ゲーム以外に写真・動画編集でも性能が期待できる新たなGPU
インテルGPU「Arc A380」搭載PCでしっかりゲームプレイできる? 15万円台のコンパクトデスクトップ「G-Tune PL-B-A380」を試す!
GPU第3の選択肢、Intel Arcとは?ゲームプレイだけでなく写真・動画編集にも期待が持てる新GPU
パソコンで画面表示を担当するハードウェアをGPUと呼び、どのパソコンにも必ずGPUは搭載されている。近年、パソコン向けGPUを開発製造する企業といえば、NVIDIAとAMDが二大巨頭とされ、とくにデスクトップパソコン向けのビデオカードでは「GeForceシリーズ」か「Radeonシリーズ」の2択という状況が20年以上続いてきた。
しかし、パソコン向けのGPUを開発しているのは、NVIDIAとAMDだけではない。PCゲームプラットフォーム「Steam」が公開しているユーザーハードウェア調査によると、GPUのシェアはNVIDIAとAMDに続いてインテルが大きく獲得しているとの調査報告が出ている。
このインテル製GPUの正体は、CPUに内蔵されたGPUだ。CPU内蔵GPUは通称「iGPU」とも呼ばれ(一方で外付けGPUを「dGPU」と呼ぶ)、ノートパソコンやコストを抑えたいデスクトップパソコンで広く用いられている。インテルは1990年代後半よりGPU分野へと進出し、以降「オンボードグラフィックス」と呼ばれたチップセット内蔵GPU、そして「Core iシリーズ」のリリースから現在に至るまで、iGPU搭載CPUをリリースしてきている。インテルは長年継続してGPUを開発し続けている老舗企業でもあるのだ。
ただ、これまで インテルCPUのiGPUというと、どうしても“基本性能はしっかりあるけど、ゲーム性能はあまり期待しないでね”というイメージが拭えなかった。そんな状況が変わり始めたのは、従来のiGPUから大幅に性能強化したiGPU「インテル Iris Xe グラフィックス」の登場からだ。Iris Xe搭載のノートパソコンは、これまでプレイすることがほとんど無理だったゲームが遊べるとして話題にもなった。
こうしてGPU分野へ本腰を入れたインテルが満を持してリリースするGPUが、Intel Arcというわけだ。第1世代のArc Aシリーズ(コードネーム「Alchemist」)は、Iris Xeのグラフィックス技術をベースに、AI機能「XMX」やレイトレーシング機能など最新ゲームグラフィックスに不可欠な要素を統合した「Xe HPGアーキテクチャ」を採用するGPUだ。
「DirectX 12 Ultimate」や「Vulkan」といった最新グラフィックスAPIに最適化され、「DirectX Raytracing(DXR)」や「Vulkan RT」によるレイトレーシング描画にも対応。AI機能XMXを用いたアップスケーラー「XeSS」を備えるといった特徴を持つ。
またArc Aシリーズは動画エンコード機能にも優れていて、高効率動画コーデック「AV1」のハードウェアエンコードにいちはやく対応。Arc Aシリーズに対応するアプリケーションが揃えば動画配信などでも活躍するはずだ。
Intel Arc 380 | |
---|---|
型番 | A380 |
マイクロアーキテクチャ | Xe HPG |
製造プロセス | TSMC N6 |
Xe-coreユニット | 8基 |
レイトレーシングユニット | 8基 |
XMXエンジン | 128基 |
Xeベクトルエンジン | 128基 |
動作クロック | 2000MHz |
ビデオメモリー | 6GB GDDR6 |
メモリーバス幅 | 96bit |
メモリー帯域 | 186GB/s |
TBP | 75W |
実際、G-Tune PL-B-A380に搭載されているMSI製のArc A380ビデオカードは補助電源無しのタイプだった。単体販売はされていないようだが、もし単体販売されれば最近貴重になりつつある補助電源無しビデオカードの有力選択肢になりそうなモデルだ。
近々、上位モデル「Intel Arc A770」の登場も予定され、ラインナップの拡充がはじまるArc Aシリーズ。NVIDIA、AMDに続く第3のGPU選択肢の登場がビデオカード市場にどのような影響を与えるのか、注目が集まっている。
さて、Intel Arcに対して注目しているのは、アスキーでも同様。そこで、インテルに詳しいジサトライッペイにも、Intel ArcについてどんなGPUかやどのような点に期待しているかなどを聞いてみた。
──インテル ArkってどんなGPU?
ジサトライッペイ:「Intel Arc Aシリーズ」(以下、Arc Aシリーズ・グラフィックス)は、「インテル Xe」としてスタートした同社の独自GPUアーキテクチャからゲーミング向けに特化した「Xe HPG」が生まれ、それを製品化したdGPUになります。
──その中でIntel Arc A380はどういう立ち位置?
ジサトライッペイ:Intel Arcにはノートパソコン向けとデスクトップパソコン向けがあり、前者も後者もインテルCoreプロセッサーのように性能を示すグレードが3つ(Arc A300番台、Arc A500番台、Arc A700番台)存在します。Arc A380はエントリークラスという位置付けで、その性能はゲームタイトルにもよりますが、ざっくりいうとNVIDIAのGeForce GTX 1650くらいになります。
──インテル Arkの特徴を簡単にいうと?
エントリーとはいえ「AV1」のハードウェアデコーダーを備えていたり、AI処理専用ユニットを搭載していたりと、イマドキGPUに求められる将来的に超有益になる機能がてんこ盛りです。つまり、Arc A380はゲームのみならず、画像・動画編集でも有益なGPUということになります。もちろん、DirectX 12 Ultimateもフルサポート。今後、ゲームタイトルの最適化も進んでいけば、今よりも1つ上のセグメントの競合GPUと戦えるかもしれません。そんな期待を胸に、僕は単体ビデオカードを買いました。
以上のように、ジサトライッペイも期待しているIntel Arc。それでは早速、その実力をみていこう。