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原点となったPCや歴代アートの展示も!『シブサワ・コウ40周年記念コンサート』レポ

2023年04月12日 13時00分更新

文● ジサトラハッチ 編集●ASCII

 コーエーテクモゲームスは4月8日(土)、横浜にある「KT Zepp Yokohama」にて『シブサワ・コウ40周年記念コンサート』を実施した。シブサワ・コウ氏は1981年10月に『川中島の合戦』を発売してから2021年で40周年を迎えている。本来であればコンサートは昨年2022年に実施される予定だったが、新型コロナウイルスの流行により延期されたが、今年はシブサワ・コウ氏の代表作である「信長の野望」シリーズ40周年であり、それも祝すような形でのコンサートとなった。

 そんなシブサワ・コウ氏の40周年を記念して、本コンサートでは信長の野望」「三國志」シリーズを中心に、シブサワ・コウ氏が手掛けたタイトルの楽曲が抽選で選ばれた幸運な約1000名の招待客がオーケストラでの演奏を楽しめた。

 会場の入り口には、コーエーテクモゲームスの原点となった『川中島の合戦』や『信長の野望』のカセットテープや、歴代のシブサワ・コウ作品のパッケージアート、『信長の野望・新生』完成発表会でシブサワ・コウ氏が実際に着た甲冑、後述する襟川恵子氏が夫の誕生日にプレゼントしたパソコンも展示されていた。

シブサワ・コウ氏がゲーム開発するきっかけになったシャープが1979年に発売したPC「MZ-80C」

『川中島の合戦』と『信長の野望』のカセットテープ

歴代のパッケージアートがずらりと並んでいた

シブサワ・コウ40周年記念グッズ

『信長の野望・新生』完成発表会で披露された甲冑

 本コンサートは抽選にて無料で招待された人が視聴でき、抽選で当選した方はオンラインでも視聴できる。本イベントにはスペシャルゲストとして平原綾香さん、新居昭乃さんが出演。指揮は志村健一氏が務める。演奏楽曲は以下のとおり。

「シブサワ・コウ40th記念コンサート」楽曲一覧

1 桃園の誓い『三國志』 1985年 作曲:菅野よう子
2 黄河 ~揚子江『三國志』 1985年 作曲:菅野よう子
3 魏のテーマ、呉のテーマ、蜀のテーマ『三國志Ⅱ』 1989年 作曲:向谷実
4 華龍進軍『三國志Ⅴ』 1995年 作曲:服部隆之
5 三國志 続貂『三國志X』 2004年 作曲:池瀬広
6 飛龍乗雲『三國志14』 2020年 作曲:大塚正子
7 覇道、その黎明『三國志 覇道』 2020年 作曲:坂部剛
8 悠然と進むもの『Wining Post 9』 2019年 作曲:五十嵐一歩
9 夢の旅人『蒼き狼と白き牝鹿・ジンギスカン』 1987年 作曲:川上進一郎
10 合戦 -武田軍-『決戦Ⅲ』 2004年 作曲:小六禮次郎
11 オープニング ~無頼の宴~『水滸伝・天命の誓い』 1989年 作曲:木下伸司
12 龍馬『維新の嵐』 1988年 作曲:菅野よう子
13 勇躍『大航海時代Ⅳ PORTO ESTADO』 1999年 作曲:高木庸旬
14 Freed From This Mortal Coil『仁王』 2017年 作曲:菅野祐悟
15 William『仁王2』 2020年 作曲:菅野祐悟
16 時の調べ 1988年 作詞:霜月智恵子、作曲:菅野よう子
17 傍にいるから 1988年 作詞:霜月智恵子、作曲:山本光男
18 覇道 -疾駆『信長の野望 覇道』 2022年 作曲:平松建治
19 オープニング ~群雄決起~『信長の野望・戦国群雄伝』 1988年 作曲:菅野よう子
20 狼煙『信長の野望・武将風雲録』 1990年 作曲:菅野よう子
21 風雲『信長の野望 Online』 2003年 作曲:川合憲次
22 現世夢幻『信長の野望・全国版』 1986年 作曲:菅野よう子
23 天下攻防『信長の野望・全国版』 1986年 作曲:菅野よう子
24 Shine -未来へかざす火のように- 作詞:松井五郎、作曲:菅野よう子、平原綾香
25 Jupiter 作詞:吉元由美、歌唱:平原綾香
26 決起、戦に臨まん『信長の野望・新生』 2022年 作曲:吉田孝志
27 OVERTURE ~信長の野望~『信長の野望・全国版』 1986年 作曲:菅野よう子
全編曲:穴沢弘慶

