不正アクセス検知サービスのカウリスが日経FIN/SUMピッチ最優秀賞
FIN/SUM2023「IMPACT PITCH」
2023年3月28日〜31日、日本経済新聞社と金融庁は『FIN/SUM2023 〜 フィンテック、「シン個人」の時代』を開催した。フィンテックは金融機関に加え、ITや小売、流通などの非金融分野にまで影響を拡大している。また、Web3やNFTといった新たな潮流も生まれ始めている。
イベントのコンセプト「シン個人」は「新しい時代の個人」を意味する。フィンテックの共通目標は「個人(顧客)の利益をあまねく大切にする」ことだ。だれでも使いこなせるテクノロジーや制度改革により、新しい時代の個人を応援することが求められている。
イベントでは国内外の専門家を招いたシンポジウムやワークショップ、サービスの説明が受けられる展示などが行われた。本記事では31日に実施された「IMPACT PITCH」の模様をレポートする。ピッチにはフィンテック企業10社が登壇した。最優秀賞や協賛企業による企業賞を受賞したスタートアップをおもに取り上げ、他の企業もあわせて紹介する。以下、登壇した10社を分野別にまとめた。
Web3、ブロックチェーン
株式会社あるやうむ
レグテック
株式会社カウリス(Nikkei Award Grand Prize、最優秀賞)
Futurae Technologies AG(SBI Group Award)
投資・資産運用
株式会社efit
LUCAジャパン株式会社
エスジェイ・モバイルラボジャパン株式会社
金融業務DX
株式会社GIG-A(Special Jury Award 、審査員特別賞)
保険(インシュアテック)
株式会社Kiva
法人サポート
株式会社Payment Technology(Mitsubishi Estate Award)
ペイトナー株式会社
ローコストな不正アクセス検知サービス「FraudAlert」を提供する株式会社カウリスが最優秀賞を受賞
最優秀賞「Nikkei Award Grand Prize」を受賞したのは、金融庁のガイドラインに準拠した不正アクセス検知サービスを、銀行や証券会社、通信キャリアなどに提供するカリウスだ。
2020年、インターネットに接続されるデバイス数が570億個を突破し、本人確認の難易度が高まっているという。また、2021年にはマネーロンダリング対策を審査する国際組織「金融活動作業部会(FATF)」が、日本の対策を不十分と指摘した。
カリウスはインターネットバンキングで口座が開設される際に、口座と紐づく端末をモニタリングし、異なる端末からのアクセスを検知するサービス「FraudAlert(フロードアラート)」を提供している。不正送金に使用された端末や、危険国からアクセスしている端末なども検知可能だ。
「FraudAlert」の優位性は主に2つある。1つ目は不正アクセスした端末のブラックリストを、業界横断で共有していることだ。Aという銀行で不正取引した端末がBやCの銀行で保有している口座を検知し、凍結を促すことができる。銀行だけではなく、EC事業者や通信キャリア、暗号資産関連事業者などにもブラックリスト端末の情報を共有し、不正ユーザーとして検知している。
2つ目の優位性は継続的かつ効率的な顧客管理のサポートだ。金融機関は本人確認を電話やハガキなどの非効率な方法で行っているという。「FraudAlert」は電力会社と連携し、電力会社と金融機関が保有する顧客情報を照会。不一致がある場合は、インターネットバンキングへのアクセス時やATM利用時、利用者に顧客情報の更新を促すことで、効率的な顧客管理を実現している。
今後の展望として、島津代表取締役は「2026年にFATFによるフォローアップ審査が予定されている。日本が世界で最も優れたマネーロンダリング対策を、ローコストな顧客管理で実現している国と評価されることを目指し、チャレンジしていきたい」と語った。