大日本印刷も出席、DX実現に向けた社内3500人によるQlik Sense活用を紹介
Qlik、“不確実性の時代”に対応するデータ基盤の製品戦略を語る
2023年03月09日 07時00分更新
データ統合/分析のクラウドプラットフォームを提供するクリックテック・ジャパン(Qlik)は、2023年3月7日、製品戦略の基本姿勢や日本市場における取り組みなどを説明する記者説明会を開催した。
同説明会にはQlik製品を導入している大日本印刷(DNP)もゲスト出席し、自社におけるDXの取り組みにQlikをどう活用しているかを紹介した。
データをリアルタイムに分析し、アクションにつなげることが大切
Qlikでは「アクティブインテリジェンス」を提唱している。Qlikカントリーマネージャーの今井浩氏は、「不確実性の高まる世界で企業が的確なアクションを取るために、データドリブン経営の必要性が高まっている」と述べたうえで、「現場で起きていることをリアルタイムにデータとして取得し、必要な人が必要な気づきを得てすぐ行動に移し、利益に変えることができる」のがアクティブインテリジェンスの目指す姿だと説明する。
また、米Qlik CPO(最高製品責任者)のジェームズ・フィッシャー氏は、不確実な時代のなかで危機に対応し、さらに成長する企業に共通しているのは「データドリブンの企業であること、AIアダプター(AIを積極活用する企業)であること、それらによってレジリエントな(回復力のある)企業になっていることだ」と説明した。「前回の景気後退時にも、上場企業の約10%(=レジリエントな企業)は、他の企業よりも顕著にいい成績を残している」(フィッシャー氏)。
アクティブインテリジェンス実現に必要な機能を実装したクラウドプラットフォームが「Qlik Cloud」だ。企業内外にあるシステム群からリアルタイムにデータを収集/統合/加工する「データ統合」と、ビジネス現場の気づきとなる情報の提供や取るべきアクションの示唆を行う「データ分析」の機能群で構成される。データの信頼性を担保するセキュリティ機能、気づきやアラートを与えるAI/機械学習技術も盛り込まれている。
フィッシャー氏は、アクティブインテリジェンスを実現するうえではとくに、データのエンドポイントどうしを柔軟に(N対Nで)接続したデータパイプラインを実装できる「データファブリック」と、データサイエンティストの力を借りずにエンドユーザー自身でAIモデルの構築/チューニングができる「AIの民主化」がポイントだと述べる。
「顧客が危機に備える際に、Qlikは最適なパートナーになる。多くのデータを統合し、分析や可視化が簡単に行え、AI/機械学習も利用できる。時間をかけず効果的に結果を導き出せるだけでなく、アクションを起こすことまで自動化できる点も特徴だ」(フィッシャー氏)
顧客フィードバックを基に製品開発、2023年の製品ロードマップも紹介
Qlikの製品戦略の基本姿勢として、フィッシャー氏は「顧客の時間とコストの効率化を実現し、顧客の現実に即した製品を用意すること、クラウドを活用したクラス最高の製品を提供すること」だと語る。
その実現に向け、Qlikでは「SaaS主義」「データ主義」「顧客優先主義」という3つの基本理念を掲げて取り組んでいる。
「クラウドファーストアプローチ(SaaS主義)によって顧客価値を拡大するだけでなく、オンプレミスでもクラウドでも、顧客が望む場所にデータを格納でき(データ主義)、ビジネスを継続できること。そして、Qlikが行うすべての活動が顧客中心であり、これまでの投資を守ることを大切にしている」(フィッシャー氏)
Qlikの製品チームでは、市場調査や顧客からのフィードバックをもとに“イノベーションパイプライン”を構築しており、実際に製品機能の80%以上が顧客からのフィードバックによって実現したものだという。顧客の声は製品ポートフォリオ戦略や投資の優先順位にも反映されており、さらにはリリースした新機能についても顧客の使用状況や評価を把握して、将来の製品や機能改善に反映させているという。
「なかでも重点投資分野に挙げているのが『データ統合』『分析』『基盤サービス』の3つ。クラウド内でさまざまなデータを扱えるようにし、AI/機械学習を活用したクラス最高の分析力を提供すること、データの移動や分析を重視した基盤サービスを提供していることが特徴だ」(フィッシャー氏)