 コンサートは『三國志』では知らない人がいないほどに有名なエピソードを題した曲「桃園の誓い」から始まった。緩やかな曲調から、この時から壮大な物語が始まることを想起させる雄大さを醸し出すメロディーラインが、オーケストラによって表現され、懐かしさと心揺さぶる心地よさを感じさせるメロディーが楽しめた。

『三國志』や『信長の野望』だけでなく『Wining Post 9』の疾走感のある楽曲も楽しめた

 コンサートの冒頭では、コーエーテクモホールディングス 代表取締役会長 襟川恵子氏も登壇し、夫の誕生日にパソコンを贈ったことがすべての始まりだったことに触れつつ、「三國志」シリーズや「信長の野望」シリーズで流れる数々の楽曲を手掛けられた作曲家 菅野よう子氏に楽曲をお願いすることになった経緯などについて語った。『信長の野望』のテーマソングについては、楽曲を聞いて絶対に女性のボーカルに歌って欲しいと考え、どうしてもその時惹かれていた平原綾香氏に歌って欲しいと思ったという。

 しかし、その時テーマソングはボーカル曲になっていなかったので、器用である平原氏に歌えるようにアレンジをして歌って欲しいとお願いして、快諾して歌って貰ったというエピソードを明かした。

コーエーテクモホールディングス 代表取締役会長 襟川恵子氏

 その後、コーエーテクモホールディングス 代表取締役社長 シブサワ・コウ氏が挨拶を行なったほか、ゲストが登壇する度に思い出などを語った。シブサワ・コウ氏は、今回の選曲のポイントを聞かれると、自分が主役なので、歴代のプロデューサーの意見も加味したが、基本私が選びました、と回答。要所要所にユーモア―を交えながら、絶妙なトークで会場を盛り上げた。

コーエーテクモホールディングス 代表取締役社長 シブサワ・コウ氏

 第一部の中休みには、元ファミ通編集長で現在KADOKAWAデジタルエンタテインメント担当シニアアドバイザーを務める浜村弘一氏が登壇。浜村氏は最初の頃の『三國志』のキャラクターグラフィックスについて触れ、当時は8色や16色、その後256色といった制限の元ドット絵で描かれていたが、そういったドットでもキャラクターの見分けが付いた。それは、会長の襟川氏がデザインし、統括することで現在に至るまでその基本的なイメージは踏襲していると、裏事情をシブサワ・コウ氏が語った。

浜村弘一氏(左)は「LOGiN」や「ファミ通」とゲーム誌に長く携わり、当時の懐かしいエピソードと共にシブサワ・コウ氏と思い出を語った

 シブサワ・コウ氏がゲームの世界に入ったのは、パソコンを奥さんにプレゼントされた当時、アスキーが発行していたものを含む4大ゲーム誌に掲載されていたプラグラムリストを、マシン語も含めて入力して遊んでいた。歴史が好きだったので、歴史のゲームは出てこないのかと待っていたが出てこないので、自分で『川中島の合戦』を作った。それを通信販売したら、当時は歴史のゲームがなかったので非常にうけたとのこと。

