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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第716回

Radeon Pro W7900/W7800が異様に安い価格で投入される理由 AMD GPUロードマップ

2023年04月24日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII

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Radeon RX 7800 XTと7700 XTを
COMPUTEX TAIPEIあたりで発表する可能性がある?

 なぜCUとShader Engineの数が重要か? と言えば、Radeon RX 7800グレードの構成を占うのに重要なファクターになるからだ。実際今回Radeon Pro W7800という型番を付けてきたことの意味は大きい。

 おそらくターゲットになるのは先日発表されたGeForce RTX 4070ではなく、今年1月に発表されたGeForce RTX 4070 Tiだと思うのだが、このRadeon Pro W7800の構成のままでは絶対性能そのものはややGeForce RTX 4070 Tiの方が上で、ただし価格や消費電力で十分勝負できる範囲、という感じがする。

Radeon Pro W7800の性能からRadeonシリーズの新製品がどうなるか想像してみよう

 AMDはNavi 32/Navi 33を現在開発中であるのは公然の秘密であるが、最近流れて来た情報ではNavi 32は60CU、Navi 33は32CUであるとされている。正直言えば、Navi 32の60CUというのはやや「?」で、64CU/4 Shader Engineではないかと疑っている。RDNA 2以降は2CU=1WGPなので、15CU/Shader Engineという構成はあまり現実的ではないと考えるからだ。

 もっとも構成としては64CU/4 Shader Engineで、ここから4CUを無効化して全体で60CU構成で製品化する、という可能性は高そうだが(この場合、14CU/Shader Engineと16CU/Shader Engineが混在する形になる)。

 ただ60CUだとすると、性能的にはGeForce RTX 4070と同程度か少し上程度で、GeForce RTX 4070 Tiとのギャップは大きい。ではどうするか? といえば動作周波数を引き上げれば良い。

 仮にNavi 32のコアを3GHzで動かせば、70コア/2.5GHz駆動のNavi 31と同程度の性能となる。Navi 32は4 MCDであってもそれなりに性能が確保されるというのはRadeon Pro W7800から想像ができる。

 そしてこのNavi 32はダイサイズも小さい(GCDのサイズはNavi 31の2/3≒200mm2ほどに収まる)し、MCDも4つで済むから製造原価そのものはRadeon RX 7900シリーズの3分の2で収まる計算になる。これはかなり競争力が高い製品価格を提示できそうだ。

 GeForce RTX 4070 Tiが799ドル、GeForce RTX 4070が599ドルとなっているが、Radeon RX 7800 XT(仮称)を649ドルあたりで投入できればかなりいいところに行けそうな気がするし、構成的にも十分可能な範囲に思える。時期的に言えば、5月末から始まるCOMPUTEX TAIPEIあたりで発表があって、製品出荷が7~8月あたりと予想する。

 このNavi 32を3 Shader Engine(48CU)に減らすとRadeon RX 7700 XT(仮称)といった構成になる。メモリーバスは192bit、インフィニティ・キャッシュは48MBになる。性能的にはGeForce RTX 4070より少し下というあたりまで落ちるだろうが、その分さらにお買い得な価格を付けられることになる。こちらもRadeon RX 7800 XT(仮称)と同時期に発表、製品投入はRadeon RX 7800 XT(仮称)の1~2か月後と予想する。

 Radeon RX 7800 XTとRadeon RX 7700 XTの2つは筆者の予想であるが、さてどうだろう?

Radeon Pro W7900/W7800を
ライバルメーカーと性能で比較

 ここで話は冒頭に戻る。今回AMDはずいぶん性能の優位性を示すのに苦労した感がある。競合となるのはもちろんNVIDIAのRTX A6000/A5500とRTX 6000 Adaとなるわけだが、さてここからがAMDがかなり苦労したところだ。

消費電力はおおむね横並び。違うのは製品価格と性能のみである

 まずSPECviewperf 2020での性能比較。ここは珍しく絶対性能そのままである。

SPECviewperf 2020での性能比較。実際には7.9%≒8%程度の差があるのに「7%」と強弁してるあたりに苦労が偲ばれる

 基準はRTX A600で、これに比べるとRadeon Pro W7900/W7800はそれぞれ39%/14%の優位性があるが、RTX 6000 Adaに比べるとRadeon Pro W7900の性能は7.9%ほど低いことになる。そこで性能を直接比較せずに、「半額未満のカードなのに性能差はわずかに7%」としているわけだ。

 ちなみにSPECviewperf 2020は何種類かのProfessional Graphicsアプリケーションの描画部分「だけ」を抜き出して比較しているもので、アプリケーションによる最適化の影響などは受けにくい。

 こちらは基本的にOpenGLを利用した描画性能のみを比較するベンチマークなので、描画性能+OpenGL Driverの品質で性能が決まることになり、ここではまだRadeon Pro W7900はRTX 6000 Adaにはおよばない、というわけだ。

 もっともNavi 31がもともとGeForce RTX 4090ではなくGeForce RTX 4080をターゲットとしていることを考えれば、この程度の性能差で済んでいることが驚異的という気もするので、そこをもう少しアピールしても良い気もするのだが、AMD的にはそうもいかないのだろう。

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