リアルワールドARへの扉を一気に開いたグーグル
今回のグーグルの発表をみると、「現実世界にデータを重ねる」「現実世界をデータ化して活用する」流れのものが特に多いのがわかる。メタバースやARの流れを受けたものではあるのだが、そもそもグーグルはずっと、地図の3D化とAR的な「データの重ね合わせ」を開発してきた。
これまでは、あくまでGoogleマップの機能として、実景に歩くべき方向などを重ねる「ライブビュー」機能として搭載されてきたが、その価値がついに一般に公開される。開発者に「ARCore Geospatial API」が公開され、アプリに組み込めるようになったことで、Googleマップの地図機能と現実の空間とのリンク、さらに、そこに自分達が考えた要素を重ねるという、「限定された空間以外でのAR」がついに実現する。
公開されたAPIを使ってみた技術者は、精度や機能に対してかなりポジティブな反応を見せている。部屋の中や机の上ではない、リアルワールドでのARも、グーグルだけがやっていることではないのだが、Googleマップで磨かれたデータとAPIを使えるというのは、他社に一歩先んじた印象を持つ。将来は当然、これが「ARグラスに使われる機能」になっていくのだろう。
そのほかにも「地形や室内の3D化」や、「視界の中にある情報の中で必要な部分だけをピックアップして検索対象にする」など、将来に向けた大きな意味を持つ技術が公開されている。まさにわかりやすく、「ARグラスがある時代」への布石が着々と用意されている状況と言える。
翻訳ができるスマートグラスはARグラスとイコールではない。だが、これらの布石を全部合わせると、向かっている方向は一直線であることは見えてくる。
そんな風に考えると、あの「2時間の基調講演」の構成を考えているチームは、本当に優秀な人々なのだろうなあ……と妙なところで感心してしまう。