まつもとあつしの「メディア維新を行く」 第76回
〈前編〉アニメの門DUO キャラクター・データバンク陸川和男社長が語る
プロが語る「コロナ禍のアニメとキャラクタービジネス」
2022年08月26日 18時00分更新
キャラクターはアニメ産業を安定して支える存在だ
まずは下の図から。私も参加している『アニメ産業レポート』から、日本動画協会さんが発表している市場別のシェアを見ていきたいと思います。では、こちらも陸川さんから解説いただいてもよろしいでしょうか?
陸川 私も『アニメ産業レポート』に執筆させていただいていますが、アニメ産業市場は右肩上がりで伸びています。特に「海外」の割合が高いですね。
ただ、「商品化」もアニメ産業全体の4分の1程度のマーケット規模があります。これは「テレビ・映画・ビデオ・配信」といった一次的な収益と比較しても明らかに大きなものです。実は、海外の売上が高くなる前から非常に大きなボリュームを持っていました。
まつもと 『アニメ産業レポート』のデータを20年ほど追ってみると、DVDバブルの崩壊や海外大手配信プラットフォームによる市場拡大など、項目の比率を激変させてしまうような出来事が続くなか、キャラクタービジネスを主体とする「商品化」が一貫してアニメを支えているような見え方もするんですよね。
陸川 それはおっしゃる通りじゃないかなと思います。「商品化」は古くからアニメ製作を支えてきた重要な収益源ですから。
まつもと 「今はライブがかなり下がってそう」という意見を見ましたが……。
陸川 まさにその通りです。
まつもと コロナ禍において「ライブ」は、ジャンル自体の扱いを見直すことが検討に挙がるくらいの大変動の只中にあります。しかし、そういった変動が起こるなかでもやはりキャラクターは強い、というところで次の図も見ていきましょう。
陸川 商品化市場は安定していますよね。そのなかでヒットキャラクターというかヒット作品が生まれると、商品化の規模もそれに牽引されて拡大していくという特徴があり、これを繰り返しているということだと思います。
2020年は『アニメ産業レポート』のほかの数字を見ていただくとわかるのですが、配信を除きほとんどのジャンルが前年から縮小しました。ところが商品化はほぼ前年並みに推移しています。この要因は『鬼滅の刃』というヒット作品のキャラクターによって商品化の市場全体が拡大したことによるものでしょう。
まつもと 意外だったのが、少子高齢化は進んでいるはずなのに、キッズファミリー向けが圧倒的な事です。ずっと8割5分くらい占め続けています。フィギュアとかプラモデルとかが売れてコアファン向けの比率がだんだん上がっているのかなと思いきや……。
陸川 根強いですね、本当に。ただ、たとえば『鬼滅の刃』ってどちらに含めるべきなの? という議論がありまして。
まつもと それ、次に聞こうと(笑)
陸川 このグラフでは、実はキッズファミリー向けに含まれているんですよ。
まつもと ああ、そうなんですね。
陸川 もともと深夜アニメはコアファン向けのほうに入っていたと思うのですが、配信が中心になってくるとボーダーレス化してくるというか『(ターゲット別比率を出すことに)意味があるのか?』と最近は思うようになってきまして。
まつもと 『名探偵コナン』はどっちなんだと。
陸川 キッズファミリー向けに入っちゃうんですよ、やっぱり。
まつもと たぶんキッズファミリー向けとコアファン向けにきっちり区分できないグレーゾーンみたいな、どっちにも含まれる作品があって、たぶん今その領域は広がりつつある、と。
陸川 それは本当に広がっていると思いますね。
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