大口径ドライバー搭載で深みのある低音
Pixel Buds Proは直径11mmと大型のドライバーを搭載している。ここから想像できる通り音調はやや低域よりだった。コンシューマー向けイヤホンにありがちな、ドンシャリ的な誇張感が少ない、予想よりも良質なサウンドである。大口径ドライバーのおかげで超低域が深く沈む感じがあり、全体にたっぷりとした低音の量感が楽しめる。高音は弦楽器などの鳴りが十分シャープに聴こえるが刺激的な音が少なく不快感は少ない。長時間聴いても疲れにくい音だと思う。
ただ中音域にはもう少し明瞭感が欲しいと思う。これは低音の量が多く、中域に多少被っているためだろう。解像感はやや低めだが、ボーカル自体はリアルで女性ボーカルのささやき声も生々しく楽しめる。
音場の広さは標準的で立体感が特に高いわけではない。グーグルが空間オーディオ再生をサポートすればまた違った印象を持つかもしれない。
音楽をじっくり聴きこむよりは、音楽に寄り添うシーンにいい
スワイプで音量の調整ができるのは面白いが、慣れないと急に音量が上がることがあるので注意は必要で、聴きたい音量で止めるのが難しい。これは表面の滑らかさの問題でもある。次機種では改良してほしい。
Pixel Buds Proには「ボリュームEQ」という機能も新たに搭載されている。ボリュームの増減に合わせて適切なサウンドに調整してくれる機能だ。
大昔のオーディオ製品にはラウドネスというスイッチが付いていた。人の耳は小さい音量で聴くと低音や高音が聞こえにくくなるので、それを補正するために低音を増強し、迫力を出す機能である。ボリュームEQも似たような仕組みを同様に取り入れているのだろう。
試してもiPhoneでは分かりにくいのではあるが、Pixel Buds Proのサウンドが通常音量で聴くときに、さほどドンシャリに聞こえないのはこの機能の裏返しのようには思う。また小音量で聴くための機能がついていると言うことは、BGM的に聴くことを想定していると思える。これがPixel Buds Proのサウンドの個性や装着感などに反映されていると考えると興味深い。
Bluetoothのバージョンは5.0なので、LE Audioには対応していない。Pixel 6aにAndroid 13を入れ、開発者モードにするとLE Audioの設定項目が(不能状態で)現れる。グーグルのLE Audioへの取り組みは、まだわからない点が多い。
Pixel Buds ProはANCの効きの良さもあり、刺激的な音を避けて長時間音楽を静かに聴きたいユーザーに向いている。好きな音楽を聴き込むというよりは、スマートデバイスやPCと合わせて長時間作業する際のBGM再生などに向いているイヤホンに感じた。低音量での再生に向いたボリュームEQ機能があるのもそれを想定したためだろう。また、装着時にイヤホンの飛び出しが少ないので寝ながら聴くときにも良いだろう。
Pixel Buds Proは音楽をがっつりと聴き込むというよりは、そうした生活の一部に溶け込むイヤホンだと思う。
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