若者が働きたくなる町工場 日本ツクリダスがリードする製造業のDXとブランディング強化
堺市発のイノベーションを創出するスタートアップ起業家連続インタビュー第4回
提供: NAKAMOZUイノベーションコア創出コンソーシアム、堺市
民間主導で情報を発信し、町工場全体のデジタル化を後押しする
ツクリダスは大阪府狭山市で創業し和泉市を経由して、現在は堺市に本拠を構えている。堺市に移転するに際しては、人の繋がりに助けられたところが大きかったと角野氏は語る。
「お隣にある板金加工会社の専務が私の高校の先輩後輩の関係でして、Facebookで再会してちょくちょく会うようになった。それで会社を立ち上げようと考えていると話したら、彼の父親である社長から隣の土地を空けてやるというお話をいただいた。息子の友人ということもあるだろうが、機械加工と板金加工でシナジーもあるだろうという計算もあったと思う。
競合となる会社がたくさんあるというのでは困るが、弊社で行うモノづくりには協力関係を築ける会社が必須になるものがある。だから堺市のように協力会社がある程度集まっている地域は非常にメリットが大きかった」(角野氏)
本拠地移転に人脈を活かしたり、ネットを使ったブランディングを事業化するなど、情報の価値については十分理解している角野氏だが、自身は情報を集めるのが得意ではなかったと話す。
「私は自分で情報を拾ってくることが下手で、(支援プログラムや補助金など)堺市からの情報も知らなかったし、何も受けてこなかった。そういったことは町工場や小規模事業者には割と多いと思う。
どこまで(行政サービスを)民間に売り込めるのかは行政のジレンマだと思う。例えばテレアポをガンガンやるということはできないだろうし、バランス感覚が問われる。一方で我々民間は日々の仕事に追われていて、行政が発信している情報を全部追いかけるというのは難しい。
弊社はここ1、2年で堺市とのかかわりが急に増えてきて、セミナーなどに呼んでいただくことも増えてきたし、役所の方と話をする機会もいただけるようになった。これからは我々のような接点を持てたところが市に代わって町工場に対して情報発信をするなどしていくべきなのかと思っている」(角野氏)
ツクリダスはモノづくりとシステムとデザインの3つの武器を組み合わせて、顧客である町工場の事業を伸ばしていくビジネスを展開している。モノづくりを除けば顧客にとってなじみのない業務変革が求められることになる。それを受け入れるのは、先輩町工場であるツクリダスが実際にやって成功した取り組みだからに他ならない。さらに、社内のデジタル化にしても社外への情報発信にしても、導入に際してツクリダスが苦労したところはノウハウがあるわけだから、よりスムーズに導入できる。
「弊社のビジネスはシステムを導入していただいているけどモノづくりはまだだとか、モノづくりの取引はあるけどシステムはまだだとか、いわゆるクロスセル状態になっていない。相乗効果はあると思っているので、今後はシステムを知っていただいたお客様がデザインもやりたいなどと思っていただけるようにアプローチしていきたい。
我々の根本にあるのは、町工場が元気になればいいということ。まだまだ町工場という言葉にはネガティブな印象がある。だから私はわざと町工場と言っている。ネガティブな町工場がデザインを取り入れてすごく元気になったとか、町工場にやたら若者が集まっているよとか、そういう世界ができた時にもう少し面白いことになると思う。町工場のネガティブなところをポジティブに変えたい。情報発信を含めて、そういう取り組みを進めていく」(角野氏)
町工場のデジタル化が進み、自ら情報を集めに行くようになることが理想だろうが、それには代替わりなどまだ少し時間がかかる。それまでの間、ツクリダスは情報発信をリードしつつ自社の成長の原動力として町工場を元気にするビジネスを展開していく。そういったしたたかな町工場があふれる街として、堺市のモノづくりが活性化していく。
(提供:NAKAMOZUイノベーションコア創出コンソーシアム、堺市)