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私たちのバイクはどうなる? イタリアの「EICMA」で見た日本メーカーの最新電動バイクたち

2022年11月27日 15時00分更新

文● 岸本ヨシヒロ 編集●ASCII

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KAWASAKIの電動バイクはNinja系!

 さぁ、国産メーカーのラストはカワサキです!(スズキは電動車両の展示ナシ)。カワサキは2019年のEICMAを皮切りに、Ninja系の車体を流用した電動車両を公開、今年の鈴鹿8耐では電動だけではなくハイブリット車両のデモランと、ドイツ・ケルンのバイク見本市「インターモト」でもネイキッドタイプのEVを展示するなど、情報を少しづつ公開していました。

 今年のEICMAでは、3モデルを一気に発表、ひな壇ともいうべき一番目立つ場所に展示していました。またカワサキモータースの伊藤 浩社長も来場し、2023年にEV、2024年にハイブリッド車、そして水素エンジンの開発、さらに内燃機関の開発と生産も続けていくと発表しました。ちなみにカワサキモータースは2021年に川崎重工業から分社化しています。分社化のメリットは伊藤社長自身が語ったように、ビジネスの意思決定に時間がかかっていた大会社特有の問題を短時間で解決できることです。

 展示ブースでは新しく作成したカーボンニュートラルマークと、「GO WITH GREEN POWER」というキャッチーなスローガンとロゴを前面に立ててアピールしていました。カワサキのイメージカラーのグリーンと前述のカーボンニュートラルでの緑のイメージってぴったりですもんね。

 そういえば、カワサキのブースは天井を見るとグリーンのライトがありました。そのほかにも、そこかしこにグリーンのランプが仕込まれていて、ライト1つ取っても非常に細かいところまでブース設計がされていて感心します。メーカーが何を見せたいか、担当者と施工会社がどこまでこだわりを持っているか? 導線はどうか? メーカーごとの違いを見るのも面白いですね。デザインの国イタリアなので、日本の展示方法との違いを見るのも勉強になります。

スポーツタイプのEV
「Z EV」と「Ninja EV」

 カワサキはスクータータイプではなく、いわゆる中型・大型タイプの電動バイクです。日本メーカーでは初となる、スポーツタイプの市販電動バイクになる予定です。

カウルレスのネイキッド仕様の電動バイクは「Z EV」です

カウル付きのモデルが「Ninja EV」です

 最高速度45km/hの電動スクーターのAM免許より、1つ上のA1免許(125ccカテゴリーで最高出力11kWまで)になります。日本では原付2種クラス(小型2輪)に近く、海外のSUPER SOCOやTROMOXなど先行する電動バイク専業メーカーとの競合クラスです。2023年の中ごろに発売予定ということで、市販車に近いプロトタイプ車両でした。

 Z EVはデザインや基本構造は同じZ250系やZ400系をモチーフにしており、カウル付きのNinja EV はZ EVと共通のプラットホームを使用しますが、カウルなどのデザインはNinja250などをモチーフにしています。バッテリーBOXやモーターなどの取り付け位置や寸法がエンジンバイクと異なるので、フレーム構造や取付ステーの位置をモディファイしているような感じです。

 特にカウル付きのバージョン「Ninja EV」はNinja250や400を電動にしたような印象で、よく見るとマフラーがないといった違いがありますが、見た目はエンジン車両と違和感はありません。

 発表されたバッテリー容量はZ EVもNinjya EVも最大3.0kWh。2019年のEICMAで公開されたプロトタイプのものとは形状が異なるようです。公開された資料の動画では円筒形電池セルのリチウムバッテリーを使用しています。

 バッテリーパックは脱着可能で、2個搭載可能。外した状態でも取り付けたままでも充電できます。容量から100km以内の近距離を想定していると思われますが、独自で調達したバッテリーなのか同じバッテリーコンソーシアムを組む「Honda Mobile Powerpack e:」を搭載するのか今のところ不明です。量産モデルの電圧はまだ発表がありませんでした。

 ただ、プロトタイプが実装しているものはメーターを見ると100V付近になっているので、可能性としてはHonda Mobile Powerpack e: (定格50.26V)を2個直列して積むことは可能性としてはありますが、パック電圧の変更や形状変更など、メーカー間の調整が必要になるでしょう。また動画で見る限り、回生ブレーキのレバーやバックモードもあるのですが、市販車で実装されるかは未定です。

