水素と太陽光の力で工場を動かす。そんな挑戦が滋賀県で始まりました。
4月15日、パナソニックグループ会社パナソニック エレクトリックワークス草津拠点で、事業活動で使うエネルギーを100%再エネでまかなうRE100化ソリューション実証施設「H2 KIBOU FIELD」の稼働が開始しました。
水素型燃料電池と、太陽電池、そして余剰電力を蓄えるリチウムイオン蓄電池による自家発電だけで工場を稼働させようという試み。中でも本格的に水素を活用する工場のRE100化は世界初のチャレンジだそうです。
施設はどんな狙いで作られ、どんな新しい技術が使われているのでしょう。そして実証が成功すればどんな未来が待っているのでしょうか。H2 KIBOU FIELD稼働の前日、メディア向けの見学会で現地を取材しました。
自家発電で工場を!? 出来らぁっ!
RE100(Renewable Energy 100%)とは、企業が事業に使う電力を100%再生エネルギーでまかなうことを目指した国際的な集まり。アップルを始めとした世界企業が加盟しています。地球環境に対して負荷の少ない再エネを使って社会を脱炭素化しようという試みです。
パナソニックは今年1月、CES 2022で「Panasonic GREEN IMPACT」という環境ビジョンを打ち出し、2050年に向けて現在の世界の二酸化炭素排出量の約1%(3億トン)の削減インパクトを目指すと宣言。その具体的なアクションがRE100に向けたH2 KIBOU FIELDの実証というわけです。
H2 KIBOU FIELDは、5kWの純水素型燃料電池99台(495kW)、太陽電池(約570kW)、余剰電力を蓄えるリチウムイオン蓄電池(約1.1MWh)を組み合わせたもの。この3つの電力を使い、系統からの電力に頼らず、家庭用燃料電池「エネファーム」生産工場を動かすのが目標です。工場の従業員は200人、年間消費電力は約2.7GWh、夏冬のピーク電力は約680kW。
RE100には再エネを作るところから使うところまで様々な段階がありますが、パナソニックはメーカーらしく「使う」ところに焦点を当てた形です。パナソニック エレクトリックワークス スマートエネルギーシステム事業部 燃料電池/水素事業総括の加藤正雄氏は「エネルギーの地産地消を目指し、消費地でCO2排出ゼロの発電所を作る」と説明していました。
水素電池を使う理由は、太陽電池は天候などで発電量が変わってしまうため。晴れなら昼間ほとんどの時間を太陽光でまかなえますが、雨なら難しくなってしまうため、残りを純水素燃料電池と蓄電池で補うことになります。
使用するのは、2021年10月発売の純水素型燃料電池「H2 KIBOU」。水素と空気中の酸素で発電するもので、発電効率は業界最高の56%。5kW出力のユニットを1台ずつ組み合わせて使うため、電力需要に合わせて台数を調整しやすいというメリットがあります。
太陽電池に比べて設置に必要な面積が少ないこともメリットです。太陽電池で想定されているのは工場の屋上全体ほどのスペースですが、H2 KIBOUは隙間的なスペースにも設置可能。たとえば屋上と地上を組み合わせるとか土地の形に合わせた設置もしやすくなると説明していました。