成功体験を貯蓄してステップアップをしてほしい
こうしてつくりあげた商品を、会社ごとにプレゼンを行った。時間は1分間ということで、限られた時間内にどれだけ商品の良さを伝えられるかがポイントとなる。
その後、参加者全員が消費者になり、手持ちの「3000Lab(ラボ)」という架空通貨を使って、気に入った商品を購入した。全員が買い物を終了した時点で、各社の売り上げを計算し、自分たちの事業計画の振り返りを行った。
今回は4グループがそれぞれ会社を設立したが、4社のうち3社が「コミュニケーションロボット」、残りの1社が「生活を助けるロボット」を開発した。その結果、3社が同じ市場を争うことになり、競合しなかった1社が黒字となった点も、リアルな会社経営を反映しているようで、非常に興味深いものになった。
最後に、グループ内でこれまでの結果をふくめて振り返りを行い、各社の良かった点や今後の改善点などを発表した。
・会社名「Act」
商品名「クラゲット」
最初に発表した「Act」は、「プレゼンで伝えたいことが伝えきれなかった」ことを反省点としてあげた。商品企画マネージャーからは「キャッチコピーがわかりやすく、色々な層に受け入れられるような商品だった」と、良かった点が語られた。
講評を行った日本政策金融公庫の山口氏は、「ロボットが人の悩みを聞いて解決してくれるというプランが共感され、これだけの販売数につながったと思う。役割分担もしっかりしていたので、ぜひ、今後は販売にも力をいれて『どうやったら、上手に伝えることができるのか』を念頭に練習すると、もっと違った結果が見えたかもしれない。ぜひ、これを自信にかえて、次のチャレンジにいかしてほしい」と話した。
・会社名「Use ロボット コーポレーション」
商品名「ベンリーさん」
次の「Use ロボット コーポレーション」は、唯一黒字となったグループだ。その理由について、「他が人間と話せるロボットだったけれど、僕たちは唯一、便利に人を助けることだった。商品のアイデア自体がよかった」と、しっかりとした分析を行っていた。さらに、「ひとつのアイデアを否定せず、そのアイデアよりもさらにいいものがあったら話し合えたこと」を、グループの良さとしてあげた。
山口氏からは、「黒字達成おめでとう」という言葉とともに、「ゴミを分別してくれる移動式ロボットというアイデアや発想力が良かったし、欲しくなるようなプレゼン発表だった。
実際のビジネスの場面では、計画通りにいかないことが多いので、こうした成功体験は重要。ぜひこの体験を貯蓄して、ステップアップしてほしい」とアドバイスが贈られた。
・会社名「Satis」
商品名「コミュニケーションロボット サティス」
「目標とした販売個数が多かった」と反省を語ったのは、「Satis」だ。さらに、「AI機能を搭載して低価格を実現できた点はよかったが、結果としては他製品と差別化できず、多機能性という方針にした方がよかったかもれしない」という振り返りもあった。そのうえで、「柔軟に考えることも必要だが、自分のたちの軸を見失ってはいけない」という素晴らしい言葉がメンバーの中学生から語られ、大人たちをうならせた。
講評を行った日本政策金融公庫の藤見氏は「会場からも声があがるほど、スピーチは素晴らしかった。この会社は唯一、商品の色合いをきちんと決めており、感度の高さを感じた。また、犬をしゃべらせるだけでなく、対話して進化するという、ある意味常識を破る発想が出た点も素晴らしかった」と話した。さらに、「今回は、消費者のニーズの重要性を学び、とても良い気付きができたと思う」と伝えた。
・会社名「フェリックス」
商品名「M-Ally」
最後に発表した「フェリックス」は、多機能ながらコストを抑えた商品を開発し、販売個数は多かったものの、赤字という結果に終わった。
振り返りでは、「みんなが、自分の意見を積極的に発言でした。対立しても、否定ではなく、お互いの意見ふまえてどうなるかという発展的な話ができ、良い意見が沢山出た」と、メンバーは成果を語った。さらに、「意見を出してみるという心がけは大切にしたい。チャレンジするとき、慎重にやるときとメリハリをつけたほうが良かった」といった反省の意見もあがった。
藤見氏からは、「『話が苦手だけれど、話がしたいという欲求が強い人に対しての商品』というコンセプトが素晴らしかった。1人が2つ買うぐらいコアなファンがついた魅力的な商品だったので、もっと価格を上げていたら、よい勝負できたかもしれない」という言葉が贈られた。