グラムス、商品画像の一括作成で2次流通のデジタル化をリード
堺市発のイノベーションを創出するスタートアップ起業家連続インタビュー第6回
グラムス流会社経営の視点から堺市のエコシステムを見る
「ZenFotomatic」の発想からしてもグラムスは非常にラディカルであると同時に現実的だが、開発だけでなく会社運営においても同様な割り切り方針を貫いている。例えばブランディング的な視点からは、2次流通事業者より1次流通を対象にしたサービスを開発した方が良いと思われるが、一方でスタートアップが1次流通に食い込むためには資本力を含めて非常に大きなパワーを必要とする。もともと会社をあまり大きくするつもりのなかった三浦氏にとって、2次流通事業者に力点を置いたソリューションの開発は極めて自然なことだったと言える。
「社員を10人以上に増やしたくなかった。ビッグバンドでやった経験はなかったので(笑)。利益率の非常に高い小さなチームで、メンバーが自律的に動いていくようになれば良いなと思っていた。それでまず自分の周りが幸せになり、外に波及していくイメージ。
今は100人くらいの組織になってきたが、私が何も言わなくても若い人たちがマネジメントをしてくれるようになった。会社としてやらなくてはならないことは増えてしまったが、それを自分からやってくれている。こうなるまでには時間がかかってしまっていて、5年前くらいに気が付いていればもっと早くこういう運営にできたのにと思う」(三浦氏)
楽譜を共有しつつも個々の奏者の即興的プレイが調和することによって輝くのがバンドであるとするなら、最終ゴールの共有を前提にした個々のチームの自律的行動の化学反応でグラムスを加速していきたいと考えているような印象を受けた。それまでは経営の経験を持っていなかった三浦氏にとっては現実的な、しかし古い世代の経営者から見れば革新的な企業運営に映るのではないだろうか。
三浦氏は堺市におけるスタートアップのエコシステムに関しても、ラディカルかつ現実的なアイデアを話してくれた。
「成長するところに集中投下して、それが育ったところで周りにある永年続いていた会社をM&Aし、買われた側には新しい資本家となってもらう。彼らは新たな産業を生む原動力となる。それが堺市の発展と成長というゴールに向けての最短コースなのではないかと思う。
関空があるということは堺市にとって非常に大きな強みとなっているが、一方で危機感も持つべき。例えば一部のベトナム人が多くの日本人よりはるかに裕福だということを知っている人はどれだけいるのか。ホーチミンの中心部の地価は堺市の中心部の地価の1.5倍から2倍程度に上がってきている。空港があって土地も安く、近くに大都市もある堺市に外国人が大勢定住するようになる日が来るかもしれない」(三浦氏)
既に資本家の側に立つ三浦氏の発想に対し、堺市は新産業創出の一方の担い手である若者に着目している。彼らの弱みはまだ社会とのつながり方を知らないというところにあると見て、オンラインコミュニティ「堺・中百舌鳥イノベーションBASE」を通じて出逢いを創出していこうとしている。
「我々(三浦氏とHosford氏)が偶然出会えたのはラッキーだった。こういう幸運に近づくには打席に立ち続ける(出会いにチャレンジし続ける)というのが唯一の方法だと思う。ただ打席への立ち方にもいろいろあって、ひたすら数多く立つというのもあるし、熟慮しつつ厳選した打席に立つというやり方もある。市にはそこを見極めてメンタルも行動力もスマートである若者を支援してほしい。逆に若者には市などに頼るだけでなく、自力でどぶ板営業でもやって外とのつながりを作っていくくらいのことはやってほしい」(三浦氏)
三浦氏もHosford氏も、自ら行動を起こして周囲を巻き込んでいくことにより、企業を成長に導いた実績がある。堺市が生み出そうとしているイノベーション創出エコシステムもまた、個々の参加者が自由な発想を持ち、自発的に行動することがその起点となる。地理的にも文化的にも非常に有利な立ち位置にある堺市が持つポテンシャルを活かし、イノベーティブな新産業を産み出す若者の登場を堺市は期待している。
(提供:NAKAMOZUイノベーションコア創出コンソーシアム、堺市)