2次キャシュを倍増
最後がロード/ストアーユニットである。基本的にはこちらもZen 3のままから変わっていないが、Load Queueが72 Entryから88 Entryに強化されているのが違いとなる。また、L2 Data TLBが2K Entryから3K Entryに強化されている。
“Fewer Data cache port conflicts”に関しては詳細な説明がなかったが、よりポート同士の競合が少なくなるような工夫が施された模様だ。
パイプライン外部で言えば、L2が512KBから1MBに増量された。単に増量されただけでなく、同時に多くのoutstanding miss(Cache Missが発生し、L2ならL3に、L3ならメモリーにそれぞれCache Fillを要求する動作のこと:これが同時に多発した場合、Cache Fillが解決するまでキャッシュそのもののアクセスが止まることになる)を扱えるようになったとしている。
ちなみにこの代償として
L2 Latency 12サイクル→14サイクル
L3 Latency 46サイクル→50サイクル
と微妙にCache Accessのレイテンシーが増えてしまっているが、そもそもL2を倍増した時点である程度レイテンシーが増えるのは避けられないわけで、このあたりはバーターということになるだろう。
以上簡単にZen 4の内部構造の違いを紹介してきたが、まとめれば「Zen 3の4 x86命令/サイクルのコアの実行効率を、さらに高めた」ということになる。5 x86命令/サイクルはZen 5以降までお預けで、それ以前にまだ4 x86命令/サイクルでやれることがあり、それを全部実装したという感じになっている。
実際IPCの比較で言えば平均して13%程の向上とされるが、そのIPCの増分の内訳が下の画像だ。最大のものはフロントエンドで、ついでロード/ストアー、Branch Predictrionときて、Execution Unitの改良やL2キャッシュの増量などは一応効果がないわけではないが、フロントエンドに比べるとその効果はわずかである。それだけフロントエンド周りの改良が大きかった、というわけだ。
ちなみにAVX-512周りの性能比較が下の画像だ。ONNX Runtime Performanceで1.3倍~2.5倍とされる。
もちろんこれは大きな性能向上ではあるのだが、そもそも元のRyzen 5000シリーズでの性能が低い事を考えると、確かに性能は向上したとは言えどの程度使えるのか、というのは微妙な線だ。まぁそのあたりが判っているから、Zen 5ではXDNAとしてAI Engineを統合することにしたのであろう。
Zen 4世代ではもう1つ大きな違いとして、GPUコアの統合が挙げられる。これはCCDではなくIODの方に統合される形である。
その内部だが2CU、つまり1 WGP構成である。要するにRDNA 2の最小構成である。またディスクリートのRDNA 2製品と異なり、以下のようになっている。
- インフィニティ・キャッシュは搭載されない
- レイトレーシング・エンジンも搭載されない
本当にデスクトップの表示には十分だが、これでゲームをやるのは厳しい程度と考えておけば良いだろう。ということで駆け足であるが、まずはZen 4の内部構造をお届けした。まだRyzen 7000シリーズでは説明すべきことがあるのだが、それは別の記事で。
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