オリィ研究所とNTTら、分身ロボットカフェでローカル5Gなど実証実験を実施
東日本電信電話株式会社(NTT東日本)と日本電信電話株式会社(NTT)、株式会社オリィ研究所は2023年1月17日、株式会社オリィ研究所が運営する「分身ロボットカフェDAWN ver.β」常設実験店で活用中の分身ロボット「OriHime-D」において、NTT東日本が提供する大容量、低遅延の無線アクセス環境であるローカル5Gと、NTTが開発した無線アクセス環境も含めた端末同士の通信品質を制御する技術を組み合わせ、遠隔地の操作者が通信遅延によるタイムラグを感じない遠隔ロボット操作を実現した。
「分身ロボットカフェDAWN ver.β」はオリィ研究所が2021年6月に東京の日本橋にオープンしたカフェ。障がいや病気で外出困難な人が分身ロボット「OriHime」や「OriHime-D」を遠隔操作し、サービススタッフとして接客を行なう。NTTは、この取り組みに協賛し、遠隔ロボット操作の共同実証実験をしている。
分身ロボットはWi-Fiにより無線接続されているが、アンライセンスバンドの無線周波数を使用していることもあり、外部電波との干渉などによる無線通信品質の低下が生じやすかった。そのため、タイムラグや通信断による操作の中断で、操作者のストレス増大や操作精度の低下、カフェでのサービスに支障が生じるという問題があったという。カフェでスムーズなロボット操作を実現するためには、外部の電波などの影響を受けにくい無線アクセス環境の整備や、無線通信区間を含めた分身ロボットと操作者間での通信遅延量を低減する必要があった。
実証実験では課題解決のため、外部電波などの影響を受けにくい無線アクセス環境であるローカル5Gをカフェ内に構築するともに、NTTが開発した通信品質を制御する技術を組み合わせ、遠隔ロボット操作の実証実験を行った。
ローカル5Gは、企業、自治体などが自社敷地内に柔軟に構築、保有が可能な5Gシステム。国の電波免許制度により周波数を自社の敷地内で占有できるライセンスバンドを利用するため、外部の電波との干渉による通信品質の低下(切断やスループットの低下による画像乱れなど)が生じにくく、安定した無線アクセス環境を構築できるという。高速大容量、低遅延通信の利用できるなどの利点もある。
また、NTTはアプリケーション同士でやり取りされる通信パケットの通信優先度を集中制御する通信品質制御技術を新たに実現した。同技術は通信パケット量推定機能、通信パケットの送信タイミング制御機能から構成されており、2つの機能を組み合わせることで、アプリケーション間の通信品質制御を行う。これら機能はデバイスや無線アクセスポイントに実装でき、利用する無線ネットワークの通信規格や無線通信装置に依存することなく通信品質制御を行うことを特徴としている。
実証実験では、NTT武蔵野研究開発センタ(東京都武蔵野市)、NTT中央研修センタ(東京都調布市)、分身ロボットカフェDAWN ver.β(東京都中央区)を全長100キロの光ファイバで接続。カフェ内に整備したローカル5Gを経由し、武蔵野研究開発センタ内から障がいのある操作者がカフェのサービススタッフ業務を行い、ロボット操作感やアプリケーション間でのネットワーク性能評価を実施した。
その結果、ローカル5Gの活用で従来のWi-Fiを使って分身ロボットを操作していた際に発生していた無線通信の接続が途中で切断される事象や、映像品質の劣化による遠隔操作のしづらさがが解消され、分身ロボットの操作性向上が確認できたという。また、数十ミリ秒以上の遅延量増加が発生する大容量のダミートラフィックをローカル5Gへ付加した条件下でも、NTTが開発した通信品質制御技術を分身ロボットに関わる通信(映像、音声、ロボット制御信号)に適用することで、付加されたダミートラフィックの影響を受けない低遅延性能の維持を確認したとしている。
実証実験での成果は分身ロボットへの適用のほか、製造工場や建設現場などで活用する遠隔操作産業ロボットなど、ネットワークの低遅延性能が必要なケースにも展開が期待できるという。