コロナ禍がリモートワークを進め、変革を促した
シスコは、東京2020において、ネットワーク機器のオフィシャルパートナーとして、大会をサポート。オリンピック史上最多拠点となった大会ネットワークインフラの構築、運用を支援した。ウェストプレジデントも、当時は日本法人社長として深く関わったが、コロナ禍による大会の延期によって、日本法人社長としての任期中には、東京2020の開催は迎えられなかった。
「振り返れば、東京2020がまだ準備段階だったときには、政府がリモートワークを推奨し、まずは月1回の実施を促すという状況だった。だが、それでもリモートワークに取り組む企業が少ないのが実態だった。なかなかリモートワークが浸透しなかた背景には、日本の文化や、働き方に対する基本的な考え方、固定化された信念のようなものがあったのではないだろうか」と指摘する。
しかし、コロナ禍によって、リモートワークが一気に浸透し、デジタル化の推進が大手企業だけでなく、中堅中小企業にも広がった。シスコが実施した「ハイブリッドワークに関するグローバル調査 2022」では、ハイブリッドワークによって生産性と仕事の質の向上を実感したと回答した日本企業の社員は40%に達しているなど、リモートを活用した働き方がメリットを生んでいることも示されている。
「コロナ禍になり、日本は大きく変化した。その変化は、日本でのビジネスに携わってきた経験者としても、とても誇らしく思う」と前置きし、「数年前の日本は、デジタル化という言葉は先行しても、実態が伴っていなかった。だが、いまでは、自分たちのビジネスを成功させるためには、テクノロジーを活用することが不可欠であるという認識が高まり、ビジネスの成功の根幹にはテクノロジーがあることが浸透している」とする。
5Gは日本が世界に先行できるテクノロジー分野
そして、ウェストプレジデントには、日本が先行すると期待しているテクノロジー領域があるという。それが5Gだ。なかでも、プライベート5Gは、日本が先行する分野として注目している。
ウェストプレジデントは、「プライベート5Gは、日本での成果をもとに、他の国に展開したいと考えている。工場などの製造分野、港湾などの物流分野のほか、これまではWi-Fiを利用していた環境でも、よりセキュアで、高速なプライベート5Gを使いたいといったニーズは増えていくだろう。日本か先行しているロボティクスやIoTと、プライベート5Gを組み合わせることで、次世代の製造現場の姿が、日本の企業から生まれてくると確信している。日本が、全世界の製造現場のガイド役を示すことになる」と期待を寄せる。
さらに、「サステナビリティの取り組みにはテクノロジーが必要だが、ここにおいても、日本が世界的なリーダーシップを発揮できる。政府や企業が、環境に配慮した取り組みをすでにスタートしており、ネットゼロに貢献するための製品やサービスの提供もはじまっている。環境保護への取り組みは、日本の政府と企業が足並みを揃えたものになっている」と評価する。
そして、「シスコは、2040 年までにグローバルスコープ 1、2、3 のすべてにおいて、CO2排出量のネットゼロを達成する目標を掲げ、それに向けた取り組みを開始している。サプライヤーとの連携により、部品や塗料なども環境に配慮したものを調達し、エネルギー効率についても追求している。日本の企業や政府のサステナビリティの取り組みに対しても、シスコは貢献できる」と語る。
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