2004年より毎年発表されている「本屋大賞」は、全国の書店員が過去1年の間で、自分の店で売りたいなどと思った本を選び投票するものだ。それだけに老若男女が興味を引き付けられるものばかりで、大賞をはじめベスト10入りした作品は、映画化されたものも多い。2022年(第19回)は4月6日に行なわれ、逢坂冬馬の「同志少女よ、敵を撃て」が大賞を受賞した。
そして同日より2019年の本屋大賞に輝いた、瀬尾まいこによる小説の映画化作品『そして、バトンは渡された』がRakuten TVで配信スタート。同映画は永野芽郁が主演し、田中圭が血のつながらない父親役、そして石原さとみが物語のキーパーソンとなるシングルマザー役で出演。劇場公開時には「号泣した」との感想が続々と上がり、大ヒットとなった。
そこで、今回は本屋大賞にランクインした小説を原作にした映画化作品から、“泣ける”こと必至の5作品をピックアップする。
現在、若手俳優として人気沸騰中の浜辺美波と北村匠海が、みずみずしい演技を見せている『君の膵臓をたべたい』。住野よるの原作は、2016年(第13回)本屋大賞で第2位となった。浜辺が演じるのは重い病を患う高校生、北村は彼女の病気を知ることになるクラスメートに扮(ふん)する。はかなさが漂う青春ストーリーの中で、タイトルになっている言葉が明かされたとき、切なくも美しい思いに涙が止まらなくなる。なお、同作は2019年にアニメーション映画化もされている。
2006年(第3回)に本屋大賞を受賞した『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』は、イラストレーター・俳優などマルチに活躍するリリー・フランキーの自伝的小説だ。変わり者のオトンと別居し、オカンと暮らしていたボクは、東京の美大に進学。オカンに迷惑をかけながら、ぐうたらな生活を続けていたが、ようやく暮らしの目途がついてオカンを東京に呼び寄せる。しかし、オカンの体はガンに冒されていた…という物語。映画では、オダギリジョーと樹木希林が親子役で共演。母の無償の愛、時間に限りが見えた中での息子の愛が胸に迫る。福山雅治が担当した主題歌『東京にもあったんだ』が、また余韻を深める。
2013年(第10回)に第8位となった川村元気の『世界から猫が消えたなら』は、佐藤健主演で映画化。脳腫瘍で余命を宣告された青年の前に、自分とそっくりな悪魔が姿を現し、大切なものと引き換えに1日の命をもらえることに。幻想的な“もしも”の世界を描きながら、掛け替えのないもの、日々の幸せを気付かせてくれる。ラストに向けて深く心に染み入る感動作だ。
有村架純が主演した『コーヒーが冷めないうちに』の原作は、舞台の脚本家兼演出家として活躍する川口俊和の小説デビュー作で、2017年(第14回)の本屋大賞10位にランクインした。映画化にあたっては、続編の「この嘘がばれないうちに」を含めた構成に。主人公が働く喫茶店を舞台にした、過去にタイムスリップできる物語で、“4回泣けます”というキャッチコピーも話題になった。過去は変えられないルールだが、心の奥にあったわだかまりが解けて、未来を見据える姿が心の琴線に触れ、ホロリとくる。
最後は、ミステリー作品『容疑者Xの献身』をご紹介。原作は、人気ミステリー作家・東野圭吾による「探偵ガリレオ」シリーズ初の長編小説で、2006年(第3回)の本屋大賞では4位に選ばれた。同シリーズは福山雅治主演で連続ドラマ化されており、今作はその劇場版。ある凄惨な殺人事件が起き、被害者の元妻の隣人がガリレオこと物理学者・湯川(福山)の大学時代の友人である石神(堤真一)と分かる。天才同士の頭脳戦という謎解きの面白さに引き付けられていく間に、思いがけず感情を揺さぶられる展開。気付けば落涙しているのだ。