 プロトタイプモデルではトランスミッションは4速までありましたが、展示車両はシフトペダルがなくなっていました。他社のモデルになりますが、6速や3速程度の変速機付き電動バイクに乗ったことがあるのですが、3速からでもスタートできたりシフトアップ・ダウンのフィーリングが内燃機関に比べるとあまり良くない印象でした。

 いろいろ理由はあると思いますが、トランスミッションを採用しなかった代わりに、モーターのドライブ軸からカウンターギアを入れて減速比を変えているようです。ギアを1枚入れることにより、リアスプロケットの丁数が大きくなりすぎず既存のスプロケットサイズを使える利点があります。

 電動バイクに変速機を搭載する場合、超小型モーターで超高回転にする場合はメリットがあるのですが、高コストで技術がまだ追いついていないということと、トルクがあるモーターの場合、市販車の速度レンジをすべてカバーできる(要するにどの速度でも全閉から開けてもスムーズに加速する)ので、そもそも必要ないのです。

 ちなみに機構や加速感はAT(オートマ)とは異なり、変速ショックがないのでかなりシームレスなフィーリングです。信号があり、渋滞する都市を移動するのに適していています。日本では変速機がないことから該当クラスのAT免許で乗れるんです。

 製造はタイ、販売価格や地域は後日発表ですが、早く乗ってみたい1台ですね!

カッコ良さはハイブリッドでも変わらず
「Ninja HEV」

 ハイブリッド仕様車はモーターとエンジンは2気筒で400ccか650ccほど。積載するバッテリー容量によると思いますが、車両価格はEVよりも高くなりそうです。

 諸元は非公開でしたが、横から見るとかなりのロングホイールベースになっています。これはモーターやエンジン、バッテリー、インバーター、燃料タンクなど多くのパーツを積むので、ある意味しょうがないですね。

 クラッチレバーやシフトペダルはついていなかったですが、公開された動画を見ると左ハンドルについているセレクトボタンでAT/MTが選べ、ATかシフト操作を手元でできるようです。また、HEVかEVかを切り替えられるボタンもあり、モーターだけでも走行可能です。

 またモーターによるアシスト機能があり、右スイッチでboostボタンを押すとターボのように加速します。

 この動画(↓)はTEAM MIRAIの電動バイクで、2017年の韋駄天Zeroや2018年の韋駄天FXSも同じ機能があるのですが、加速の時に押すとウイリーするくらいフル加速するので楽しい機能です(笑)。

Ninja H2ベースの水素エンジンも展示されていた

 「Ninja H2」のエンジンをベースにした、水素エンジン単体の展示もありました。

 親会社の川崎重工業は水素エネルギーに関わりをもった事業展開をしていて、グループの総合力を結集して水素エンジンの実用化も目指しているとのことです。CGでの公開でしたが航続距離を延ばすためにリアシート左右のパニアケースを使用して水素タンクを搭載しています。

 個人的にはバッテリーもパニアケースに入れればツーリングモデルとして使えるのでは? と思いました。

 またカワサキは、CO2と水素を合成して作る合成燃料の「eフューエル」や動植物を原料とした燃料の「バイオフューエル」などで走る内燃機関を開発、EVだけではないカーボンニュートラルに多面的に取り組むとのことです。筆者自信も家庭から出る廃油で走るバイオフューエルのプロジェクトで、マン島でマシンを走らせたことがあります。

 選択肢が増えるのはいいことだと思いますし、技術革新であらたなモビリティが生まれるかもしれません。

 以上、EICMAに見る「僕たち私たちのモビリティの未来はどうなる?」国内メーカー篇でした。次回は世界を引っ張る海外勢を紹介しますので、ぜひご覧ください。

筆者紹介──岸本ヨシヒロ

 MFJ国際ライダー。龍谷大学卒業後、CM制作会社や大手町の人材派遣会社を経て、プロスタッフヘ入社。企画書が通り、日本初の電動バイクチームTema Prozzaを結成して明治時代から続く伝統のモーターサイクルレース「マン島TT」ヘチャレンジ。チームマネージメントをし初出場で5位完走させた。2012年、株式会社MIRAIを起業。

 TEAM MIRAIを結成してマン島TTやアメリカのパイクスピークヒルクライムレースに電動バイクを製作して世界のEVレースに参戦している。2017年パイクスピーク電動クラス優勝、2019年マン島TT3位。

 TT零13というバイクではEVは音が小さいということを逆手に取り、初音ミクとコラボ、独自の近接音で走らせて話題になった。

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