業務を変えるkintoneユーザー事例 第154回
秘訣の1つはできない人や苦手な人を置いてけぼりにしないこと
胸ぐらつかみ合うレベルの世代間ギャップ kintoneで埋めたギフトボックス会社
2022年09月09日 09時00分更新
ベテランにkintoneを使わせるため、若手世代が動き始めた
受注増に対応する生産スケジュール管理の課題も解決した。当初はホワイトボードで管理し始め、数年かけてGoogleカレンダーで工程の生産スケジュールを共有化した。しかし、それでも昭和世代の人たちはなかなか使ってくれなかったという。
どうすれば、ベテランの人たちが生産スケジュールに取り組んでくれるのだろうか? と、20~30代の若手スタッフが話し合った。自分たちは「綿密に計画をこなさないと多くの案件をこなすことができない」とわかっている。そして、ベテランはいまだに「手を休めているヒマはない」という考えで、世代間のギャップがあることを再認識することになった。
「それでも、想いは一緒だと気がつきました。みんな残業したくないし、休日も欲しい。そして給料ももっと欲しい。そして、一番大切な想いは、みんなで仲良くよい仕事をしたい、ということでした。想いがいっしょなら、とにかく考え方のギャップを埋めようと若手世代が動き始めました」(近藤氏)
見える化は必須だが、ベテランは生産計画を見てくれない。それならばと若手がベテランの予定もいっしょに把握して計画を立てあげることにした。その上で生産計画の優先順位を伝え、ベテランに実行してもらうようにした。
ベテランのスケジュール入力は若手が中心で行なうことになったが、全工程を手動で入力するのは手間がかかる。そこで、近藤氏は若手の意気を感じて、「キン助」というプラグインを導入した。これはkintoneとGoogleカレンダーを双方向に連絡できるのが特徴で、kintoneに入れたデータがGoogleカレンダーに表示できるようになる。これで入力の手間を大きく軽減できた。
これらの取り組みのおかげで、ベテランの人たちは若手世代の工夫を受け入れてくれることとなった。生産計画を綿密に立てることができ、生産情報を確実に共有できるようになった。同時に、情報の伝え忘れや「言った・言わない」も激減。コミュニケーションしやすい環境になったことで、課題改善の活動も活発化した。
「たくさんの受注対応が可能になり、付加価値の高い高級ギフトボックスの生産性が向上しました。製造件数は3年間で120パーセントにアップし、製造売上高も並行して123パーセントにアップ。そして経常利益は3年間で20倍を超え、コロナ禍でも最高益を達成できました」(近藤氏)
一番うれしかったことは、会社のコミュニケーションが良くなったこと、と近藤氏。いい仕事を目指して仕組みを工夫する若手社員と後輩の努力を素直に受け入れるベテラン社員の良い関係が生まれ、改善に取り組みやすい環境が醸成された。
kintoneを活用し、今では労務管理や仕入発注、経理・会計、経営管理までアプリを作成し、営業部門のテレワークも実現した。今後は、販売管理でもkintoneを活用したり、クラウド会計、クラウド勤怠を導入してkintoneと連携させ、より働きやすい環境作りを目指すという。
kintone導入を成功させる4つの秘訣
近藤氏は最後にkintone導入の成功の秘訣を4つまとめてくれた。1つ目が最初から完璧を求めず、スタートできることから始めると言うこと。2つ目ができない人や苦手な人を置いてけぼりにしないということ。デジタルが弱い人でも共有できる方法から始めることが大切。モリタでは、紙の出力を残す、という決断がそうだ。最初から焦って100%ペーパーレスにする必要はないと考えているという。
3つ目が見やすくわかりやすくする工夫だという。今回の事例では、「Repotone U」というkintone連携帳票出力プラグインを利用し、帳票を見やすいPDFにして活用している。
「4つ目は「思いやり」と「お互いの理解」を持って「DX活用」することです。人の和が一番大切です。人の和とDX活用で、最高のギフトボックスを作り、社員と世の中を幸せにしていきます」と近藤氏は締めた。
初の北海道開催となった札幌のkintone hive。6社の講演終了後、kintoneユーザー同士のパネルディスカッションを経て、地区代表を決める視聴者の投票が行なわれた。優勝を勝ち取ったのは會澤高圧コンクリートの畑野奈美氏(関連記事:kintoneで脱残業地獄 すき間時間を活用する「お仕事ビュッフェ」で脱1人運用)。北海道地区代表として、今年秋に開催される「kintone AWARD」への出場を決めた。
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