業務を変えるkintoneユーザー事例 第150回
ユーザーが困っていることを見つけることが大事
営業から突然開発へ 自称“IT素人”のアプリが1000名の仕事を変えるまで
2022年08月22日 09時00分更新
過去に失敗したSFAに再挑戦
社内にkintoneへの抵抗感がなくなったことを受け、鈴浦氏は、過去に酷評されたSFAに再挑戦する。以前失敗したアプリの検証と、現場への困りごとの再ヒアリングを行なった。そして、3つに分かれていたアプリを1つに統合、基幹システムとの連携を強化して、項目を簡素化することで入力の負担を減らすことに注力した。
「ユーザーは項目が多いと言いながら、削除するというと『使うかもしれないから残して』という。どっちなんだと思ったので、実際に1万レコードの中身を自分の目で確認し、使っていない項目をハンドカウンターで数えた。その結果を見て、使われていないと判断した項目は徹底的に削除した」
鈴浦氏はこうした地道な作業を続けながら、今回もgusuku CUSTOMNIEを駆使して約半年がかりでアプリを内製した。新しい案件管理アプリは、画面の上半分が案件一覧、下が活動履歴に分かれており、1画面で案件の状況が確認できるようになっている。
鈴浦氏はこれ以降も、ユーザーからの要望を聞き取り、場合によってはよりよい提案もしながら、新たなアプリの開発を進めている。すでにkintoneユーザーは1000名を超え、全社員の90%以上に達した。
そんなある日、現場の課長が直接「この前のアプリが現場で大好評」と伝えてきたという。まさに開発者冥利に尽きると鈴浦氏は口元を綻ばせる。ついに「kintoneが大好き」になったのである。
鈴浦氏は、企業の現場開発者にこうアドバイスする。「開発依頼を受けたら、言われたままではなく開発側から最適な提案をすることが大事。また改善要望にはすぐに応えることが重要だ。そうすることで開発者のスキルが上がり、ユーザーの満足度も向上して、それが次の開発の意欲につながる」
2022年「kintone AWARD」名古屋地区代表に選出
鈴浦氏は、kintoneの導入で苦しんでいる人に向けて次のようにアドバイスする。
「kintoneを無理に現場に押しつけてはいけない。余計に反発が出る。ではどうするか。ユーザーが困っていることを見つけ、それをkintoneで解決する方針で臨むべきだ。また管理者は、開発者を放置せず、コミュニケーションを取ってほしい。ユーザーが増えると、全員の満足を得ることは難しい。管理者のフォローが重要だ。そして、内製アプリの評価を必ず行なうべきだ。そうすることで、改善要望に応えることが現場の評価を高めることを開発者が実感できるようになる」
最後に鈴浦氏は、自分がこのステージになぜ立っているかを語った。
「自分がkintoneのことを嫌いだった5年前、kintone AWARDで楽しそうに語る講演者を目撃した。それを見て、自分もkintone hiveを目指そうと冗談で言ったのが、今日ここで話していることの出発点だった」
そのときの講演者と、鈴浦氏は最近、Zoomで話す機会があったという。「その方も、最初はkintoneの導入で苦しんでいたと聞いて驚いた。同じ経験をしている人に、何かしてあげたいという思いで講演したということだった。それがあのとき、まさに自分に刺さった」
苦しみながらも挑戦を続け、成功体験を積み重ねた鈴浦氏は、5年前の講演者から立派にバトンを引き継いだ。聴衆に向け「kintone hiveを目指してみませんか。きっと何かが変わるはず」と語りかけて、講演を終えた。
5社の講演終了後、地区代表を決める視聴者の投票が行なわれた。その結果、アイホンの鈴浦氏が見事に優勝を勝ち取り、今年秋に開催される「kintone AWARD」への出場を決めた。鈴浦氏は「グランプリを勝ち取って、来年のkintone hive nagoyaでは凱旋報告会をやりたいです!」と決意を語った。
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