 浜村氏は『信長の野望』をきっかけにゲーム業界に入って来た方は非常に多い、クリエイターの方と話すと一時代を作られたと感じていると。シブサワ・コウ氏は、ゲームが好きだからこれだけ長く続けられている、お客様がずっとご支援くださっている、叱咤激励も含めて自分のやる気に繋がっているとコメントした。

 また、浜村氏が『信長の野望』の今後について触れると、シブサワ・コウ氏は最近、敵方のAIをずっと作っていて配下の武将のAIも効かせて、君臣一体の戦国時代が楽しめるというものを再現している、と語った。

『信長の野望 戦国群雄伝』の「時の調べ」を生声で披露した新居昭乃さんは、オファーされた時の気持ちを聞かれ、「当時、菅野よう子ちゃんと出会って間もない頃で、毎日のようによう子ちゃんの曲を私が歌いに行くといったお仕事が続いていた中で、この歌に出会いました」とのこと。「時の調べ」という曲は、ロマンチックでキレイな曲だったが、当時はゲームの知識がなく、他の曲名に「コマンド」などがあっても、意味が全く分からなかった。ゲームと言われてもよく分からないまま歌っていたというエピソードを語った。

今なお色あせない透明感のある歌声で、「時の調べ」「傍にいるから」を披露した新居昭乃さん

 指揮を務めた志村健一氏は、小学生の頃に『信長の野望・全国版』を廊下の突き当りにあったテレビで、母親に隠れて夜中にずっと攻略していた思い出があると、振り返った。さらに、演奏していても感極まる瞬間がたくさんあって、本当に幸せな時間を過ごさせて頂いております、と語った。

演奏のこだわりのポイントはと聞かれ、打ち込みなどもあるゲーム音楽なので、必ずしもオーケストラに向いている楽曲ばかりではないが、穴沢弘慶氏の編曲により、素晴らしいオーケストレーションに仕上がった。コーエーテクモのサウンドチームの監修もあり、皆さんの力の結集で今日のスコアが出来上がっていると語った

 さらに、イベントの後半には、平原綾香さんがゲストとして登壇。テーマソングをオファーされた気持ちを聞かれ、平原さんは1984年生まれで、『信長の野望』が1983年発売と、ほぼ同い年で歴史のある、たくさんの人に愛されたゲームの歌を制作して歌うということは、とても勇気のいることだった、と振り返った。

平原綾香さんは、抜群の声量でファンを魅了

 そのうえで、菅野よう子さんの作られた『OVERTURE ~信長の野望~』のメロディーを聞き、歌として歌うにはもっと発展させたらどうだろうと加筆し、そこに有名な作詞家の松井五郎さんに作詞を付けてくれたので、オファーを受けてからいろいろな人が動き、皆で愛を込めて作ることができた、というエピソードを語った。

 そうして出来上がった「信長の野望・創造」のテーマソング「Shine -未来へかざす火のように-」を平原さんが熱唱。その後、アンコールでは平原さんの代表曲である「Jupiter」も披露された。コンサートのラストは、「信長の野望」シリーズ最新作の『信長の野望・新生』から「決起、戦に臨まん」、『信長の野望・全国版』の「OVERTURE ~信長の野望~」が続けて演奏され、コンサートが締めくくられた。

 今回の公演では、40年の長い歴史の中で培われた素晴らしい楽曲の数々が、オーケストラ用に編曲され、懐かしくも迫力と深みのある曲調で名曲を味わえた。演奏のバックには、当時のゲーム映像が可能な限り流され、当時実際にゲームをプレイしていた人には、記憶が呼び起され、またオーケストラによって描かれた曲調に、新たな発見も得られた貴重な体験だったことだろう。

 今回は幸運にも抽選で選ばれた方のみの視聴となったが、もし映像化やCDでの販売などの機会があれば、再度じっくりと楽しんで名作の数々に思いを馳せて欲しいと思う。

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