中国の公共放送が春節で
メタバースやバーチャルキャラクターを大プッシュ
春節前のおおみそかにはテレビ番組「春晩(春節聯歓晩会)」を家族で見る過ごし方が多い。春晩は寒い中国北部で視聴率が高く、南に行くほど視聴率が低くなる傾向があるが、それはさておき。この国民的なイベントでテレビ局のCCTV(中国中央電視台)は最新のテクノロジーを積極的に導入し、国民にわかりやすく伝えようとする。
たとえば去年は四足歩行ロボが360度様々な角度から見られるハイビジョンを活用し、またさらにさかのぼればキャッシュレスを普及させようと、番組を見ていればあるタイミングでキャッシュレスアプリで紅包と呼ばれる金一封がもらえる仕掛けを行っていた。
では今年はというとCCTVによる「オンライン版春晩」でメタバース、NFT、バーチャルキャラクター、それに自動生成AIを盛り込んだ。
それは中国風建築が並び水が流れる巨大メタバース空間で、番組を配信する巨大ディスプレイを前にアバターが動き回ったり踊ったりしながら視聴できるというサービスで、何万人もの人がメタバースで視聴した。
開発したのはゲームや各種ネットサービスで知られるネットイースで30日で開発したという。デジタル抽選チケットを入手して当選した人がメタバースを利用できたが、そのチケットがうさぎ年をテーマにAIがイラストを描くので各人異なり、かつブロックチェーンを活用することで抽選結果で不正ができないような仕掛けにしている。
ネットイースはこのメタバースイベントにあわせて約30セットの衣装と、兎年にあわせたデザインのメガネやヘッドギアなどのアクセサリーをリリース。コンテンツに合わせてアバターがペンライトを振ったり、花火を打ち上げたりすることができ、歌が盛り上がると会場で風船が浮かび、観客はバーチャルアバターを操作して飛び上がり風船をつかまえることもできる。
シンガーの中には、近年中国でバーチャルキャラクターが次々に誕生したことから、CCTVの女性のバーチャルキャラクター「小C」も歌を披露。春節のお祭り感、いやそれ以上のメタバースだからできるお祭りをできるかぎりのテクノロジーをふんだんに盛り込んで、国民的番組で実施したわけだ。
他にもバーチャルキャラクターが動いてあいさつするオンラインのグリーティングカードが作れるサービスをファーウェイが提供するなど、春節に合わせて多様なサービスがリリースされた。各社が種まきを行ったことで、かつてのキャッシュレスのように利用者が増えて数年後には普及と言えるまでになるかもしれない。
山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で、一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。書籍では「中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立」、「中国のITは新型コロナウイルスにどのように反撃したのか? 中国式災害対策技術読本」(星海社新書)、「中国S級B級論 発展途上と最先端が混在する国」(さくら舎)などを執筆。最新著作は「移民時代の異国飯」(星海社新書、Amazon.co.jpへのリンク)

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