まつもとあつしの「メディア維新を行く」 第77回
〈後編〉アニメの門DUO キャラクター・データバンク陸川和男社長が語る
コロナ禍はキャラクタービジネスをどう変えたのか
2022年08月27日 18時00分更新
コロナ禍で地方もレンタルから配信サービスにシフト
まつもと これに限らず「コロナ禍が落ち着いたら元に戻るのか?」という議論ってありますよね。そして多くの方は「元には戻らない」と言います。なぜなら、消費者がオンラインの良さを知ってしまったから。ただ、陸川さんが今おっしゃったように、リアルじゃないと手に入らない価値がより明確になりつつある、というところですかね。
あと、ここで確認しておきたいのが、『鬼滅の刃』が「配信発キャラクタービジネス」とまとめられているのが非常に特徴的だなと思っていまして。
というのも、深夜帯のテレビからスタートしており、もっと言えば週刊少年ジャンプ連載作品なのだけれど、それが配信によってタッチポイントが広がったと。そこまではイメージできます。ただ、配信によってタッチポイントが広がって、しかも外出制限がかかっているなかでのオンラインでの消費行動に、どう具体的につながっていたのかな、と。ここがまだ十分に整理されていませんよね。
陸川 そうですね。ここはやはり整理する必要があると思います。
まつもと まず、そもそも子どもたちに広がっていった。それもキッズ、小学校低学年からと言われています。
陸川 うちのデータで見ると5~6歳くらいからですね。
まつもと もっと下なんだ!
陸川 3~4歳くらいの子もコスプレしていたり。本当に未就学まで落ちたということですよね。
まつもと それは、当然ネット抜きには考えにくかったことである。
陸川 おっしゃる通り。
まつもと でも、そういった子たちが、ネットに自分からアクセスできるわけではないと思いますから、親が見せている?
陸川 そうですね。グループインタビューなどでお聞きすると、親御さんと一緒に見て……という感じで広がったということなのかな、と想像はつきます。
まつもと 表現は結構、なんと言いますか……映画も親のアドバイスの元に見てほしい作品という基準になっていますが、でもそれ以上に物語の強さや世界観が上回り、その結果、キャラクター商品を欲しがるようになる、ということですね。
陸川 グループインタビューで面白いことをおっしゃっていたお母さんがいて。「昔のほうがもっとドぎつかった」と(笑) 「今の子たちは刺激が少なすぎる」みたいな意見はすごく印象的でしたね。
まつもと 言われてみればそうかもしれませんね。あと、私は3年前から新潟にいるのですが、コロナ禍で一気にレンタル店から配信にシフトした感は大学生たちと話していてすごく実感します。地方でも配信サービスを使わざるを得ない流れになってきているので、この変化はますます加速していくのかなと。
……ということで、キャラクタービジネスは配信と連動したハイブリットなかたちに変わっていき、リアルのほうにも変化を及ぼしながら進化していくと。陸川さん、ここまでの解説ありがとうございました。
陸川 ありがとうございました。
〈前編はこちら〉
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