〈後編はこちら〉
クライアントとクリエイターがトラブる理由を知る
月2回、専門家の皆さんをお招きし、アニメ作品の見どころやコンテンツ業界の話題をわかりやすくお伝えする「アニメの門DUO」。今回はアニメプロデューサー・福原慶匡さんをゲストにお迎えして、やしろあずきさんとの共著『クリエイターとクライアントはなぜ不毛な争いを繰り広げてしまうのか?』の読みどころをたっぷり語っていただいた。ナビゲーターはまつもとあつし。
◆
まつもと 今回の「アニメの門DUO」は、福原慶匡さんをゲストに、「福原Pが語る、クリエイターとクライアントの不毛な争いの回避術」というテーマでお送りします。
福原 よろしくお願いいたします。もともと僕は、音楽業界からアニメのお仕事に関わり始めて、そのご縁で音響制作やCG制作、声優事務所役員、そして最近では主に8millionという会社でYouTubeの映像制作などを手掛けています。
まつもと 福原さんと言えば『けものフレンズ』をはじめとする「アニメのプロデューサー」という印象が強いと思いますが、漫画家のやしろあずきさんとの共著『クリエイターとクライアントはなぜ不毛な争いを繰り広げてしまうのか?』を読むと、音楽はじめ様々な業界でプロデュース活動を経験されていることがわかります。
私も拝読しましたが、思い当たるところが多くて読んでいるちに胸が痛くなってくる……そんな本でした。
福原 あずきくん、人気者ですよね。
まつもと やしろさんと本を出すことになった経緯を教えてください。
福原 クリエイターとクライアントの関係を本にするならば両者の意見が必要ですが、専業クリエイターと専業プロデューサー(クライアント)が話し合っても、双方ともに相手側の実務を理解していないので、「あっ、そんな舞台裏があるんですね~」「へー、知らなかった」みたいな、すれ違いつつの会話になってしまうと思いました。
その点、あずきくんはゲーム会社でサラリーマンとして働いていた経験があり、現在はクリエイターとして活動しつつ、会社経営もこなしています。
一方、僕はクライアント側ですが、ビジネスのフレーム的に『こんな感じの企画にしないと通らないぞ』という全体像が見えているので、企画を通すときは数十ページの原案・シナリオを自分で書き起こしてから動いたりします。
つまり、あずきくんはクライアントの心もわかるクリエイターで、僕はその逆なので、「こういう主旨の本をを出したい」とあずきくんに話したときも、「それ、すごくわかります」と理解してもらえたんです。
まつもと 各々が8:2ぐらいの割合で相手側の要素も持っていたから、ちょうど凸凹がぴったりハマったような感じなんですね。
実際、読んでいても息がぴったりというか、クリエイターとクライアントがすれ違ってしまう原因になりがちな、『今コイツ、何を考えているんだろう?』の“何”にあたる部分をお二人が会話で表現されていますよね。これはすごく貴重な本だなと思いました。
同時に、「クライアントは今こう考えているから、こういうときはクリエイターはこう振る舞うのがいいんだよ」などと当事者が手の内を明かすような内容なので驚きました。
■Amazon.co.jpで購入
-
クリエイターとクライアントはなぜ不毛な争いを繰り広げてしまうのか? (星海社 e-SHINSHO)福原慶匡、やしろあずき講談社
この連載の記事
-
第108回
ビジネス
『陰実』のDiscordが熱い理由は、公式ではなく「公認」だから!? -
第107回
ビジネス
『陰の実力者になりたくて!』の公認Discordはファンコミュニティー作りの最前線だ -
第106回
ビジネス
ボカロには初音ミク、VTuberにはキズナアイがいた。では生成AIには誰がいる? -
第105回
ビジネス
AI生成アニメに挑戦する名古屋発「AIアニメプロジェクト」とは? -
第104回
ビジネス
日本アニメの輸出産業化には“品質の向上よりも安定”が必要だ -
第103回
ビジネス
『第七王子』のEDクレジットを見ると、なぜ日本アニメの未来がわかるのか -
第102回
ビジネス
70歳以上の伝説級アニメーターが集結! かつての『ドラえもん』チーム中心に木上益治さんの遺作をアニメ化 -
第101回
ビジネス
アニメーター木上益治さんの遺作絵本が35年の時を経てアニメになるまで -
第100回
ビジネス
『THE FIRST SLAM DUNK』で契約トラブルは一切なし! アニメスタジオはリーガルテック導入で契約を武器にする -
第99回
ビジネス
『THE FIRST SLAM DUNK』を手掛けたダンデライオン代表が語る「契約データベース」をアニメスタジオで導入した理由 -
第98回
ビジネス
生成AIはいずれ創造性を獲得する。そのときクリエイターに価値はある? - この連載の一覧へ