クリエイターは「なぜ自分に発注したのか?」を知りたい
まつもと このあたりはなかなか理解が浸透していませんが、それでも繰り返し伝えていくことで理解が広がるといいなと思います。この本の中では、ほかにもいくつか大事なポイントが示されていまして、僕が準備段階で大事だなと思ったのは「クリエイターを指名したときの理由をちゃんと伝える」こと。これは業者入札とは異なるロジックです。
アニメ『SHIROBAKO』作中で、主人公が庵野秀明さん風のクリエイターに依頼するとき、まさにこれを言われるんですよ。「あなたじゃないとダメなんだ」という理由をちゃんと言ってほしい、と。これはすごく大事ですよね。
福原 優秀なクリエイターほど言ってきますよ。僕が前に、すごく有名な男性声優さんにお願いして「こういう作品なんです」と説明するときに、「なんで僕を指名したんですか? どうせ僕がフォロワーがたくさんいるから、僕を指名したら人気が出ると思ったんでしょ?」って言われたんです。
ビックリはしましたが、「もちろんそれはありますけれど、でもそのほかにいくつも理由があって、それを全部満たす人が一番良いに決まってる。だからフォロワーが多いことも含めてあなたを指名しましたよ」と言ったら、「なるほどね! わかった!」と。
まつもと その人のそれまでの仕事をちゃんと理解しているうえで、「あなたが持っているこの部分を今回の仕事では発揮してほしいんだ」というところをスタート時点から共通項として握れているのは大切ですよね。後々まで影響するところなので。
福原 会社で仕事やってるときに、「なんかお前ヒマそうだから頼んでいい?」って言われたらムカつくじゃないですか。「君は手先が器用だからお願いしたいんだよ」って言われたほうが気持ち良く働けますよね。人とお金をコントロールするプロデューサーとして、これはマナーでもあるし、そもそも本当に『この人にこれをやってもらったらきっと面白いだろうな』と思って言っているんです。
まつもと 時代の変わり目でもあるので、そういった部分はより重要になりますし、意外とそれができない人が増えているのかなという気もします。
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クリエイターとクライアントはなぜ不毛な争いを繰り広げてしまうのか? (星海社 e-SHINSHO)福原慶匡、やしろあずき講談社
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