佐々木喜洋のポータブルオーディオトレンド 第123回
独自開発の空間オーディオ機能やLE Audio対応が果たされる?
Pixel Buds Proが登場、Android 13のオーディオ機能はどう変わる?
2022年05月16日 13時00分更新
Google I/O 2022で、新しい完全ワイヤレスイヤホン「Pixel Buds Pro」が発表された。国内向けの直販価格は2万3800円。7月21日に予約を開始し、7月28日に発売する。11mmのダイナミックドライバーを採用し、ノイズキャンセリング機能も搭載される。
このPixel Buds Proの注目機能は空間オーディオに対応することだ。2022年後半に対応するとされているが、これはなにを意味するのだろうか?
グーグル独自の3Dオーディオ技術に対応する?
現在行われているAndroid13のベータテストにおけるリーク情報からはGoogleがアップルに対抗した空間オーディオ機能の実装を独自に行おうとしていることがうかがえる。
例えばPixel 6のコードから空間オーディオ効果のオン・オフの記述や空間オーディオに関する変数定義が見つかっている。またlibspatialaudio.soという共有ライブラリがあるようだ。
Spatial audio support is coming to the Pixel 6. Beta 1 ships with a spatializer effect. pic.twitter.com/ZIuNcDvu2N
— Mishaal Rahman (@MishaalRahman) April 26, 2022
ある開発者はAndroid13のAudio HAL(Hardware Abstrucion Layer)にレイテンシーコントロールのAPIが追加されていることを見つけた。LOWモードを選択することで100ms以下のレイテンシーを保証することができるというものだ。これはヘッドトラッキング時に必要になる機能であるという。
また、グーグルは昨年3DオーディオのスタートアップであるDysonicsを買収している。この会社の持つ特許にはバイノーラルサウンドのトラッキングなどが含まれている。こうしたことからPixel Buds Proも「AirPods Pro」同様にヘッドトラッキング機能があるのではないかと見られている。
興味深いことにグーグルは、フランスのBluetooth関連のスタートアップであるTempowも買収している。完全ワイヤレスイヤホンの左右同時通信プロトコルを研究している企業だ。グーグルはアップルに比べてオーディオ分野への関心は強くないが、知的財産戦略も含めて着実に追い上げているようにも感じられる。
さらにAndroid 13ではBluetoothの「LE Audio」で必須となるLC3コーデックのエンコード機能も実装されているようだ。Android 13ではLE Audioの正式対応を果たすのではないだろうか?
Android 13 may be the first release to add full support for Bluetooth LE Audio.
— Mishaal Rahman (@MishaalRahman) December 21, 2021
Google recently merged an LC3 (the LE Audio codec) encoder and is adding the codec as an option in settings. It'll be the highest priority A2DP source codec.
Commits: https://t.co/tXicKLMZbqpic.twitter.com/ZHcd22grEs
今回書いた情報はSNSなどでの推測であってグーグルが正式発表をしたわけではない。しかし、空間オーディオに加えてLE Audioまでサポートすることが予想されるのであれば、Android 13のオーディオ機能はかなり進化すると言えそうだ。正式リリースを注目しつつ待ちたい。

この連載の記事
- 第129回 買収、倒産など、統廃合が進むオーディオ業界、あのブランドも……
- 第128回 意外なところから見えた? 完全ワイヤレスイヤホンの2ウェイ化に対して一致する視点
- 第127回 BluetoothのLE Audioからブロードキャスト機能が独立、公共の場で活躍しそうな「Auracast」に
- 第126回 あと5年も経たずに、BA型がイヤホン向けドライバーの主役でなくなる? MEMSスピーカー強気の予想
- 第125回 ハイエンドポータブル最新動向、final、dCS、DITAなど注目機種が登場
- 第124回 Knowlesが提唱する新しいターゲットカーブが登場、イヤホン音質の底上げを進めるか
- 第122回 iPodがついに終焉、ウォークマンとの対比でそのインパクトを思い出す
- 第121回 Sonosが独自のボイスアシスタント機能を開発中? 米国で報道
- 第120回 ヘッドフォン祭 miniで見つけた気になる新製品(佐々木喜洋)
- 第119回 開放型、骨伝導、再認識されつつある外の音が聞けるイヤホン
- この連載の一覧へ