連載:今週の「ざっくり知っておきたいIT業界データ」 第81回
IT市場トレンドやユーザー動向を「3行まとめ」で理解する 4月22日~5月5日
AIでコードチェックする開発者が6割に、“2030年危機”の重要インフラ保守技術者、理想のPC更新サイクル、ほか
2023年05月08日 08時00分更新
本連載「ざっくり知っておきたいIT業界データ」では、過去1週間に調査会社などから発表されたIT市場予測やユーザー動向などのデータを、それぞれ3行にまとめてお伝えします。
今回(2023年4月22日~5月5日)は、IT人材のキャリアアップ意識と企業の人材育成における課題、DevSecOps実現におけるAI/機械学習活用への期待、PCリプレースサイクルの理想と現状、重要インフラを保守する技術者の深刻な人材不足、フリーランスワーカーにおけるAIへの期待と懸念についてのデータを紹介します。
■[スキル][キャリア]IT人材の50%以上がキャリアアップに前向き、ただし3割は「育成がなされていない」(IPA/情報処理推進機構、4月24日)
・先端IT/非先端ITの会社員の50%以上が、キャリアチェンジやキャリアアップに前向き
・キャリア形成上の悩みは「計画的な配置・育成がされていない」が最多
・84%の事業会社では、社内IT人材を評価/把握する基準が「ない」
IT人材約1897人(企業所属とフリーランス)、2017社の企業を対象とした「デジタル時代のスキル変革等に関する調査(2022年度)」より。回答者であるIT人材を、データサイエンス/AI/IoTなど「先端IT」とそれ以外の「非先端IT」に分類してキャリアについて尋ねたところ、「大きくキャリアチェンジしたい」「より高いレベル、別の職務を狙いたい」は、先端IT従事者で59.7%、非先端IT従事者でも50.3%だった。ただし「計画的な配置/育成がなされていない」(先端IT従事者32.2%、非先端IT従事者28.5%)といったキャリア形成上の悩みも挙がっている。社内のIT人材評価/把握のための基準が「ない」とする事業会社は84.1%、IT企業でも41.5%に上った。
■[セキュリティ][AI]DevSecOpsでAI/機械学習の利用が進む、テストでの利用は65%へ(GitLab、4月28日)
・65%の開発者が「テスト活動にAI/MLを活用している」「3年以内に活用したい」
・コードチェックにAI/MLを活用する開発者は62%
・2022年比のセキュリティ予算、85%が減少/横ばい
今回で7回目となる、世界の金融サービス、自動車など様々な業界のITリーダー、CISO、開発者5010人を対象に、DevSecOps導入の状況などについて聞いた年次調査「Security Without Sacrifices(犠牲を伴わないセキュリティ)」より。DevSecOpsのワークフローにおいて、「テスト活動でAI/機械学習(ML)を活用している」または「3年以内に活用したい」開発者は65%に及び、AI/ML活用や自動化が不可欠になっていることがわかる。コードチェックにおけるAI/ML活用は2022年の51%から11ポイント増加して62%。またテストにボットを活用する開発者は2022年の39%から14ポイント増加の53%となった。
■[PC]PCリプレースサイクルの満足度が高いのは2年/3年、障害は「導入コスト」「キッティング」(横河レンタ・リース、4月24日)
・PCリプレースサイクルは理想/現状ともに「約5年」がトップ
・理想と合致している率(≒満足度)は「約2年」「約3年」
・理想のサイクル実現の障壁は「導入コスト」「キッティング作業」
情報システム部門のPC運用管理の担当者を対象に「PC調達に関するアンケート」として尋ねた。PCリプレースサイクルは現状、理想ともに「約5年」(現状が36.8%、理想は33.2%)が最多。ただし、現状と理想との合致度合い(≒満足度)が高いのは「約2年」(76.5%が合致)、「約3年」(64.2%)となった。理想とするPCリプレースサイクルの実現を阻む課題は「導入コスト」(40.1%)、「キッティング作業」(32.2%)、「社内稟議の承認取得」(27.7%)の順で、解決を検討しているものは「キッティング」(52.3%)が最多だった。
■[社会]保守技術者が減少、「超重要インフラ」をメンテナンスできない“2030年クライシス”(マイスターエンジニアリング、4月28日)
・2045年には保守技術者が2000年比半減、重要インフラのメンテナンスが2030年には成り立たなくなる状況
・メンテが必要な設備に対する技術者不足は2030年に30%、2045年には50%に
・2016年以降、保守不完全による自家用電気工作物の事故は増加傾向
鉄道、電力など政府が重要インフラと定義する14領域を「超重要インフラ」とし、そのメンテナンス人員不足を分析したレポート。メンテ技術者は2000年以降減少傾向にあり、2045年には2000年の約半分になると予測されている。メンテナンスを支える企業は規模が小さく、後継者不足から廃業が増える可能性も指摘する。一方で、再生可能エネルギーの普及や事業用施設増加によりメンテが必要な「自家用工作物」は増加しており、メンテが必要な設備に対して技術者は2030年に約30%、2045年には約50%も不足。「超重要インフラの維持は困難に陥る」とまとめている。
■[AI]フリーランスの25%が仕事にAIを活用、期待することは「業務効率化」「新ジャンルの仕事に挑戦」など(FREENANCE byGMO、4月24日)
・フリーランスの25%がすでに仕事にAIを活用
・AIにより期待するのは「業務効率化」(73%)
・AIは「良い影響を及ぼす」(56%)、「良くない影響を及ぼす」(12%)
フリーランスを対象にAIのイメージや活用状況を調べた。有効回答は633件。フリーランスの25.6%が「仕事にAIを活用」、「今後活用したい」人も46.1%だった。AIの影響については、56.1%が「良い影響を及ぼす」、12.5%が「良くない影響を及ぼす」と回答した。良い影響を及ぼすとした回答者は「業務効率化」(73%)、「新しいジャンルの仕事にチャレンジできる」(50.4%)、「自分にはないアイディアが得られる」(48.7%)などを期待。一方で悪い影響を心配する回答者は「AIに仕事を奪われ、収入がダウンする」(65.8%)などを懸念している。

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