、いろんな情報をお伝えするのですが、電話の後にショートメッセージでkViewerのURLを送り、いつでも見たい時に見たい情報を何度でも見られるようにしました」(井上氏)

 また、「今回、JavaScriptでカスタマイズしたのは、LGWANという特殊な条件があるためで、通常はプラグインの導入を検討するのが一番です」と井上氏は付け加える。

 第6波は最大約1000人/日だったが、kintoneを活用することで、同じ人数で第7波の最大約3000人をさばくことができた。業務効率がほぼ3倍になったというわけだ。ペーパーレス化を進め、1000万円ほどのコスト削減にもなったという。

「今回、kintoneを使ったことで、自分でも業務を効率化してみようという方が増えてきました。kintoneを導入したことによって、チームワークを作ることができたというのが、一番大きな成果だと思います。業務改善のきっかけは、どこにでも転がってます。拾い上げられるかは、皆さん次第です。拾い上げると、きっと何かがそこから始まると信じています。コミュニティもありますし、道は違いますが、みんな仲間です。一緒に一歩を踏み出しましょう」と井上氏は締めた。

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