インターネットイニシアティブ(IIJ)は2022年8月30日、自社開発したSASEサービス「IIJセキュアアクセスサービス」を2022年9月1日から提供開始すると発表した。「安全なリモートワーク環境の実現に不可欠なSASEサービスを、セキュアに、シンプルに、低価格で提供するサービス」と位置づけており、今後5年間で50万アカウントの販売を目指す。
記者発表会に出席したIIJ セキュリティ本部 副本部長の山口将則氏は「ゼロトラストの考え方による新たなセキュリティを担うのがSASE」だと述べたうえで、IIJセキュアアクセスサービスは「国内ユーザー企業がSASEに求める機能をひとつのパッケージサービスで提供。中堅中小企業を対象に、多機能で複雑なSASEサービスを、シンプルでわかりやすい価格体系で、低価格で提供する」と説明する。
IIJセキュアアクセスサービスでは、ユーザー企業側のカスタマイズが不要な機能群を多数ラインアップしている。この中から必要な機能だけを選び、それらを組み合わせて利用することができる。
セキュリティ機能としては、Webフィルタリングやアンチウイルス、アクセス制御などの「Webゲートウェイ」、簡易的なアクセス制御の「ファイアウォール タイプ1」、マルウェア対策などのUTM機能である「ファイアウォール タイプ2」を提供する。またネットワーク機能では、Webゲートウェイやファイアウォールを利用できるリモートアクセスの「リモートコネクト、「IIJプライベートバックボーンサービス」と接続して社内ネットワークや閉域接続したクラウドサービスへのアクセスを可能にする「プライベートコネクト」を用意している。
ユーザーは専用エージェントを端末にインストールするだけで、共通のセキュリティポリシーが適用され、社内/社外を問わず許可されたサービス/アプリケーションに対し、セキュアに接続できるようになる。
「ノートPCからIIJセキュアアクセスサービスにアクセスして、そこからWebアクセスを行うプロキシ通信のみの簡単な利用のほか、ファイアウォールを利用して非プロキシ通信に対応した使い方もできる。またIIJプライベートバックボーンサービスとの連携により、本社や拠点内のネットワークへの接続、データセンターとも接続でき、外出先のノートPCから社内のデータを取得したり、書き換えたりすることも可能だ。さらには社内の固定PCからも、セキュアな環境でのWebアクセスができる」(山口氏)
なお同サービスは、東日本/西日本のデータセンターによる冗長構成を標準で提供し、今後はログ機能も標準機能として提供する予定だ。同サービスと「IIJ C-SOC(セキュリティオペレーションセンター)サービス」を連携させて、収集したログを分析することでセキュリティインシデントの発見や対策を支援することもできるという。
「単体のセキュリティログでは検知できないセキュリティインシデントの検出や、重大度レベルの高いインシデントについては、セキュリティアナリストが確認して通知するなど、日々発生するセキュリティイベントの確認や分析、対策検討などにおいて、現場の負担を軽減することができる」(山口氏)
SASEを自社開発した狙い
IIJはこれまで他社製品をベースとしたSASEを提供していたが、今回のサービスは新たに独自開発を行ったのが特徴となる。
山口氏は、海外企業が開発/運用するSASEが多い一方で、日本企業では「情報資産を国内に置きたい」「国内インフラを活用してオペレーションを行いたい」というニーズも高まっており、そうしたユーザーに今回のサービスを提供したいと語る。さらに、アンチウイルスやEDR、端末管理といったIIJが提供する他のセキュリティ機能との親和性、IIJ C-SOCによるセキュリティ運用の統合といったメリットも強調した。
「高度化する脅威に対抗するために、専門家の知見をフル活用するほか、10年以上に渡って提供してきた『IIJセキュアWebゲートウェイ』で培ってきた経験も生かすことができる。さらに、運用効率をあげるためにすべての機能を集中管理できるIIJ独自のUIを提供する。社会情勢やトレンド変化に強い柔軟性と適応力を持ったサービスを内製で提供できるのが特徴であり、ここに自社開発した狙いがある」(山口氏)
また、今後は、海外にも設備を展開し、海外出張時や海外拠点でも利用を可能とし、日本の企業の海外出張先や海外拠点への拡大にも対応していくという。
IIJセキュアアクセスサービスは最少50ユーザーから利用でき、Webゲートウェイ、ファイアウォール タイプ1、リモートコネクトを利用した際の1ユーザーあたりの料金は月額990円。ユーザー単位での課金体系となるため、1人のユーザーが社内利用と社外利用で複数のデバイスを使用しても追加料金は発生しない。そのほか初期費用や専用IPアドレスオプションなどの費用が必要になる。専用エージェントはまずWindowsに対応し、2022年度中にはiOSおよびAndroidにも対応するとしている。