次のIoTの姿が見える!SORACOM Discovery 2022レポート
ミクシィ、LIXIL、grigryなどがサービス作りとSORACOMを語る
ソラコムが3キャリア対応プランを発表 衛星通信も取り込めるように
ソラカメはAPI公開とATOM Cam Swing対応が発表
さらに、2022年5月に発表したSORACOM Cloud Camera Services(ソラカメ)のアップデートについても触れた。
玉川社長は、「防犯カメラなどは多数あるが、DXやIoTの取り組みのために手軽なものがないという要望に応えたのがソラカメである。Wi-Fiと電源さえあればどこでも簡単に設置でき、スマホやタブレットを使い、5分で初期設定ができる。1台2980円、月額990円から利用できる、ちょうどいいIoT時代のクラウドカメラサービスを実現した。あらゆるビジネス現場を身近につなぐことができる」と自信をみせる。カメラ映像のクラウドによる常時録画、モーション検知録画、ナイトモードでの録画などの機能を搭載していおり、安いだけではないのもポイントだ(関連記事:ポン置き&簡単設定できるクラウドカメラサービス「ソラカメ」発表)。
発売から間もないが、すでに事例も生まれている。大規模な桃の窃盗被害があったJAフルーツ山梨では、ソラカメを利用した盗難対策を実施。数100台規模の導入を予定しているという(関連記事:ソラコムのクラウドカメラサービス「ソラカメ」が「JAフルーツ山梨」の農作物の盗難防止実証実験に採用)。ベイシアでは、複数の店舗の遠隔管理に活用。両毛丸善では、駐車場に設置した防犯カメラだけでは死角が生まれるため、ソラカメによって、これをカバーしたという。ハピクロでは子供向けのレンタルスペースの遠隔管理に利用しているほか、クボタ環境エンジニアリングでは工場の排水処理施設の監視に利用しているという。
玉川氏は、「ソラカメに対してはさまざまな要望があり、進化させたいことはたくさんある。要望が多いのはAPI連携や、セルラー内蔵型カメラのラインアップなどである」とし、新たにAPI対応を発表。カメラ情報の取得、ライブ映像ストリーミングの再生、常時録画ストリーミングの再生といった機能をAPI連携により提供(関連記事:ソラコム、クラウド常時録画の録画データの閲覧などができるソラカメのAPIをLimited Previewとして提供開始)。順次、機能を追加していくという。これらのAPIに対応した簡易Webコンソールもリミテッドプレビューとして提供する。
また、ソラカメ専用セルラーパックも近日発売予定であることも明らかにした。電源だけあれば、ソラカメが使えるようになるもので、定額SIMとWi-Fiホームルーターをパッケージとして提供。月額4950円で利用できる。さらに、「ATOM Cam Swing」がソラカメ対応することも発表(関連記事:ソラコム、ソラカメに首振り機能を搭載したネットワークカメラ「ATOM Cam Swing」が対応)。水平360度、上下180度の首振りをアプリから遠隔操作できたり、自動追尾機能の設定もできるという。初期費用は4280円、月額費用は990円からとなっている。
ミクシィ、LIXIL、grigryが語るサービスとSORACOM
基調講演では、SORACOMを活用した事例が各社から紹介された。
ミクシィ 取締役ファウンダーの笠原健治氏は、同社が提供する子供用見守りGPSサービス「みてねみまもりGPS」に、ソラコムのサービスとeSIMを組み合わせて活用していることを紹介。「私の子育ての経験に加えて、小学校に入学する子供がいるメンバーの声などもあって、GPSやIoTを活用することで、新たなサービスができると考えた。4000人の協力を得てサービス化したものである。サービス開始以来、ソラコムのサービスは安定して稼働している」と述べた。
みてねみまもりGPSは、2021年春から開始したサービスで、子供が携帯しやすいデバイスをランドセルなどに装着。高精度な位置情報とAI学習によって、出発や到着を親のスマホに知らせたり、子供の1日の歩数や移動履歴も記録できたりする。子供が普段の行動範囲から外れたときにはプッシュ通知が行われる。業界最高品質の位置精度と、最大2カ月充電が不要という利便性などにこだわったという。
ソラコムの玉川社長自らも、子供に持たせていることを明かしながら、「笠原社長の子供の成長にあわせて新たなプロダクトが生まれている。これからも新たなプロダクトの登場に期待している。ソラコムは、そこに使ってもらえるサービスを提供していく」と述べた。
また、LIXILでは、トイレの新たな管理ソリューションである「LIXIL TOILET CLOUD」にソラコムのサービスを採用していることを紹介。LIXIL ビジネスイノベーション部リーダーの三原寛司氏は、「ビル管理業界は人材不足という課題を抱えている。人が集まらないとトイレが不衛生になり、ビルそのものの価値や人気が落ちていく。トイレのメンテナンスコストは1個あたり月額1万6000円程度かかっており、それを半額にすることを目指している」と説明した。
「使用回数を計測してみると、同じトイレでも場所によって10倍以上の差がある。フロアが異なると60倍もの差がある。だが、すべてのトイレで同じ掃除の仕方をしている」と三原氏。しかし、LIXIL TOILET CLOUDは独自のAIによって、次に清掃する場所を指示し、業務フローを変えることができる。また、初期費用をゼロとし、サブスクリプションで展開することで導入の敷居を下げたほか、点検サービスや修理サービスなどの物理的なサービスと組み合わせており、トイレメーカーとしての付加価値を提供している。SORACOMを利用することで、トイレにつけたセンサー情報を簡単にネットワークに接続できること、データ利用が少ないため、従量課金でのコストメリットがあること、一括管理が行ないやすいという点から採用している」と述べた。ソラコムの玉川社長は、「他社製の既設トイレも対象にサービスを提供する点に驚いた」とコメントした。
grigry(グリグリ)が、2022年5月のリリースとした、お守り型護身・みまもりデバイス「omamolink」にも、ソラコムのテクノロジーが活用されている。omamolinkは、お守りの形状をしたデバイスの蓋を開けると、お守りや大切なものを入れることができるだけでなく、女性が危険な場面に遭遇した際には護身機能が作動。防犯ブザーや自動録音のほか、見守り人に位置情報をもとにしたSOSを発信することができる。
grigryの石川加奈子代表取締役は、「若い女性がつねに携帯でき、持ち運べるものに防犯機能を付加することが重要だと考えた。また、とっさのときにカバンを開けて防犯グッズを探す余裕がないことから振動だけで作動する機能を持たせた。録音機能により証拠を残したり、その機能を相手に伝えて被害を未然に防ぐこともできる。さらに、位置情報は、SOSが解除されるまで発信され、追跡が可能になり、守り人から警察への通知もできるようになる。SOSの時だけ、位置情報を発信するようにして、プライバシーにも配慮することにもこだわっている」などとした。
omamolink には、SORACOM Air for セルラーのチップ型SIMを内蔵。「安定性と通信コストの観点から優れており、将来のグローバル展開にも適している。SOS発信時にomamolinkを起動させると、すぐにセルラー通信につながり、屋内でも、屋外でも利用できる」という。ソラコムの玉川社長は、「女性の視点から作られたものであり、デザインがかわいいと娘が欲しがった。娘を守ってくれるプロダクトとして期待している」と語った。
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