海外メディアによると、Android版「Apple Music」の最新β版の中に「Open in Apple Classical」(Apple Classicalで開く)というメッセージが見つかったということだ。これはApple Musicアプリとは別の「Apple Classical」という音楽再生アプリがあり、それを別に立ち上げることを意味している。
アップルは昨年8月、クラシック音楽ストリーミングサービスのPrimephonicを買収したと発表した。これに合わせ、Apple Musicのサービスで2022年に「Primephonicのクラシック」のUIに機能追加したクラシック音楽の再生に特化したプレーヤーアプリを公開する予定を示していた。先のニュースは、この発表を裏付けるものと言えるだろう。
メタデータが複雑でストリーミングサービスで見つけにくいクラシック楽曲
それではなぜ、クラシック音楽に専用アプリが必要なのだろうか?
端的に言えば、クラシック音楽がポップスやロックに比べてより複雑なメタ情報を持っているからだ。例えば、ポップスやロックではアーティスト名で検索するのが普通だが、クラシック音楽では通常、作曲者と演奏者が異なり、演奏者もひとりではない場合が多い。同じ曲でも指揮者とオーケストラ名、ソリストなどが異なるさまざまなバージョンが存在する。さらに交響曲などでは楽曲がいくつもの楽章に分かれている。また、組曲のようなまとまりも必要だ。
その組み合わせが長い年月に及び、厖大な量に膨れ上がるためタグも検索機能もポップスやロックに比べて多様なものが要求される。
Primephonicは現在はサービスしていないが、似たようなクラシック音楽向けの音楽再生ソフトウエアはこれまでにも存在していた。
この種のクラシック音楽向けソフトウエアでは、2012年に「JRiver Media Player」をカスタマイズした「Sonata」プレーヤーが嚆矢として存在するが、現在最もよく知られているものは2015年に登場した「Roon」だろう。
「Roon」はもちろんクラシック音楽だけのためのソフトではないが、当初からアルバム表示において指揮者、作曲者、演奏者がきちんと分かれて表示されていた。また交響曲では楽章ごとに分かれてグループ化されて表示される。
さらに2021年にバージョンアップされた「Roon1.8」では大きな更新があり、よりクラシック音楽に柔軟に対応できるようになった。例えばクラシック音楽に特化したComposition(楽曲)画面が設けられてクラシック曲のみを表示させるフィルターが設けられている。検索もツリーを使用して簡単に見つけ出すことができるようになり、作曲家ごとにデータベースによる情報表示も豊富だ。
またAI機能を応用して作曲者、指揮者、演奏を関連付け、より名演奏として知られるものやトップ指揮者を優先的に探し出せるようになった。例えばマーラーの交響曲であればトップ指揮者としてレナードバーンスタインが出てくるはずだ。
さらにレコーディングの表示においては抜粋版と完全録音(全曲録音)版を分けることができるようになった。
クラシックに特化したように見える反面で「Roon1.8」ではバンドのフォロワーや影響を受けたアーティストなどロックらしい項目も充実している。カバー曲も単純に曲名で検索するよりも正確に検索できる仕組みがある。
このように音楽再生アプリではデータベースやAIを応用することでまだまだ進化する余地がある。アップルはこうした分野に得意なメーカーであるのだから、そのアプリにも十分期待ができるだろう。
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