2023年4月21日、グレープシティはkintoneプラグイン「krew」のユーザー会である「Ship」のイベントを初開催した。募集後すぐに満員になったというユーザー会では、座談会やユーザー事例講演、グレープシティによるkrewのロードマップ披露など多彩な内容。今回はイベントの模様をレポートしていこう。
初開催のkrewユーザー会 Shipの名前の由来とは?
初開催のkrewユーザー会はサイボウズの日本橋オフィスで開催された。イベント案内に引き続いて、登壇したのはkrewのプロダクトマーケティングを担当している佐藤ななえ氏。まずはグレープシティとkrewシリーズの紹介からスタートした。
krewの開発元であるグレープシティは、宮城県の仙台市にあるソフトハウス。30年以上に渡ってソフトウェア開発のための部品(コンポーネント)を提供しており、累計出荷ライセンスは60万を超える。こうしたソフトウェア開発のノウハウを活かして生まれたのがサイボウズのkintone用プラグインである「krewシリーズ」になる。
krewの3製品は「krew3兄弟」と呼ばれることも多いが、長男にあたるkrewSheetがリリースされたのは2017年。その後、2018年にkrewDataとDashboardが双子のように同時リリースされ、発売から5年経ち、2023年4月に契約社数もいよいよ2000社を突破した。このように契約社数が増加したのに伴い、今回初めて開催されたのが、krewユーザー会「Ship」だ
もともとkrewという製品名は船の乗組員を意味しており、ユーザー会の「Ship」という名前もみんなで楽しめる船みたいなイメージでネーミングされているという。「オンラインだとなかなか濃い思い出を作れないので、今日のようなオフラインで作っていただきたい」と佐藤氏はアピールした。
サイボウズ×グレープシティで語るエコシステムとkrewの立ち上げ
最初のセッションは「『エコシステム』というkintoneの『屋台骨』」というタイトルで、サイボウズの栗山圭太氏とkrewシリーズを立ち上げたグレープシティの山崎顕由氏が座談会を披露した。
前半は栗山氏がサイボウズにとってのエコシステムについて語った。今は営業本部長と事業戦略室長となっている栗山氏だが、実はリリースされたばかりのkintoneのプロダクトマネージャーだった。「当時はAPIもプラグインもない。Webフォームしか作れなかった。最初のプロモーションは『3分でアプリが作れる』というものだったが、逆に言うと当時はそれしか訴えるものがなかった(笑)」と栗山氏は振り返る。
しかも、その後エコシステムを拡充するため、青野社長やkintoneチームは、基本機能の拡充よりもAPIの開発を優先させるという判断を下す。「今となったらわかりますが、当時は意味がわからなかったんです。APIは目に見えないし、エコシステムが育ってくるのは時間がかかるので」と栗山氏は語る。しかし、APIが整備され、パートナービジネスが勃興し、サイボウズが自身よりもパートナービジネスの拡大を優先させたことで、kintoneは売れ始める。
後半は山崎氏はkrewの誕生秘話、これまでの歩みについて語った。krewリリース前、kintoneパートナーとしてグレープシティが手がけたのは、kintoneのカスタマイズ用パーツだった。これまでのビジネスを踏襲する形のコンポーネントだったが、そもそも開発が必要という段階で、kintone市場には合わなかったという。
当然、「ビジネスにならないから撤退」という選択肢もあったわけだが、「kintoneが好きだったし、エコシステムが楽しかったので、ここでビジネスをやりたかった。楽しかったから、始めた」(山崎氏)とのことで、再度krewの企画を立ち上げる。社内の反対はあったものの、今後拡がるマーケットの可能性に加え、すでに製品を実現するための要素技術を持っていたことから、krewシリーズのリリースになんとかこぎ着けたという。
続いて、krewSheetとkrewData、krewDashboardというラインナップについては、kintoneの苦手なところを解決する製品を作った。「もともとはExcelをこねくり回していた予実管理を、kintoneで実現するために作った」と山崎氏はコメント。栗山氏は、2017年のCybozu DaysでのkrewSheetのデビューを振り返り、「青野社長が基調講演でkrewSheetを紹介したら、グレープシティのブースに人が殺到した。伝説の人だかりでした」と語った。
現在、kintoneのエコシステムは300以上あると言われる。栗山氏は「DataとDashboardについては競合も出てきそうだが、Sheetに関してはもはや競合は出ないと思う」とコメント。また、山崎氏はkrewが今後目指す方向として、「krewも最近は『誰でも業務アプリを作れる環境を提供したい』というミッションを掲げるようになったので、そこを体現していきたいし、業務改善につながる愛される製品として育てていきたい。また、リリースから5年間の間もお世話になったというサイボウズのエコシステムに恩返ししたい」とコメントした。