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Google I/O「伏線だらけの基調講演」を見て考えた【西田 宗千佳】

2022年05月13日 12時00分更新

文● 西田 宗千佳 編集●飯島恵里子

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「ARCore Geospatial API」を使ったアプリの例

リアルワールドARへの扉を一気に開いたグーグル

 今回のグーグルの発表をみると、「現実世界にデータを重ねる」「現実世界をデータ化して活用する」流れのものが特に多いのがわかる。メタバースやARの流れを受けたものではあるのだが、そもそもグーグルはずっと、地図の3D化とAR的な「データの重ね合わせ」を開発してきた。

 これまでは、あくまでGoogleマップの機能として、実景に歩くべき方向などを重ねる「ライブビュー」機能として搭載されてきたが、その価値がついに一般に公開される。開発者に「ARCore Geospatial API」が公開され、アプリに組み込めるようになったことで、Googleマップの地図機能と現実の空間とのリンク、さらに、そこに自分達が考えた要素を重ねるという、「限定された空間以外でのAR」がついに実現する。

 公開されたAPIを使ってみた技術者は、精度や機能に対してかなりポジティブな反応を見せている。部屋の中や机の上ではない、リアルワールドでのARも、グーグルだけがやっていることではないのだが、Googleマップで磨かれたデータとAPIを使えるというのは、他社に一歩先んじた印象を持つ。将来は当然、これが「ARグラスに使われる機能」になっていくのだろう。

「ARCore Geospatial API」の公開により、これまではGoogleマップでしか使えなかったリアルワールドARが、より一般的なアプリへと開かれる

 そのほかにも「地形や室内の3D化」や、「視界の中にある情報の中で必要な部分だけをピックアップして検索対象にする」など、将来に向けた大きな意味を持つ技術が公開されている。まさにわかりやすく、「ARグラスがある時代」への布石が着々と用意されている状況と言える。

 翻訳ができるスマートグラスはARグラスとイコールではない。だが、これらの布石を全部合わせると、向かっている方向は一直線であることは見えてくる。

 そんな風に考えると、あの「2時間の基調講演」の構成を考えているチームは、本当に優秀な人々なのだろうなあ……と妙なところで感心してしまう。

 

筆者紹介――西田 宗千佳

 1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。 得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、アエラ、週刊東洋経済、月刊宝島、PCfan、YOMIURI PC、AVWatch、マイコミジャーナルなどに寄稿するほか、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に、「ソニーとアップル」(朝日新聞出版)、「ソニー復興の劇薬 SAPプロジェクトの苦闘」(KADOKAWA)などがある。

 

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