ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第707回
Xeon W-3400/W-2400シリーズはワークステーション市場を奪い返せるか? インテル CPUロードマップ
2023年02月20日 12時00分更新
Milanには勝てるがGenoaに勝つのは厳しい性能
さてそのXeon W-3400/W-2400シリーズだが、ターゲットとする市場はワークステーション向けでありコンテンツ制作やCAD/シミュレーション、それとAIやデータサイエンスなどの分野である。
ということでここからは性能編になるわけだが、最初にこのスライドを示すのは正直どうかと思う。
なぜかというと、Sapphire Rapidsの発表会の際に下のスライドを示しているからで、Xeon ScalableにSPEC CPUは不適当だがXeon Wには適当というのは、正直意味がわからない。
それはともかくとして、シングルススレッド性能ではXeon W-3275比で28%向上、マルチスレッド性能は同120%向上としているが、実際でどの程度か? というのがよくわからない。
マルチスレッドの方、このグラフの棒の長さを実際に測定してみると、Xeon W-3275:Xeon w9-3495Xの比が1:2.210ということでほぼ120%増(厳密には121%増)となっており、ほぼ棒の長さが性能比に等しいと考えられる。
そこで同じようにXeon Gold 6258R×2との性能差を比較すると17.9%増となる。幸いにXeon Gold 6258R×2のSPECrate2017_int_baseの数値は公開されており、一番数字が高いASUS RS720-E9(Z11PP-D24) Server Systemの数字で397である。ここからXeon w9-3495Xのスコアは468程度と推定できる。
ちなみに比較的構成が近いXeon Platinum 8480+の結果は2023年第1四半期の結果に現在19システム登録されており、最小866、最大969、平均918.9といったスコアになっている。登録されているのはいずれも2ソケットのシステムなので、半分にすると459.4といったところで468よりやや低めだが、コア数はともかく動作周波数の設定が異なるので、この程度の差があるのは当然である。
さて問題は対抗馬である。現時点ではRyzen Threadripper Pro 5995WXと比較するのが適当なのだろうが、こちらも残念ながらSPECのデータベースに結果が登録されていない。
そこで比較的近い構成ということでEPYC 7773Xの結果を拾うとこちらは1ソケットが10システム、2ソケットが15システム登録されており、1ソケットは最小382/最大440/平均410、2ソケットの方は最小794/最大864/平均829.1、要するにソケットあたり410~415程度となる。
ここから推定してRyzen Threadripper Pro 5995WXの方は420に届くかどうかというあたりで、なんとかXeon W-3400シリーズは面目を保った格好である。もっともこれはRyzen Threadripper Proの方がMilanベースだからという話である。
では今年中に発表される(出荷時期はともかく発表は今年のCOMPUTEXあたりが濃厚)と思われるGenoaベースのThreadripper Proに勝てるか? というとかなり厳しい。
すでに64コアのEPYC 9554P(1P)のスコアはSPECのデータベースに登録されているが、スコアは644~654である。64コアでこれだから、96コアのEPYC 9654Pでは820~835までスコアが跳ね上がる。これと勝負するのはなかなかに大変そうだ。
つまりインテルとしては、GenoaベースのThreadripper Proが投入されるまでにどれだけのワークステーション市場を奪い返せるか、というのが目下の問題だ。
そうした市場動向の話はおいておくとして、性能として示されたのが下の画像である。Xeon Gold 6258Rの2ソケットよりも性能が伸びているというわたりで、インテル的には十分な性能と判断しているのだろう。
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