そのほかにも、「Qlik Connector Factory」を通じた多様なアプリケーションコネクタ、効率的でスケーラブルなデータ移動/変換を実現するプッシュダウンELT変換、あらゆるスキルレベルのユーザーがセルフサービスでインサイトを引き出せる新たな予測/分析機能「Qlik AutoML」なども提供している。
前述したとおり、アクティブインテリジェンスが最終的に目指すものは、インサイトに基づく適切でリアルタイムな「アクション」だ。この領域ではアクションの自動化機能を提供しており、ビジネスプロセスやビジネスアプリケーションへの組み込みにも投資をしてきたという。
フィッシャー氏は今年、2023年の製品ロードマップも紹介した。
「データ統合からアナリティクス、オンプレミス、クラウドまで、すべての分野に対して投資をしていく。オンプレミスユーザーにも同じようなソリューションを提供し、『Qlik View』や『Qlik Sense』といった過去の投資を守ることも約束している。日本のパートナーとともに、大きな潮流となっているデータ統合やアナリティクスの活用を広げていけることを楽しみにしている」(フィッシャー氏)
AWS、Microsoft Azure、Google Cloud、Snowflakeといったテクノロジーパートナーに加え、日本市場の販売パートナーとして、アシスト、富士通、NTTデータ、日立社会情報サービスなどがいる。今井氏は「日本の販売パートナー向けにパートナープログラムを進化させており、共にビジネス計画を議論し、お互いのリソースやターゲット市場、ソリューション、メッセージなども共有しながらエコシステムを強化している」と語る。
日本における導入事例として、調達プロセスを中心としたサプライチェーンにおいてデータ活用によるROI最適化に取り組むNTTデータや、部門横断型のデータ活用にQlikを採用した関電サービス、全社変革プロジェクトにQlikを導入した富士通などが紹介された。なお今井氏によると、日本においては、SAPとそれ以外のデータを結合して分析する需要が増えているという。
DNP:あらゆる業務領域でQlik Senseを活用、社内浸透のための取り組みも
Qlikの販売パートナーでもあるDNPでは、営業、業務、生産の3領域で社内DXに取り組んでいる。このうち生産分野におけるDXでは、Qlik Senseの導入でデータ分析基盤を整備し、データドリブン経営に向けた第一歩に取り組んでいるという。
DNPでは、2019年からQlik Senseの導入検討を開始し、2020年に社内DXの取り組みがスタートしたのにあわせてQlik SenseのPoCを開始した。2021年からはQlik Senseの本格的な利用をスタートし、現在は3500人以上の社内ユーザーが利用しているという。
DNP 情報イノベーション事業部DXセンターの鶴田博則氏は、社内におけるQlikの活用例を次のように説明する。
「たとえばバックオフィス業務では、タレントマネジメント領域で利用されている。従来は管理職の経験に基づく判断が行われていたが、現在ではデータを活用し、スキルや勤務時間を考慮した合理的な人員配置が可能になっている。さらに担当者ごとのスキルセットの可視化も可能になり、それを社員のスキルアップ機会提供などに生かしている」(鶴田氏)
また製造部門においては、不良品の発生などによる素材のロスを低減する取り組みに活用している。不良品発生時に誰が製造を担当していたのか、どのような作業をしていたのかを分析し、改善項目を明確にしたうえで工程や作業内容に反映させているという。「Qlik Senseにより、多角的にデータを見ることができ、事象の原因を突き止め、意味のある対策が可能になっている」(鶴田氏)。
システム運用部門では、属人化した運用保守業務を分析している。点在していたデータをQlikで集約することで、分析着手までの時間を大幅に短縮して「攻めの保守」(鶴田氏)を実現したという。
このように、DNPでは幅広い事業領域でQlikを活用しており、対象とするテーマはすでに30を超えるという。
現場におけるデータ活用の浸透を目指して、DNPでは各部門での取り組み成果を持ち寄って情報交換を行う「テーマ共有会」、各部門でQlikのアプリ開発が行えるように教育を行う「ハンズオンセミナー」、開発者向けのよろず相談室を開設する「オフィスアワー」も実施している。
「今後の展開としては、データドリブン経営の確立に向けてさまざまなテーマに挑戦したいと考えている。経営トップ向けダッシュボードの構築や、分析の部門およびサービスの横断によるデータドリブン経営の加速のほか、社内活用のさらなる高度化に向けた取り組みやグループ企業への提供開始を進める」(鶴田氏)