業務を変えるkintoneユーザー事例 第164回
SE不在の不動産会社が現場主導のkintone導入を進めた話
三菱地所ハウスネットのkintone導入、前に転んで得た反省と知見
2022年11月01日 09時00分更新
kintone hive tokyo 2022も終盤となる6番手、「SE不在企業の挑戦! kintoneを通じてDXをより身近に」というタイトルで登壇したのは三菱地所ハウスネットの村元英明氏と泉佳奈氏だ。賃貸業務の負荷軽減のためにSEなしでkintoneに挑んだ同社がプロジェクトを通じて得た反省と知見とは?
内製開発前提ならうちは無理 候補から外れていたkintone
三菱地所グループの三菱地所ハウスネットは設立35周年の不動産会社で、不動産の売買仲介や賃貸管理を手がけている。今回登壇した村元氏は、同社の賃貸業務企画部で賃貸業務の効率化や収益向上を手がけ、同部のグループ長である泉氏はkintone導入プロジェクトのリーダーを務めている。村元氏はまずkintone導入の経緯から説明した。
昨年7月のkintone導入からさかのぼること約半年前。賃貸部門の担当役員から打診された「賃貸部門の業務負荷を5年間で20%以上削減する」という目標を、現業タスクを抱えた既存メンバーで推進する必要が出てきた。まず既存業務を棚卸しされ、削減するポイントを整理してみると、タスク数は570、対象工数は16万時間におよぶことがわかったという。それぞれのタスクでどのように業務負荷を削減できるか検討した結果、2021年には15の削減プロジェクトが発足。このうちワークフローとSFAにあたる部分をkintoneで担うことになったという。
同社にとってワークフローとSFAがなぜ大事か。村元氏は、「業務の棚卸しに出てきた当社の大きな課題として、紙と属人化であると判断しました。社内でしか回さない書類にハンコを押し、スキャンしてPDFを共有して他部署に回す。受け取った部署はそのPDFをまた印刷して確認していました。普通に考えて非常に効率が悪い」と指摘する。また、仕事も属人化しているので、担当者が休めば止まってしまうし、紙文化なので在宅勤務もできない状態だった。「やるべきタスク、期日管理が明確にならず、担当者はつねに何かに追われているという精神負担に陥っていた」と村元氏は振り返る。
こうした課題を解決すべく期待されたワークフローとSFAだが、実はkintoneは一度候補から外れていたという。内製開発前提だと考えていたため、SEのいない同社では導入できないと判断したのがその理由だ。しかし、他のワークフローやSFA製品を調べても、これだというものは見つけられなかった。「よいものは高い。安いものはかゆいところに手が届かない」というジレンマの中、検討した結果、再度kintoneに戻ってきたという。「一番の理由はコスト。内製化について課題感は残っていましたが、1ヶ月のテストを行ない、こんな感じならできるかもと背中が押されました」と村元氏は語る。
開発ベンダーにお願いしたはずだったデータ連携を自前で
「とりあえずやってみよう」からスタートした三菱地所ハウスネットのkintone導入。最初にチャレンジしたのは、賃貸物件の募集部隊が、申し込みを受けてから契約を完了するまでのタスクの見える化アプリだ。初めてということで、アプリ作成は富士フイルムビジネスイノベーションに依頼することにした。
さて、kintoneアプリを作るにあたって、最初にぶち当たったのは「ピンとこない問題」だ。「現場に『こういうアプリを作るので、要件定義を行ないます』と言っても、『そもそもkintoneってなに? 楽になるイメージが全然沸かない」という返事が戻ってくる。アプリが空箱なので、イメージがつかなかった」と村元氏は指摘する。業務のすべてをアプリに詰め込んだ結果、プロセス数30を超える超絶ボリュームのアプリ要件ができあがってしまった。「まずは小さいアプリを先に作って、使ってもらい、先にkintone慣れしてもらうべきだった」と村元氏は反省する。
続いてぶち当たったのは、「開発ベンダーとの要件認識の不一致」だ。「当社では基幹システムとの連携は最初からあるものだと思っていたが、開発ベンダーはその想定はしておらず、開発費に入っていませんでした。これは確認を漏らしていたので、完全に当社側の落ち度」と村元氏はまたもや反省の弁。
とはいえ、基幹システムとのデータ連携ができないと、すべてのレコードを手動で作る必要が出てきてしまう。「そんな状態だと、現場は絶対に使ってくれないと思いました」と村元氏。そこでデータ連携はなんとか内製し、リリースに間に合わせることにした。
具体的にはアプレッソの「DataSpider」とアールスリーインスティテュートの「Gusuku CUSTOMINE」を活用することで、データ連携を実現した。CUSTOMINEを使ってデータ連携を進めた泉氏は「CUSTOMINEはSEでなくてもアプリ同士の連携が実現できます。直感的に命令をつなげるだけで構築ができるので、システムにまったく詳しくなかった私でも、面白さを感じながら作ることができました」と使用感を語る。

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