社会実装に向けた取り組みが加速する自動配送ロボット
「自動配送ロボットを活用した新たな配送サービスに関するセミナー」レポート
2022年度NEDO事業の進捗に関する講演
2022年度NEDO事業の進捗に関する講演では、パナソニックホールディングス株式会社 テクノロジー本部 デジタル・ AI 技術センター モビリティソリューション部 部長 東島勝義氏、株式会社ZMP ロボハイ事業部 事業部長 河村龍氏、LOMBY株式会社 代表取締役 内山智晴氏が登壇し、各社の取り組みを発表した。
住宅街における
配送ロボットサービスの取組み状況
パナソニック ホールディングス株式会社では、自動配送ロボットに求められる安全性・効率性・社会受容性を並立させるため、複数ロボットと遠隔管制との協調による実用的なソリューションづくりに取り組んでいる。
パナソニックの開発した自動搬送ロボット「ハコボ」の特徴は、1)機能安全規格IEC62061に適合した機能安全ユニットの搭載で緊急時には必ず止まる安全機能、2)雨天走行可能な自律走行制御、3)音声発話やまゆ毛の形で感情表現ができるフレンドリーなインタラクションとデザイン、4)保安要員のいらないMRM(Minimal Risk Maneuver)技術―――の4つ。
遠隔管制システム「X-Area Remote」は、AI監視によるサポートで1人4台のロボットを遠隔管制可能だ。
2020年度から実証実験を開始し、2022年4月には、Fujisawaサスティナブル・スマートタウン(FSST)での完全遠隔監視・操作型 自動配送ロボットの道路使用許可を取得し、フルリモートで4台の運用を実施。9月に240時間の実績を達成し、「特定自動配送実証実験に係る道路使用許可基準」に基づき同地域での道路使用許可を取得。これにより、簡素な手続きでの他拠点展開が可能になった。本制度による初の他地域展開として2022年12月1日からは丸の内での販売実証実験を実施する。
また2022年5月から10月までは、つくばにて、楽天、西友との連携でスーパーからの配送サービスを実施。FSSTでは5月から7店舗からの定期配送サービスを現在も継続して提供している。今後、持続可能なサービスへと進化させるため、課題抽出をしているところだそう。
宅配ロボット普及に向けた
遠隔管理システムについて
株式会社ZMPは、自動走行ロボットと自動運転技術を開発するロボベンチャーだ。
同社が開発するロボット管理プラットフォーム「ROBO-HI」は、施設やエリア内で、ロボットやIoT、設備、業務システムを連携させながらロボットを動かす機能を持つ。その機能のひとつである遠隔監視システムは、ロボットのカメラ映像やセンシングデータをクラウド経由でオペレーターが監視し、自律移動の継続性をサポートする。
ただし、宅配ロボット1台に1人のオペレーターが監視するのではコストが見合わない。そこで、交差点の有無や混雑状況などから注視が必要なときだけ監視に入る仕組みを作ることが重要であり、1人10台の管理を目標に研究開発を進めているとのこと。
同時に、ロボットの自律走行機能を高めていくことでクラウド監視の比重が下がり、将来的には監視なしでの配送が可能になれば、運用コストを大きく下げられる。
自動配送ロボットの普及に向けた取り組みとして、2022年2月にはENEOS株式会社と共同でフードデリバリーの実証を実施。東京の佃・月島・勝どきエリアで飲食店27店舗と約5000世帯が参加して商品配送を行なった。
またオペレーター育成のため、自動車教習所を運営しているモトヤユナイテッド株式会社と協業し、実際のロボットを用いたオペレーショントレーニングも実施している。
現場を無人化する自動配送ロボット
「LOMBY 」
LOMBY株式会社は、配送現場の無人化にフォーカスし、遠隔操作型ロボット「LOMBY」を用いた新たな雇用機会創出と配送業界への労働力不足解消に取り組んでいる。
LOMBYは、パソコンとネット環境さえあればどこからでも操縦ができる仕組み。例えば、地方や海外から都市部のロボットを操作することが可能だ。遠隔操作システムは低コスト・低遅延が特徴で、2022年12月にインドネシアからの遠隔操作の実証実験を行ったところ、ほとんど遅延なく走行に影響がなかったという。
さらにロボットへの荷物の積載も無人で行なえるように、専用ステーションを用いた自動積載システムを開発。配達員がステーションに荷物を入れると、配送ロボットがボックスから荷物を取り出し、自動で積載して配送する仕組みだ。
実用化に向けて各地でサービス実証をしながら開発を進めており、今後は、2023年3月に広島市内の公道走行試験、7月には市内の高層ビルでの配送実験を実施する予定だ。
改正道路交通法施行に向けた
ロボットデリバリー協会の活動について
最後の講演では、一般社団法人ロボットデリバリー協会 事務局 城譲氏が2022年1月に設立した同協会の活動について紹介した。
同協会の活動内容は、1)自動配送ロボットの安全基準の制定と改訂、2)安全基準に基づく認証等の仕組みづくり、3)自動配送ロボットに関係する行政機関や団体等との連携、4)自動配送ロボットに関する情報の収集と発信――の大きく4つ。
現在は、自動配送ロボットの機体および遠隔操作装置に関する安全基準及びその認証の仕組み、運用のガイドラインづくりが進められており、2022年3月には策定方針が公表されている。
2022年11月末時点で20社の正会員、賛助会員8社が参画しており、さらに多くの企業の参画を募集しているとのこと。
閉会の挨拶では、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 ロボット・AI部 部長 古川善規氏が登壇。
「少子高齢化、労働力不足の問題を背景に、配送ロボットを活用するシーンは近い将来やってくる。それを実現するために多くの方に技術的なチャレンジをしていただいています。
来年度は道路交通法の改正が施行されることで、さらにチャレンジがしやすくなるので、より多くの方に取り組みに参加してほしい。我々も新しい社会に向けてロボット配送システムの実現に向けて継続して努力していきたい」と語った。