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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第662回

グラボの電源コネクターが変わる? 大電力に対応する新規格「12VHPWR」

2022年04月11日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII

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 前回の続きとなるNVIDIAの話は来週まわしにさせていただいて、今回は連載616回で説明した電源規格ATX12VOに関する新しい話が出てきたのでこちらを紹介したい。

12Vで600W供給が可能な電源配線12VHPWR

 3月23日、インテルはATX 3.0 Revision 2.0とATX12VO 2.0という新しい電源に関する規格を発表した。ATXは広く使われている電源規格であり、一方ATX12VOは連載616回で説明した「供給電圧を12Vに限ることで低コスト化を図った」新規格である。この両方の規格に新しい仕様を追加した、というのが今回の発表である。

 ではなにを追加したのか? という話であるが、細かいアップデートはいろいろあるものの、最大のものは、下にあるPCIe 5.0の拡張カード向けの2つだ。

  • 12Vで最大600W供給の電源配線を追加した
  • 48V供給の600W供給の電源配線について言及した
    (まだ仕様化されていない)

 この600W配線、仕様では12VHPWR(12V High Power)ないし48VHPWR(48V High Power)となっているが、ただし48VHPWRに関してはどちらの仕様書にも“48VHPWRコネクターは本書とは関係ないため、これ以上説明しない。これらは今後言及する予定である”とあって、今後のリビジョンで仕様がもう少し明確になるものと思われる。とりあえず当面は、12Vで600W供給が可能となる12VHPWRが新たに追加された電源配線ということになる。

 この600Wの規格を定めたのは他でもなくPCI-SIGである。PCI-SIGは2019年5月にPCI Express 5.0のBase Specificationを発表したものの、CEM(Card Electrical Mechanical)Specificationのリリースは少し遅れた2021年6月となった。

 ただこの間は、従来のPCI Express 4.0 CEM Specificationがそのまま使えたし、2021年6月にリリースされたPCI Express 5.0 CEM Specificationでも信号速度の高速化にともなう配線タイミングの見直しと、これにともなうReTimer周りの仕様変更以外はおおむね変わらなかった。少なくともこの時点ではAIC(Add-In Card)への最大供給電力は300Wに抑えられていた。

 これが変わったのは、2021年12月のことである。CEM WG(CEM Working Group)より“Power Excursion Limits for 300-600 W PCIe AICs ECN”という、AICに最大600W供給を許すECN(Engineering Change Notice:仕様変更の通知)が発行され、これにより最大600W(厳密に言えば全部では675Wになりそうな気もするが、CEMを確認できていないので断言できない)の電力供給が可能になった。

 このECNの理由は明白である。一時期は300Wの枠をなんとか保ってきたAICであるが、ここ数年は平気で300Wの枠を超える製品が現実問題として市場に出てきている(例:GeForce RTX 3090)。加えて言えば、NVIDIAのA100/H100やAMDのRadeon Instinct MI250シリーズのように、OAM(OCP Accelerator Module)フォームファクターを使い、消費電力700Wという製品も市場に出てきている現状では、PCIeのAICももう少し消費電力を供給できる必要がある。

 その結果として12Vレーンのまま、最大600Wというのは正直驚いた。つまり12Vで50Aを流すわけで、これはけっこう危険である。OAMの場合でも、700Wが可能なのは48V供給(つまり電流そのものは15A弱)の場合であり、12V供給では350W(30A弱)に抑えられているからだ。

 このあたりはどういう議論があったのか不明だが、最終的には50Aを供給することで決着がついたようだ。ちなみに50Aというのは連続供給電力で、ピーク時には最大55Aが供給できることになっている。ちなみに12VHPWR以外にも、互換性維持のために従来の2×3と2×4のコネクターは引き続き残る、としている。

脚注の1は電流変動に関するもので、最大でも5A/マイクロ秒未満に抑えないといけないとしている。したがって、0→55Aまで出力が変わる場合、11マイクロ秒以上をかけないといけない

 その新しい12VHPWRコネクターであるが、下の画像のように12+4pinで合計16pinのケーブルとなる。

amphenol-iccの“Minitek Pwr CEM-5 PCIe Connector System”という製品のカタログより。上の6×2pinが電源供給、下の4pinが制御用となっている

こちらも同じく。ケーブルを接続した状態のイメージ図。実際には上の黄色い配線と下の緑の配線は一体化される形になると思われる

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