業務を変えるkintoneユーザー事例 第141回
発電機付きのトラックはあったが、注文システムがなかった!
1ヵ月半でスクールランチの受注・請求システムを立ち上げたコープさっぽろ
2022年07月15日 09時00分更新
kintone hive 2022の第4弾が札幌で開催された。2番手に登壇したのが、生活協同組合コープさっぽろ デジタル推進本部 システム部 中山亜子氏。「こどもたちの笑顔をつないだ1ヵ月半」と題して、小中学校への給食注文システムをkintoneで開発したエピソードを紹介してくれた。
12年間の弁当作りという苦労から保護者を開放したい
中山氏はコープさっぽろに入社して3年目。システム部に所属し、主に業務改善を担当している。コープさっぽろは協同組合なので、組合員からの出資で事業を行なっている。組合員数は187万人で、組織加入率は66.8%。事業エリア内の食品マーケットシェアは23.6%にも及ぶ。
「そんなコープさっぽろでは、3年前からデジタルトランスフォーメーションの取り組みを推進しています。私もデジタルの力で社会問題解決していきたいという思いからジョインしました」(中山氏)
中山氏は数多くのプロジェクトに携わったが、その中で様似町の事例を紹介してくれた。4000人ぐらいの小さな町の子供達に給食を食べさせたい、という問い合わせが来たのだ。そもそも学校給食のない小中学校が存在することさえ知らなかった中山氏。給食がなければ小中高と12年間、保護者が弁当を作り続けなければならない。コープさっぽろのインフラで解決できるのではないか、とチャレンジが始まった。
コープさっぽろはさまざまな事業を手がけているので、ハードウェアは問題なし。まずは発電機を搭載したトラックを用意した。食品の工場から様似町までの距離は126kmで、所要時間は片道2時間8分。同じ道内とはいえ、関東地方で言うなら東京から静岡くらいの距離だが、温かいものは温かく、冷たいものは冷たいまま運べるようにした。
子供たちに、自分たちのふるさとで取れた食材の味を感じてもらいたいと考えたので、地産地消をコンセプトに、昆布やシャケなどを献立メニューを作成した。
注文システムがなく、1ヵ月半でシステムを構築することに
「ここまで来たら準備万端だと思いましたが、待ったがかかりました。注文に関するシステムがないんです。一般的な給食の場合、給食費をいただいて皆さんに同じ給食を提供しますが、今回様似町からオーダーされたのは、保護者が欲しい日だけ注文を受けるという形でした」(中山氏)
問い合わせが来たのが2021年7月末で、提供開始は9月中頃と時間がない。そこで、中山氏1人が1ヵ月半でシステム開発を行なうことになった。同時に、保護者への理解を深めるというミッションも担うことになった。
システム開発に当たっての要件は3つ。1つ目が保護者がウェブから注文できること、2つ目が工場は製造量の確認をできること、3つ目が請求管理ができることだった。
事業担当者は石狩市、システム管理者は札幌市、献立担当者は帯広市、そして教育委員会と学校は様似町と、事業に関わる担当者は道内に散らばっている。それをつないだのがkintoneだった。提供側はkintoneを利用し、様似町には「じぶんページ」というサービスを用意した。
じぶんページはソニックガーデンが提供しているkintoneの関連サービスで、kintone内の情報をユーザーごとに表示できるのが特徴。じぶんページを利用するだけなら、kintoneアカウントが不要なのもポイントだ。
保護者はじぶんページから給食の注文を行なえるようになっている。日付と献立の一覧が表示されるので、「申し込む」「申し込まない」のラジオボタンをポチポチと押していくだけでよい。同時に、給食を申し込んだ分の料金を自動的に計算するようにした。さらに、兄弟がいる家庭では1世帯の喫食者全員分を表示するように工夫した。これで、保護者がウェブから注文するという要件はクリアできた。
ユーザーや社外の担当者の中にはITリテラシが高くない人も多いため、マニュアルを用意し、それでもわからない人には実際に画面を見せながら操作を教えたという。
スクールランチは低学年・高学年・中学生それぞれで作る量が異なる。そのため、学校別、日付別で学年別の注文数を把握する必要がある。これはクロス集計の機能を活用して計算し、製造量を確認できるようにした。これで2つ目の要件をクリア。
請求の管理ができるという3つ目の要件に関しては、実際の請求は他のシステムを利用するので、請求データをダウンロードできるような仕様の一覧を作成した。

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