現場DXを推進するインフラ版Figmaが登場。土木・建設業界向けコラボレーションツール「LinkedViewer」
強力な3Dモデル処理が実現したユーザー間での可視化・共有ツール
年間60兆円を超える国内生産額を誇る建設業界だが、人手不足の深刻化や円安による資材価格の高騰などにより、業務の効率化が急務となっている。しかしながら、重層的下請け構造や属人的手法へのこだわりなどにより業界のデジタル転換が遅れ、品質や安全性にも課題を生じている。
一方、国土交通省は建設業界における生産性や品質の向上を目指して、2023年度までに小規模を除くすべての公共事業におけるBIM/CIM (Building/ Construction Information Modeling, Management:建築・土木作業に必要な材料や部材の数量や仕様などの属性情報を付加可能な3次元モデル) の原則適用を決めた。DataLabs株式会社は、このような建設業界が直面している課題の解決に向け、3Dデータをユーザー間で可視化・共有するツール"LinkedViewer"、および3Dスキャナから得られる点群データから3次元モデルを自動生成するツール"Modely"の開発を行っている。
DataLabsの代表取締役社長 田尻 大介氏に同社の事業概要や開発を進めている製品の目的を伺った。
3Dモデルの本格導入が建設業界を変革する
建設業界における生産性向上は積年の課題となっていた。これを解決するために、各企業はICT化の推進などに取り組んできたが、業界に対する若手労働者の忌避傾向や中小企業における投資余力の小ささなどにより、その動きは遅々として進んでいないのが現状である。
このような問題に長年取り組んできた国土交通省は、2023年までに小規模を除くすべての公共事業に対して、3次元モデルの活用を原則義務付けた。また、新型コロナウィルス対策として非接触・リモート環境における施工業務の遂行のためにも、コミュニケーションの円滑化を実現する新たなツールの導入が求められている。
DataLabsは実空間の3次元データの収集から3次元モデルによる構造物・空間データの構築、バーチャル空間内のシミュレーションやその利活用に向けたコンサルティングまで、3次元データを用いた業務の効率化サービスを一気通貫で提供するビジネスを展開している。その中で同社は、3次元データの利活用に必要な導入・習得にかかるコストの高さなど、多くの課題あることを指摘している。
「2023年度からはBIM/CIMの原則適用という大きな流れもあります。一方でまだまだ専用のソフトを導入できないとか、そういったソフトを扱える人材がいないとか、建設業の9割が中小企業で構成されていて、なかなか初期投資ができないということがボトルネックで3次元データ化への対応が遅れているという現状課題がある。3次元データ対応が今後の事業存続にも関わるような大きなパラダイムシフトになっていくのではないかと思っている」(田尻氏)
3Dデータの活用が制度的な必須要件となるのと並行して、建設現場の点群データを作成するための3Dスキャナーは、徐々に価格が下がってきており、普及が進んできている。そこでDataLabsは点群データから3Dモデルを自動生成するツール「Modely」と、点群データや3Dモデルを異なる組織間でも共有できるクラウド型コミュニケーションツール「LinkedViewer」を開発した。
「3Dモデルの利用は国交省からも要綱が出るなど注目されているが、モデル化が目的なのではない。モデルを使って検査をするとか合意形成を図るなどの具体的な業務への適用を進めることが大事。我々は具体的な業務をその知識がない方でも簡単に実施できるツールを低価格で提供できるよう開発を行った」(田尻氏)