人材調達部署のアプリは大きな成功
もちろん失敗ばかりではない。人材調達の部署から持ちかけられたのは、「契約しているパートナー会社の情報管理をkintoneでできませんか?」という相談だ。他のアプリ開発の合間で案件を受けた根崎さんは、シンプルなkintoneの仕組みで対応できた。
まず人材調達部署からはパートナーに対して、登録フォームをメールで送信する。パートナー企業が登録フォームに自身の会社情報を入力すると、マイページのURLが付いたウェルカムメールが送信される。以降はそのマイページから自分で情報を管理。当初はパートナー分のkintoneアカウントを想定していたが、トヨクモのFormBridgeやkViewerを活用することで、kintoneアカウントは標準5アカウントでも余ってしまったという。
さて、他のアプリ開発の合間で作ったこのパートナー会社の情報管理システムだが、担当者に聞くと、実は圧倒的な工数削減の効果が得られているという。もともとは「会社概要調査票」というExcelファイルをメールに添付し、登録会社の情報を収集していたが、これを150社で実施していたため大きな工数を食っていた。しかし、新システムでは「更新してください」というメールを送ればよいため、60時間中54時間分の工数が削減されたという。
こうした成果の出た同じ人材調達部署からは、さらに現場からの人材調達依頼とパートナー会社からの人材情報のマッチングをシステム化できないか?という追加の相談が入った。もともと仲人役は人手でやっていたが、根崎さんは既存のパートナー会社の情報管理システムを改良。人手がほしい現場責任者から入力された募集情報を、仲人役の人材調達部署がパートナー企業に公開し、人材を提案したいパートナー企業は応募フォームで人材情報を登録し、マッチングメールが現場責任者に直接届くという仕組みを作った。
こちらも担当者に聞いたところ、工数として7割が削減。募集内容を確認し、提案を現場に展開し、回答をパートナーに連絡するだけで済むようになったという。「今までの属人的な作業からみんなで分担できるようになりました。こんな単純なものでも、成果が出るんだと作った本人も驚きでした。うれしかったです」と根崎さんは語る。
2035年のkintone hiveでまた会いましょう
kintoneアプリを次々作成し、活用を進めていた根崎さんだが、今年の春先に来たのは、なんと人材マッチングアプリを使わせてもらいたいというグループ会社からの依頼だ。「これってkintoneのパッケージ販売という可能性なのかな?kintoneおばちゃんの妄想は夢に変わってますます膨らんできました」(根崎さん)。
とはいえ、再雇用期間は残り数ヶ月ということで、根崎さんは襷をつなぐことに専念する。振り返れば、根崎さん一人だったkintoneアソシエイツは2年間で10人に増えた。「この人たちにkintoneとおばちゃんの夢をつなぐことが、kintoneおばちゃん冥利に尽きるなと考えています」(根崎さん)。
会社人生の最後の年、根崎さんはkintone hive tokyoの舞台でラストを飾る。「自分が定年を迎える日が来るなんて考えてもいないあなたへ。これから定年を迎え、再雇用で切ない思いを抱えるかもしれないあなたへ。年齢だけで、人を値踏みする、フィルターをかけたがる社会全体へ」ということで、根崎さんが贈った言葉は黒人の女性詩人であるマヤ・アンジェロの「If you don't like something, change it. If you can't change it, change yourself.(気に入らなければ文句言う前に、あなたが行動を起して変えてみなさい。変えられない時は絶望する前に、自分を変えてみなさい)」だ。
来春、退職する根崎さん。退職後もkintoneに関わっていたいという。「働きながら3人の子育てを経験したおばちゃんだからできる後方支援、悔いが残った養父母の介護を経験したおばちゃんだからこそできる後方支援。いま頑張っている現役世代への後方支援がきっとあるはずと思っています」と語る。
最後、根崎さんは「会社という居場所がなくなるのが不安で4年前は再雇用の道に乗ってしまった。今は居場所の1つや2つなくなっても自分は自分。捨てたものじゃないと考えられたのもkintoneのおかげ」と振り返る。「私の目標は13年後、77歳(喜寿)でkintone hiveに再エントリすることです。13年後の2035年、みなさん、きっと元気で。この場所でお会いしましょう」と語る根崎さん。旅はまだ始まったばかりだ。
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