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“新たな冷戦”の最前線で、国家背景のサイバー攻撃グループとの戦いに本腰

台湾TeamT5、脅威インテリジェンスソリューションで日本に本格参入

2022年09月15日 10時30分更新

文● 谷崎朋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 台湾を代表するセキュリティ企業、TeamT5(チームティーファイブ)は2022年9月14日、日本市場における事業拡大に向けてシリーズA資金調達を完了したと発表した。今後は東京に設立した日本法人を拠点に、製品販売や技術サポートにとどまらない、現地に立脚したサイバー脅威の調査/研究を実施。国家レベルの高度なサイバー脅威への対抗支援を国内のパートナー企業とともに展開する予定だという。

記者発表会に出席したTeamT5創業者およびCEOの蔡松廷(ツァイ・ソンティン)氏

TeamT5の日本での事業戦略

サイバー攻撃が絡む“新たな冷戦時代”に突入、台湾と日本は「格好の的」

 「中米貿易戦争やロシア・ウクライナ戦争の勃発後、国際情勢はさらに緊迫の度合いを深め、対立や競争が激化。サイバー攻撃も交えた新たな冷戦時代に突入した」。TeamT5、創立者およびCEOの蔡松廷(ツァイ・ソンティン)氏はそう述べたうえで、地理的に見て最前線に位置する台湾と日本は国家を背後に活動するサイバー攻撃グループの格好の的だと警告する。

 特に台湾は、20年も前から中国を中心としたAPTグループの攻撃に晒され続けており、官公庁から民間企業まで業界問わず、システムの侵害や機密文書の漏えい、重要インフラの破壊および機能不全など多数のインシデントを経験してきたという。TeamT5では年間100件以上、同国に起因するサイバーインシデントを観測。これに各業界と協力しながら対処してきたが、現在に至るまで同国の攻撃が止んだことはないとツァイ氏は明かす。

 同社は10年以上に渡り、アジア太平洋地域で活動する中国や北朝鮮、韓国やロシア、中東を含む100以上の攻撃グループを追跡調査してきた。それぞれの攻撃手法や手口から背後の協力者まで、深く踏み込んだ分析と調査報告ができることが特徴だ。

 さらにここで得られた知見は、APTグループなどの最新動向を監視・分析し、より効果的な対抗策を提供するインテリジェンスプラットフォーム「ThreatVision」と、インテリジェンスとAIを組み合わせた最先端の脅威ハンティングを通じて侵入の痕跡やバックドアなどを速やかに検出、エンドポイントを保護する「ThreatSonar」で活用している。「ThreatSonarは台湾の情報セキュリティ企業の9割以上が導入しており、ThreatVisionと組み合わせることでより高い防御を実現する」(ツァイ氏)。

豊富な導入実績を誇る「ThreatVision」と「ThreatSonar」

 こうした調査/研究の過程で、追跡調査する攻撃グループの多くが、台湾と同時に日本も標的にしていることが判明した。たとえば、中国軍の関与が濃厚なAPTグループ「Huapi」は、当初は台湾を主要なターゲットとして攻撃していたが、近年は日本の政府機関や企業も攻撃対象に加えているとツァイ氏は語る。「デジタル兵器を開発する能力が高く、標的が普段使っているソフトウェアの脆弱性を見つけては、IoTなどを侵害して踏み台にしながら攻撃するのが得意。10年以上、活発に活動を続けている」(ツァイ氏)

アジア太平洋地域で暗躍するAPTグループの一部

東京に拠点を設置、日本におけるサイバー脅威との戦いに本腰

 以前より、調査中に日本の政府機関や民間企業への被害を確認した際には、即時報告して解決に協力してきた同社。今後は東京に拠点を置き、「共同防衛を目的とした情報交換と経験の共有」「マルウェア分析や攻撃グループの調査/追跡における日本の研究機関や研究者との共同研究」「国家レベルの攻撃グループに対抗するためのテクノロジーやソリューションの開発/提供」を目標に、日本におけるサイバー脅威との戦いに本腰を入れる。

 「国家レベルの高度なサイバー脅威に対抗するには、敵を知り、攻撃者のツールや痕跡を暴く脅威ハンティングソリューションを導入し、攻撃を常時監視・分析して対策を提案するプロと連携することが重要。TeamT5はこの3つをすべて提供できる」(ツァイ氏)

 事業戦略について、まずは早急にチームを立ち上げて主力製品の販売・営業に着手。提携パートナーを増やして新規顧客を開拓するほか、日本関連の調査結果をセミナーやカンファレンスなどで積極的に発信していく。いずれは日本でもスレットアナリストを採用し、現地に根付いた研究体制を構築。2年以内に大手企業を中心として50件以上の案件達成を目指す。

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