反省すべき点を数え上げればきりがない
SoftBank Vision Fundに対しても、「反省すべき点は数え上げればきりがない」と語り、次のように話した。
「SoftBank Vision Fund 1のときは、UberやDiDi、WeWorkなど、ひとつの案件で1兆円の投資を行うといった大振りをしていた。なかには、私の思い入れで大振りしたものがあり、失敗した案件も多く、『大振りで三振』ということもあった。SoftBank Vision Fund 2では、それを反省し、確実にヒットを出したいと考え、より組織的に、より細切れに投資を行い、1件あたりの投資金額の単価を小さくした。大振りでホームランを狙うのではなく、一塁打、二塁打のヒットを確実に出したいということで、『当てていこう』という投資になった。また、私個人の思い入れに頼らないように、地域別、テーマ別にわけて、専門分野の担当を設け、組織で対応していくことにし、これならば安心であるという自信をもって投資を行った」
だが、SoftBank Vision Fund 2でも反省材料が生まれたという。
「SoftBank Vision Fund 2では、すぐに約5兆円の利益を出した。行けると思って有頂天になった」と振り返り、「小さく振ったが、有頂天になって、たくさん打席に立ち、たくさん振りまくった。結果として、大きな評価損を出してしまった。市場環境の悪化などは言い訳にしかならない。反省すべき点は、もっとしっかりと厳選した投資を行っていれば、これだけの痛手は負わなかったということである。コロナ禍において、上場企業のオンライン関連銘柄の株価があがり、それに伴い、ユニコーン企業の未上場株が割高になっていた。私は、このときに、未上場のユニコーンは価格が高くても、正当化できると思った。その結果、高い値札のものを揃えてしまった。投資は高いものを買うと下がる確率が高まる。いまとなって振り返ると、自分たちの評価のなかでバブル状態があったと反省している。すべて私の指揮官としての責任である。私は、すべての案件に投資委員会の中心的立場で意思決定に参加している。ほかのだれの責任でもない」と述べた。
反省をもとに新たな戦いに挑むのか
現在、SoftBank Vision Fundでは、AI関連企業を中心に、473社に投資をしている。特にSoftBank Vision Fund 2では、276社に対して、9カ月で5兆円近い投資を行ってきた経緯がある。
だが、孫会長兼社長は、「SoftBank Vision Fund 2は、積極果敢に投資を行った結果、大幅な評価損を計上することになった。この6カ月間は、新たな投資は厳選していく」と方針を大きく変えたことを示す。
「いまは、株式市場が痛んでいる。だからこそ、いまが買いであると、内心、そうした気持ちに駆られることもある。だが、徳川家康が反省している絵を思い出さなくてはならない。ビジョンは高い志を持っている。信じるところは変わっていない。しかし、大きなビジョンを一方的に追い求めると全滅の危険がある。全滅だけは絶対に避けなくてはいけない。いまこそ投資をしたいと、はやる気持ちはあるが、それをやって、取り返しがつかない痛手を追うことになってはいけない。自ら言い聞かせて、新たな投資は徹底的に抑えている」と、いまの心境を明かす。
そして、「すでに投資している473社のほとんどが、年率50~100%で成長している伸び盛りの企業である。また、8~9割はAIがあるからこそ生まれた会社であり、優れたテクノロジーやビジネスモデルを持っている企業が多い。そのなかに、金の卵があることを信じて、そこをしっかりと育てる。それをいまやるべきである。これまでは新規の投資案件を追いかけるのに忙しかったが、支援を厚くすることができる」とする。
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