サブスクリプションが人気だ。音楽・動画から自動車、化粧品までこれまでは想像もしなかったものがサブスクで提供されるようになった。2007年にいち早くこのビジネスモデルに目をつけ、Zuoraを創業した現Zuora CEOのティエン・ツォ(Tien Tzuo)氏と日本法人社長を務める桑野順一郎氏に、サブスクビジネスの現状、成功のポイントなどについて話を聞いた。
コロナ禍でサブスクビジネスはどうなったのか?
――新型コロナ、米国などのインフレ、為替相場など経済環境が大きく変化しています。サブスクリプションビジネスにはどのような影響を与えていますか?
ツォ氏:サブスクリプション(以下、サブスク)ベースのビジネスモデルの強みは、既存の顧客ベースがあり、その顧客が更新してくれることだ。これにより、毎四半期安定した売り上げが計上できる点にある。そのため、経済状況の変動が激しい中でも、サブスクベースのビジネスモデルは売り上げという点では安定している。サブスクビジネスの回復力や耐性があることが証明されたといえる。
たとえば2020年、運輸と旅行業界は大きな多撃を受けた。航空業界は90%程度利用が落ち込み、宿泊業も大きなマイナスを経験した。それでも、われわれの顧客の運輸、旅行業界の顧客は安定していた。
サブスクが人気になったのは家で過ごす時間が増えたからで、コロナが落ち着いたらサブスクをキャンセルするという予想もあった。ところが蓋を開けてみると、解約率は増えなかった。サブスクリプションでサービスを提供する企業は、コロナ禍でも顧客を維持できたと言える。
――コロナ禍でもサブスク顧客が離れなかった理由や要因はどこにあるのでしょうか? 傾向があれば教えてください。
ツォ氏:大きな理由は、既存顧客に契約更新してもらう状況を保てていること。サービスに満足している顧客はそう簡単に解約しない。旅行業界の例では、空港セキュリティサービスのCLEARがある。航空機の利用が90%減少しても、CLEARの顧客は旅行が戻ってくると考えて解約しなかった。
もちろん、企業が独自のテクニックをとっているところもある。たとえばサブスクを3ヶ月停止して、再度アクティベーションできるようにしたところもある。あるレストラン予約サービスは、レストランが閉鎖されている間、製品をテイクアウトとデリバリーに変えた。同じ価格で異なる製品を用意し、継続して使ってもらうことができた。