愛知発スタートアップの最先端技術で製造業の未来を産み出す
2021年11月25日開催「NEDOピッチ in Central Japan ~スタートアップ×地域製造業のイノベーションで創る未来~」レポート
マインドセットを変えるための手がかり
続いて既存企業がこだわりを持つがゆえに抱えてしまっている慣習やマインドセットについて、それを打破するために留意して欲しいと各スタートアップが思っている点について議論が進められた。
「大企業とスタートアップが一緒にビジネスをやるにあたっての課題の1つにスピード感の違いがある。スタートアップは大企業の1年を2ヶ月や3ヶ月で進んでいく。その違いを認識し密なコミュニケーションを図ることで、そのギャップを縮めることが重要である。また、スタートアップは下請け企業ではなく、対等もしくはそれ以上のパートナーと考えてもらえると上手くいくし、競合に対する優位性を築くことができる。」(エイターリンク株式会社 代表取締役 田邉 勇二氏)
「連携がうまくいかなかった大企業の多くは『first penguin』になりたがらなかった。大企業にはブルーオーシャンに行った経験を持つ人が減ってきており、石橋を叩いてでもという人が増えている。我々も相手に引きずられて一緒に沈むのではないかという危機感を覚えたこともある。
大企業も2000年くらいまでは事業部にヒト・モノ・カネを与えて自由にやらせることがあり、事業部もスピード感をもって結果を出していた。今は誰が決裁者で最終的にケツを持つ人かわからなくなっている。(50歳前後の大企業の中堅以上の方は)今一度自分が20代だったころにいた50代のクレイジーな先輩を思い出してマインドチェンジして欲しい。」(コネクテックジャパン株式会社 代表取締役CEO 平田 勝則氏)
「大企業の上層部も意識が変わってきており、我々を下請けとは見なくなってきている。しかしスピード感にはまだ課題がある。我々ならPoCは半年ではなく1、2週間で結果を出せる。少ないお金で証明できたのだから次に行こうと言っても、それは半年後、来期予算でという話になる。臨時予算を無理やりとってくるくらいになるとスピード感が出ると思う。」(エイシング 出澤氏)
「100%を求めないということが大事。我々の製品は月額5万円とかで出しているが、100%の自動化ができなくても、30%工数が削減できるだけでもその価値はあるだろう。受託開発だと後から要件を足すと追加費用が発生するので、その強迫観念で事前にすべての要件を出そうとする。完璧なものができるまで検収しないとか導入しないとかいうことになってしまう。そういうことがDX化の遅れにつながっているのではないか。まず5%でも10%でも改善できるところから着手していくというスタンスは非常に大事。」(スカイディスク 内村氏)
「佐川急便のアクセラレータプログラムで、佐川の新規事業担当と半年1対1で事業開発を行った。振り返るとその半年間の成果が今のサービスの新規機能のほぼすべてになっている。大企業との人材交流をどうするか。スタートアップから大企業へ、大企業からスタートアップへとお互いに学びあうような環境が重要だろう。」(株式会社LOZI CEO Martin Roberts氏)
「私がやっている事業だからそれは自動化しないでほしいとか、こちらの管轄の業務だから手を出さないでほしいとか、このデータを持っているのは私たちだからまず私たちに聞いてほしいとか、そういうことではなくて、お客様も我々もお仕事を効率化することに向かっていくべきだと思う。」(トライエッティング 長江氏)
これらに加えて、モデレータの阿部氏からは以下のような課題が指摘された。
「(コネクテックジャパンの平田氏から)first penguinになりたがらないという話があったが、人事評価システムに直結する話だと思う。新しいことにチャレンジする人を評価し、失敗してもプラス評価にするといった企業文化が出てくれば、新しいプロジェクトに積極的に取り組もうとする中堅・若手も増えてくるのではないか。」(阿部氏)
「大企業の人はモチベーションがあまり高くないことがある。これは通常業務の上にスタートアップとの業務が載ってきており、通常業務に手いっぱいだから。さらにプロジェクトが大成功しても昇進や報酬に繋がらない。社員個人の趣味でやっているようなもので、社長直下のプロジェクトでもそういう状況になっている。評価制度は非常に大事。」(エイターリンク 田邉氏)
スタートアップ6社のピッチとパネルディスカッションで多様な視点から製造業の未来について議論が行われた。企業規模の大小にかかわらず製造業のグローバル化、DX化はもはや待ったなしであり、社会構造の変化に対応できなければ必然的に淘汰されてしまう。
今回のNEDOピッチをきっかけに、最先端技術で世界にチャレンジするスタートアップとともに新しいビジネスを切り拓く企業が名乗りを上げることを期待する。