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量子研など、核融合炉のプラズマを冷却する新技術を実証

2023年01月04日 06時06分更新

文● MIT Technology Review Japan

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量子科学技術研究開発機構(量子研)と核融合科学研究所の研究グループは、核融合炉内で高温となっているプラズマを効果的に深部まで冷却する技術を実証した。フランスで建設中の核融合実験炉イーター(ITER)では、高温のプラズマが不安定になって放出される「ディスラプション」と呼ぶ現象への対策が必要になっており、プラズマの不安定性の兆候を捉えて強制的に冷却する技術の研究が世界各国で進んでいる。

量子科学技術研究開発機構(量子研)と核融合科学研究所の研究グループは、核融合炉内で高温となっているプラズマを効果的に深部まで冷却する技術を実証した。フランスで建設中の核融合実験炉イーター(ITER)では、高温のプラズマが不安定になって放出される「ディスラプション」と呼ぶ現象への対策が必要になっており、プラズマの不安定性の兆候を捉えて強制的に冷却する技術の研究が世界各国で進んでいる。 ディスラプションが発生すると、高温のプラズマが装置に流入して損傷させ、実験が続行不可能になってしまう恐れがある。イーターはディスラプションを避けるように精密に設計してあるが、実験における試行錯誤の過程ではどうしてもディスラプションが発生してしまう可能性がある。 対策として世界各国が研究している方法が、ディスラプションを起こさせる不安定性の兆候を捉えた時点で、水素を氷点下260℃以下で凍結させて作った氷の粒を高温プラズマに投入するという方法だ。投入した氷はプラズマの熱で溶けて蒸発し、氷の周囲に温度が低く密度が高いプラズマの塊(プラズモイド)を形成する。このプラズモイドが高温のプラズマと混じり合うことで温度を低下させる仕組みだ。 だが、最近の実験で水素の氷を投入しただけでは高温のプラズマと混じり合う前にプラズモイドが排出されてしまい、高温のプラズマを深部まで冷却できないことが分かった。プラズモイドの密度が高温プラズマよりも高いため、混じり合う前に排出されてしまうのだ。 そこで研究グループは理論計算によって水素に微量のネオンを混合することで、氷が溶けて形成されるプラズモイドの圧力を下げることできると予測。ネオンは氷点下250℃程度で氷になり、プラズモイドの中で強い光を放つ。水素の氷にネオンを混合しておくことで、高温プラズマが氷を加熱するエネルギーの一部を光エネルギーとして放出できる。その結果、プラズモイドの圧力上昇を抑え、排出を避けられるとの考えだ。 研究グループは、核融合科学研究所の大型ヘリカル装置で以上の予測を検証。5%ほどのネオンを混合した水素の氷を投入したところ、予測通りプラズモイドの排出を抑えることができ、高温プラズマを深部まで冷却できた。 研究成果は12月15日、フィジカル・レビュー・レターズ(Physical Review Letters)誌にオンライン掲載された。

(笹田)

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