ScanSnapのPFUもリコーの子会社に
もうひとつは、サイボウズとの提携発表の翌日となる4月28日に発表したPFUの子会社化だ。実は、これもデジタルサービス事業の強化という点で、同じ文脈で捉えることができる。
発表によると、リコーは、富士通の100%子会社であるPFUの80%の株式を取得し、連結子会社化。取得金額は840億円となる。一方で富士通は20%の株式を保有することになる。
PFUの社名はそのまま残し、世界トップシェアを持つイメージスキャナーを中心としたドキュメントイメージング事業、国内IT サービスを提供するインフラカスタマサービス事業、産業用コンピュータによるコンピュータプロダクト事業のすべてを継続する。
リコーの山下社長は、「今回のPFUの子会社化によって、ワークフローのデジタル化、ITインフラの構築、現場のデジタル化の領域を強化できる。また、富士通とは、以前から連携した形で顧客価値提供のビジネスを行ってきた経緯があり、これまで以上の関係強化が期待できる」とする。
富士通の時田隆仁社長も「リコーは、デジタルサービスを中核とした会社であり、エッジ領域でプロダクトやサービスを持ち、PFUとの親和性は高いと考えている。PFUにとってもいい組み合わせであり、富士通にとってもエッジの領域に力を持つリコーと協業していくことで、エンド・トゥ・エンドでソリューションを提供し、顧客に新たな価値を届けられる。PFUのリコーグループへの参画を機に、リコーとの国内での協業も進めたい」と語る。
リコーにとって、PFUの子会社化による最大のポイントは、やはりイメージスキャナーである。デジタル化の実現においては、その入口となる部分で、紙をデータ化する必要がある。リコーには複合機(MFP)があり、それがこれまでデータ化の役割を担っていたが、ここにイメージスキャナーが加わることで、デジタル化が加速する環境が整う。
リコー コーポレート上席執行役員 リコーデジタルプロダクツビジネスユニットプレジデントの中田克典氏は、「MFPは、一度紙をターンしてスキャンすることになる。もし、ジャムりそうになった場合には止めるという動作を行う。だが、PFUのスキャナーは、直線で動作し、読めなかった場合には一度流してしまう構造であり、納品書などのオリジナルの原稿を傷つけずにスキャンできるように、ハードウェアやソフトウェアを設計している。A8~A3判までのサイズを、上下左右バラバラにスキャンしても読み込める。その点では、MFPにはない能力を発揮できる。リコーのMFPでは扱い切れなかったドキュメントを読み取ることが可能な新たなエッジデバイスが加わることで、RSIの活用領域が拡大する」と語る。
サイズが不揃いな伝票や帳票、ノンカーボン紙の申込書、免許証やID などのカード類といった既存の複合機では対応が難しい特殊なドキュメントについても、イメージスキャナーではスキャンが可能になり、オフィスでの業務処理に留まらず、医療機関や公的機関の窓口業務、金融機関などにおける各種書類の処理業務の効率化が図れるという。
複合機とイメージスキャナーでは競合する部分が多いと見られていたが、むしろ補完関係があるというわけだ。
さらに、「リコーはMFPで全世界に約400万台の顧客基盤があり、PFUのイメージスキャナーも全世界400万台の顧客基盤がある。両社の顧客ベースは、多少は重なっているものの、オフィスを中心に顧客を持つリコーと、業務現場とホームの顧客が多いPFUでは顧客基盤が異なる。リコーのデジタルサービスを提供できる領域が広がることになる」(リコー 取締役 コーポレート専務執行役員 リコーデジタルサービスビジネスユニットプレジデントの大山晃氏)という補完関係も見逃せない。
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